ツッコミが追い付かねえ!
「汝……」
「フィリアさん……」
「ルリ、リタイアボタンどこだっけ……」
「リタイアしたら強制的に排除されることになりますけど……そうその右下」
英雄さんとゲリさんが凄いあきれた様子を見せる中、ルリさんとレイラさんがリタイアを検討し始めている。
久しぶりに会ったのに……酷いわ。
「あのー、なにやってるんです? フィリアさん」
「ゲリさん、私ね……不本意なのよ」
「は?」
「私みたいな清廉潔白な女がカオスだなんて酷いと思うのよ!」
「……はぁ?」
「だからね、人のこと悪者扱いする奴らに一矢報いてやろうと思ったの。そのためにはまず……本気で悪行しなきゃねぇ?」
「あ、やっぱこの人頭のねじ吹っ飛んでるわ。悪者扱いされたから悪行してやるぜって思考がまずいかれてる」
「いかれてるなんて酷いわ。あんなに仲良く国攻めした仲じゃない!」
「フィリアさん、サラッと俺に対する不信感芽生えさせようとするのやめてください。あの時俺何もしてないです、見てただけ。NPCの幼女とフィリアさんを国の正式な依頼で運んだら攻撃されて、反撃したフィリアさん達が国のっとって、俺に全部の責任押し付けて国王に仕立て上げただけ。俺、被害者」
チッ……いい感じにルリさんとレイラさんの視線が冷たくなっていたのにその眼差しがそっくりそのままこっちに向いた。
仲間割れ作戦は失敗か。
「でもゲリさん、あの後元悪魔王のベルゼブブと仲良くなってたじゃない」
「聞きましたよ、現悪魔王と初期の段階からフレンド登録していた俺が元悪魔王という被害者仲間と仲良くなるのは当然の摂理です」
「被害者だなんて……あんなに戦場を共にした仲じゃない!」
「半分はあなたに巻き込まれたんですよ」
「……あぁいえばこう言う口ね。そんな悪い子は食べちゃうわよ?」
「こっちも大概据えかねる物があるんでね、たまには反撃させてもらいたいなと思いまして。つーわけで、時間稼ぎにお付き合いいただきありがとうございますフィリアさん」
時間稼ぎ?
「汝の首、もらい受ける」
「あげない」
英雄さんの持つ聖剣、あれで切られたら邪悪結界使っていても問答無用で殺される。
だから大きく躱して聖剣の余波も届かないところに飛びのいた。
「もらった!」
「お覚悟!」
その先には武器と魔法を構えるルリさんとレイラさん、あれ、ゲリさんと一緒にいたよね。
そう思って視線を向けると三人の姿が霧のように消えていった。
あー、なるほど幻覚。
次はちゃんと匂いや温度も感知しておかないといけないわね。
でもまぁ……。
「あげてないし覚悟も必要ないわ」
ルリさんの魔法を対になる属性の魔法で覆った足でけり上げて、レイラさんの剣を指でつまんで止める。
「おっと」
そこにかち込んできた英雄さんの前にレイラさんをぶん投げて、ルリさんを空に向かってたかいたかーい。
さすがの英雄さんも仲間を討つわけにはいかないのか、大きく身をかわした。
この瞬間を待っていた。
ズンッと手が肉に沈む感触、英雄さんのお腹に私の手が突き刺さっている。
ふふっ、奇麗な赤色ね。
「カフッ」
「心臓を貫くつもりだったのに、避けられちゃったわね。でも跳ぶのに精いっぱいで直撃は免れなかった……今回は私の勝ちかしら?」
「汝……我らを舐めるなよ」
「そこまで全部読んでましたぜ!」
お? これは……。
なかなか豪快な手段ね。
私が英雄さんを貫くことまで計画にいれた作戦。
あの二人はそこに持ち込ませるための囮で、投げられて地面にたたきつけられた二人は既に死に戻り。
宙ぶらりんだった英雄さんの脚を影が掴んでいて、それは私の手にも巻き付いている。
なんならこちらの脚も掴んでいるけれど……だめね、結構頑丈で千切るには時間がかかるわ。
空からは大口を開けたゲリさん。
「日頃くわれてる恨み!」
「いい度胸! どちらが捕食者か教えてあげるわ!」
そう叫んだ次の瞬間、視界が真っ暗になった。
ゲリさんの口? いや違う、これは……やられたわね。
それも含めて全部囮だったか……。
最初にビームで全滅させたと思っていたのも囮、最初から最後まで全部囮で、最後にゲリさんに注意を向けた私の眼球を何かが射抜いた。
だから視界が塗りつぶされて何も見えない、音がしなかったから弓……でもないわね、投げナイフみたいなもの?
ふと右手が軽くなる、これは切り落とされたのね。
見えない視界の中で全身が刻まれて行き、そして死なないギリギリで拘束されていく。
ははぁ……私を死に戻りさせると元気溌剌に復讐しに来ると思ってのことか。
なるほど、完全に負けね。
「ははははは! お見事! 本当に見事よロウ陣営の皆さん! だけど私に奥の手がないとでも思うのかしら?」
「全員退避!」
ゲリさんの声が聞こえる。
けれど同時に知らない声もたくさん聞こえる。
「いや、手足も視界も奪ったし武器も持ってないなら平気だろ」
「そうそう、暴食さん相手だとしてもここまでやっちまえばな」
「びびってんなよとかげ」
……おう、今誰だ暴食って言った奴。
声は覚えた、温度感知で身体の大まかな形状もわかった、顔の形状も脳内で再現できた……後でもう一回殺す。
「俺は知らねえからな!」
ゲリさんが叫び、バサバサと飛び立つ音が聞こえた。
けれど逃がすつもりはない。
体内の全エネルギーをビームに変え、そして肉体そのものもエネルギーに変換した自爆攻撃。
「自爆は芸術だ!」
こうして私は闇の中で光に飲まれた。
先にロウ陣営に突撃した人たちはたどり着く前にとかげのブレスで一網打尽にされました。
ペナルティあると言ってもタイマンの場合で、数が増えたら関係なくなるからね。
囲んで叩くのが基本戦術。
ロウ陣営はとかげと検証班の考えで「刹那は殺さずに無力化して動けないようにして閉じ込めておこう」となりました。
成功しそうになったけどリアルでしか使ってなかった自爆を考慮していなかったのが敗因。
……なんか今言葉おかしかったぞ?
まぁいいや、あと自爆の範囲、以前記載した時よりも強くなっているとだけ書いておきますね。




