AI「こいつBANしろ」運営「ダメです」
【エラー発生によりイベントを一時中断します……再開しました】
【特例措置発令によりフィールドの状態をイベント直前まで巻き戻します。直前の攻撃で死亡した全プレイヤー、全NPCは即座に蘇生されます。イベント参加プレイヤーは自陣にて復活、即時行動可能です。それ以前に死亡していたプレイヤーは医務室にて蘇生されペナルティタイムを引き継ぎます】
【特例措置条件項目1~784までを満たしました、対象プレイヤーのイベント参加、また能力の一部制限を具申……却下されました】
【運営よりメッセージを受信:自爆は勘弁してください】
おぉう……なんかメッセージが出てきた。
リスポンしてすぐにこれかぁ……確かに自爆したにしては周囲に被害が見られないわ。
……いや待って?
イベント前までフィールドの状態を戻すってことはニュートラル陣営の襲撃も全部無駄になったってことじゃないの?
だとしたら、私大戦犯じゃない?
「フィーリーアーさーんー?」
「メイリンさん? どしたの怖い顔して」
「このログ、詳しく教えてくれますよね?」
そう言って見せてきた画面には「フィリアにキルされた」という文言。
……まずい、キルログは残るんだ。
つまりこの場にいる全員が私に殺されたというのを理解している。
あー、みんなの視線がとても冷たい。
これは本格的にやばいわ……。
「説明しやがれ!」
「くそアマ! ぶっ殺してやろうか!」
「謝罪はよ」
「なにしやがった!」
うーん、この空気はよろしくないわ。
今までは嫌がらせに徹しようと一致団結していたみんなが私への恨みで団結している。
このままだと孤立しかねない……。
ならば手段は一つ!
「自爆したら思った以上に広範囲でした。ごめんなさい」
「……自爆なら仕方ありませんわね。浪漫ですもの」
えぇ……?
いや、メイリンさんがなんか納得している。
こっちは5回くらい死に戻りさせられる覚悟していたんだけど……。
「みなさま! 今回の一件は彼女のスキルが原因のようですわ。自爆、実にロマンあふれる響きではありませんの? 敵陣で孤軍奮闘やむなく追い詰められ、自爆して諸共吹き飛ばそうとした彼女の浪漫あふれる行為。わたくしは心から賞賛いたしますわ!」
……スキルじゃないと訂正する必要はないとして、武器商人というか死の商人から賞賛されてもまったく嬉しくないわ。
なんか拍手しているし、なんならその拍手の輪が広がっていって大歓声になっている。
「浪漫! いい響きじゃねえか!」
「そもそも俺達がこんなところにいる理由が浪漫追い続けたせいだからな!」
「生き汚いのが俺達だが……しかし潔いのもまた良きかな」
なーんか納得ムード出来上がってるのなんで?
「あのー……言いにくいんですけど、私の自爆のせいでさっき皆さんが頑張って妨害したニュートラル陣営も元通りかもしれないんですけど……」
「あぁ、それなら大丈夫ですわ。先ほど忍者プレイしているサスケさんが偵察に行ったところニュートラル陣営は多大なダメージを受けたままだったそうですから。ロウ陣営もだいぶ被害を受けているようですが、まだ壊滅的とは言えませんわね」
「あ、そこは元通りじゃないんですね」
「まぁ規模から察するにロウもニュートラルも消滅していてもおかしくないはずなんですが、それでも残っているということは相応の措置がとられたのでしょう」
察するに、英雄たちのいる大陸が吹っ飛んだからそこは元通りにした。
けど私たちプレイヤーの頑張りは無駄にはできないから、戦局や砦の状態は戦った傷跡ありということかしら。
だとすると……うん、やばいわ。
「総員戦闘態勢! すぐにロウ陣営がこっちに来るわ!」
やられて黙っている人たちじゃない。
すぐにでもチームをまとめ上げてこっちに突撃してきてもおかしくない。
そこにニュートラルが加わったら……単純計算でも戦力は倍以上。
戦闘力で言うなら測定不能ね。
特に厄介なのはゲリさんの空爆……あれを受けたら砦が大変な事になりかねない。
なんか、今までの恨みを晴らさんばかりに怒っていたけど……そんなに酷いことしたかしら。
まぁいいや、とりあえず砦の周りに空堀を作ろう。
「あ、おい!」
「空堀作ります! 全員武器や防具の状態チェックしながら敵襲に備えてください!」
防衛戦かぁ……苦手なのよね。




