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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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リアル年齢17歳の変人登場

 イベントスタートまで残り10分、本来は作戦立てたりパーティを組んだりするんでしょうけど、その必要はない。

 というかね、カオス陣営の人達って軒並み協調性がない。

 チームとか組ませても全員が足を引っ張り合って失敗するのが目に見えているので、やることは一つ。


「はい、じゃあ作戦だけどカオス陣営の皆さんはチームプレイ糞喰らえだと思うんで単純明快なのを提示しますね」


 全員の注目を集めたうえでにこにこと笑ってから、口元を引き締める。


「殺せ、奪え、できる限りの嫌がらせをしろ、そのためなら何をしてもいい、隣にいるのは仲間じゃない駒だ」


 場を、静寂が支配した。

 ただただ沈黙する者達、しかしその視線は周囲のプレイヤーに向けられ続けている。

 品定めだ。

 共闘する悪党というのはいつもこうだ。

 近くにいる味方、それを駒と割り切った瞬間誰をどのように利用するかという考えにシフトする。

 自分にとって一番利用価値があるのは誰か、いざという時でなくても切り捨てていいのは誰か、切り捨てるならばどのようにするか、悪魔のような算段を始めるのだ。


「さぁ、糞のような悪党共。準備はいいか? お前らはこれから先、人でなしと呼ばれ、さげすまれ、必要以上に狙われ続ける。だが、せっかくのゲームなんだ。心をへし折るまで楽しもうじゃない。もう一度言う、殺して奪って嫌がらせをしなさい。そうすればあなた達は誰よりも楽しくゲームができるわ」


 引き締めた口元を緩め、必要以上にゆるゆるにして豪快に笑って見せる。

 悪党というのはいつも地獄を前に笑って見せるものだ。

 クリスちゃんのお父さんがそんなだった。

 狂気に満ちた悪夢でアメリカ全土が苦しんだ事件があったけど、その最中あの人だけは大爆笑していた。

 心底楽しいと言った様子で。

 その後クリスちゃんにうるさいってぶん殴られてたのはともかくだ。


 笑顔って言うのは武器になる。

 考えてみても欲しい。

 敵対している相手が全員狂気に満ちた笑みで攻撃してくる様を、隣にいた誰かの死を笑いながら殺しに来る様子を。

 狂気は人を飲み込む。

 それはもう、パニックを引き起こすには十分すぎるものだ。


「あー、そうだ。かっこつけた後でなんだけど、どっち攻めるかは決めておいてね。半々くらいになってほしいから。あとここに残って罠仕掛けたり防衛したりする人も一定数お願い」


 スンッと場の空気が冷え切った気がするけど気にしない。


「あんたは何するんだ?」


「ニュートラル経由でロウに喧嘩売りに行くつもり。RFBだからステータスの減少無いからね」


「RFBってそんな便利なのか?」


「不便よ? リアルの身体能力が反映されるからレベルアップの恩恵受けられないし、今回も格下と戦う時は過重ペナルティがある。下手したらその過重で死ぬわ」


「そりゃ残念、面白い遊びができるかと思ったが……」


 適当に声をかけてきた男性、たぶん私をうまく使って遊ぼうとしていたんでしょうね。

 けどこっちの態度と、行動方針を見て諦めたってところかしら。

 まったくもって油断ならないわねカオス陣営。


「おーほっほっほ、わたくしがいい子ちゃんたちを教育して差し上げますわ!」


 さっきから騒がしいが何だあの似非お嬢様。

 ご丁寧にキャラクリで金髪縦ロールにしてる。

 ……いや、キャラクリで髪型は伸ばすか短くするかくらいしか選べないからリアルをそのままモジュールしてるのか?

 えーと私の脳内データを漁ってみよう……。

 金髪縦ロール、それだけだと200人くらい候補が出てくる。

 その中であの前時代的な口調で50人まで絞れた。

 そんでもってカオス陣営になるような人……まだ10人以上いる。

 あとは……なんだろう、これといった特徴がほかに見当たらない、やっぱり知り合いじゃないのかしら。


「伊皿木さん、お久しぶりね。こちらではフィリアさんかしら?」


「えーと、どこの縦ロールさんでしたっけ」


 知り合いみたいだわ。


「相変わらずの人脈ですわね。ユニバーサルエレクトロニクス社CEOのメイリンですわ!」


「あぁ、あのクソガキお嬢様でしたか。お久しぶりです」


「この……口の減らないのは相変わらず!」


「口は減らずともお腹は減る、フィリアです」


 ユニバーサルエレクトロニクス社、通称UE社は軍事産業の大手だ。

 大体の物は用意できると言っているだけあって、ねじから工業用ロボット、果ては人工衛星まで作る会社だ。

 なおちょいちょい浪漫を重視して売れない物体も作り出すことに定評がある。

 マヨヒガちゃんがガレージに積み上げているロボットの半分は彼女の会社から抜き取ったデータで作った物らしい。

 代金の代りにセキュリティを強化してきたと言っていた。

 割とガバガバで、2000年代にSEを全員追い出して潰れたメガバンクよりも甘いセキュリティだったらしい。

 穴が多くて罠かと疑ったほどだというからよほどだろう。


「メイリンさん、ゲームしてる暇あったらセキュリティなんとかしましょうよ。この前もテロリストに人工衛星乗っ取られかけてたじゃないですか」


「なぜそれを!」


「あれの主犯がナイ神父だからです。ご存知ですよね、あのうさん臭い人。私の所にも依頼が来てたけど断った案件です。重々気を付けてくださいね、私が出向かないで済むように」


「ぐぎぎぎぎぎ……」


 なんか悔しがってるけど、本当にしっかりしてほしいわ……。


むしろ金髪縦ロールの知人が50人以上いるのがおかしい件についてはスルーで。

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― 新着の感想 ―
[一言] 因みにBL展開?になった漫画のタイトルは 【異世界の沙汰は社畜次第】 だったはず そして描き慣れない方で書くとき(この場合は打つかな?)集中しやすいと言うので割と書きやすいかも?
[一言] 刹那の場合、まず最初にその金髪縦ロールの知人の内何割が人類外なのかが問題になりそう。
[良い点] モラルよりもドーパミンを優先するタイプの扱い方に定評のあるフィリアさんだ。 世紀末が訪れたら大活躍しそう……いや、食料足りなくてリアル食人のハードル下がりそうだな。 [一言] 自分のソレを…
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