ゲスト「ずっと見物してました、愉悦」
「あなたの泥臭い囮のおかげで敵陣営の攻撃隊は壊滅! わたくしの優秀な駒たちが今頃は手薄になった彼らの陣営を押しつぶしているでしょう! おーっほっほっ!」
「そうでもないみたいだけど?」
ちらりと視線を向けた空きベッド、気配だけが突然現れたそちらにメイリンさんが目を向けると同時に攻撃隊らしき人達が現れた。
うん、まぁ……手薄だろうが何だろうがロウ陣営には一騎当千の英雄さんがいるからね。
攻撃隊にもいなかったし、そりゃ守り固めてるでしょって思ってたから。
瀕死で使い物にならないとか言ってた人いたけど、それでも防衛限定で回復魔法かけながらだったらバリスタよりも役に立つでしょうし。
そもそも私が到着した時に味方陣営が一人もいなかった。
先発隊がいたはずなのにそれが皆無で、私が医務室に死に戻りした時には結構な人数がいたということを考えれば……まぁ全滅してたのは言うまでもないわよね。
「なんてことでしょー」
「先に言わないでくださいまし!」
「敵の戦力計算と、誰がどこにいるかくらい考えて動かないとこうなるのは目に見えたことですよ? あっちにはゲストの英雄NPCと、ニュートラル陣営にいなかった高レベルプレイヤーがぞろぞろ、しかも化け物プレイヤーの大半がロウかニュートラルにいるということはレベル差的に英雄プレイヤーじゃどうやっても勝てないです」
「でもレベル差ペナルティが!」
「それ、たぶん一対一とか少数の相手限定です。ニュートラル攻めた時私ペナルティ受けなかったから」
「なぜ先に言いませんの!」
「言う暇なかったんで」
嘘だけど。
その程度のホウレンソウなら3秒あれば十分だけど、メイリンさんには教えるつもりなかった。
なんでって、この人のことが嫌いだから。
「ぐぎぎぎぎぎ……」
「あと、ニュートラルは烏合の衆かもしれないけどロウは割とまとまり有りますよ。いい感じにチームプレイができているし、伏兵を忍ばせるくらいはしていた。少数はもちろん多数での攻防戦も強い。私が囮とやらを務められたのも激昂して気分が高まりすぎて士気だけで動いていた、指揮のほうは全然とれていなかったからです。まぁさすがに数の暴力には勝てないですけどね」
といっても勝つ方法はいくつかあったけど、それやるとこの砦が壊れるから。
異形化を使って踏み潰してもいいし、自爆してもいい。
今度は範囲を絞ればまぁなんとかなるでしょうけど、それでも結構なダメージになる。
とはいえ、その自爆の時間を貰えなかったのはあちらが即座に私の手の内を読んで警戒していたからで、結局のところ作戦勝ちってことね。
それを想定外の人がぶちこわしてくれたんだけどさ。
「そ、そうですわ! こちらのゲストNPCは何をしていますの⁉ 悪魔が加勢してくれるという話だったじゃありませんか!」
「あー、そういえば見てないですね。どこで何をしているやら」
「運営に問い合わせてやりますわ!」
メニューを開いて何やら抗議文を打ち込んでいる様子のメイリンさん。
「は?」
そして即座に帰ってきた運営からの返答を見たのか、顔をしかめている。
「なんて返ってきました?」
「もういると……」
「ちゃんとNPCですか? 私悪魔系の種族で、それをゲストとか言われたらさすがに怒りますよ?」
いや……私がカオスじゃないという可能性があるならありかもしれないわね。
「ちゃんとNPCだそうよ」
ガッデム!
なぜ運営は私をカオス陣営に組み込んだのだ!
「主役は遅れて現れるという。そうだろ? 我が妻よ」
心の叫びをあげた瞬間、医務室のドアが勢いよく開かれた。
そこにいたのは……誰かしら。
えーと……ん-と……。
「地獄より馳せ参じた。強欲の悪魔、大公のアイゼンである。首をたれて平服せよ」
……あぁ、地獄エリアに行った時真っ先に喧嘩売ってきたやつ!
コイントス勝負したけど、いかさまで乗り切ってどうにか勝ったんだっけ。
いけ好かない奴だから記憶から抹消してたわ、物理的に。
アイゼンって誰?という人
171話と172話を見てください
地獄エリアに行った刹那さんが出会った大公級悪魔です
刹那さんを気に入って一方的に妻認定しているやべー奴




