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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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なお略奪失敗時に破壊したら任務失敗(おしおき)です

「よう姐さん。面白そうな話してるな、詳しく聞かせろよ」


 地面に下り立つと一人の男性が声をかけてきた。

 英雄プレイヤー……ではないわね、装備が市販のものじゃない。

 ユニーク装備の類だわ。

 ということは素性を隠せる装備か、人間プレイヤーか、あるいは見た目から判断できないタイプの化け物プレイヤー。


「あなたは?」


「俺? 俺はロゴス、不可能を可能にする悪魔さ」


「へぇ……」


 少し、面白そうね。

 手札を一枚見せてきたけれど、それが本物か偽物かわからない。

 見抜く方法はいくらでもあるけれどそれは無粋ね。


「フィリアよ。私も悪魔の種族を持っているわ」


「だろうね。あの羽の形状からして他にも持っているだろうってのはわかるけどさ」


「その先は自分で推理する事ね。それより詳しく聞きたいのよね。他の人も、もっと聞きたければ近くに」


 握手をしながら周囲に呼び掛けると少しずつ、けれどほとんどの人が近くで地面に腰を下ろし始めた。

 遠巻きにこちらを眺めている人も声を拾える距離にさりげなく移動している。

 ふふっ、いいわねこの交流会。

 思想が似通っている人が集まっているからか扇動しやすいわ。


「私達は嫌われ者の集団。だったらとことん嫌われてやろうじゃない」


「そりゃ一向にかまわんがね、もとより俺達のプレイスタイルなんざ形は違えど結果は同じ、横取り略奪後ろ弾、なんでもござれの悪逆非道上等だからな」


「まず、今回のイベントは交流会って銘打っているだけあって戦闘がメインじゃない。それはわかるわね」


 周囲にいた人たちが僅かに頷く。

 しかし少々、反応が鈍いのは戦いたくてうずうずしている人が多いという証明かしら。


「無論戦ってもらうわよ。けれどこちらが一方的に有利になるようにね」


「そりゃ戦略の基本だが……どうするんだ?」


「ふふふ、嫌われ者ならゲームで死ぬくらい当然よね。1回死んで、その後やり返すなんてのも日常茶飯事。違う?」


 周囲からざわめきが聞こえる。

 けれどおおむね同意の声だ。

 彼らの中には相手の手の内をさらけ出させるために一度は負けて見せるなんて人もいるでしょう。


「まずチームを三つに分ける。ひとつはロウ陣営の砦を、もうひとつはニュートラル陣営の砦を攻撃。最後の一つがこの砦を守る」


「おいおい、なんだよ結局その程度の案か? だとしたらこの話は終わり、俺達は好き勝手やらせてもらう」


「あら、攻撃が本命だと思っているの?」


「なに?」


「本命はね、彼らの貯蔵庫と畑よ。今回のイベントでは一次生産職、つまり野菜とか薬草を作る人が重宝される長期戦。ならその畑を使い物にならなくしたらどうなる? 貯蔵庫を攻撃して中身を奪えば? 彼らは、空腹のペナルティを抱えたまま戦場に立つことになる」


「……なるほど。しかしどうするんだ? 大したことはできないぞ?」


「ここにマンドラゴラの種があります。これを貯蔵庫に残しつつ、彼らの貯蔵庫から奪った塩を畑にまいて水の魔法で土に浸透させる」


「それって、何か意味あるのか?」


「あるわよ。塩害って言ってね、端的に言えば作物が育たなくなる。マングローブみたいな特殊な木はともかく普通の作物は育たないでしょうね。そして生産設備をぶち壊す、できる限り修復できないように部屋ごと潰すのがベストね」


 他にも金属を腐食させたりっていう問題もあるけど今回は関係なし。

 いやー、地下で農業一緒にやってた時の知識がこんな風に役に立つとは思わなかったわ。


「それで相手を追い詰めたとして、今度は略奪に来るよな。俺達だって二つの陣営に囲まれちゃ大した抵抗はできねえ。どころかペナルティボスの英雄NPCまで加わったらそれこそ全滅必須だ」


「そう、問題はそこ。だから……彼らが攻め込めないように守りを固めて消耗戦にもちこんで疲弊させる」


「あ? そりゃそんなことができればいいけどよ……どうするんだ?」


「こうするのよ」


 手刀で地面を抉る。

 深い深い穴、落ちれば這い上がることも難しいそれは手加減しているからこその範囲でしかない。

 ……せっかくだからこれ、落とし穴にしましょう。


「あとはそうね……ニュートラル陣営には食料が残っている、ロウ陣営には食料が残っていると誤情報を流す。もちろんそれでうまくいくとは思えないけど、間違った情報って言うのは時にとんでもない状況に繋がるのよ」


「はっ、嘘八百で騙すってか? あんたの言う通りうまくいくとは思えねえな」


「でも、頑張って橋を作ってこの砦を攻めるよりも楽な場所があるでしょ? 私達は最初の攻撃で相手を翻弄して、逃げる時に叫べばいいだけ。もう一つの砦に被害を与えることはできなかったってね。人は堕落のためならば怪しいウソにも飛びつくのよ」


「……まぁ、作戦はいいとして、ついでに志願者がいるならともかくだ。誰も話に乗らなければどうするんだ?」


「その時は一人でやるわ。貯蔵庫の食料を食い荒らしながら適当なプレイヤーを狩る、そのくらいは一人でできる。クレバスを作るのも一人でできる。けれど美味しいところ独り占めされてもいいなら……まぁ指でも加えて眺めていたらいいんじゃない? 私だけで楽しませてもらうわ」


 その言葉に全体が静まり返った。

 そして一拍置いてから怒声が飛んできた。


「ざっけんな! 手柄の独り占めなんざさせるか!」


「糞共に目にもの見せてやる!」


「俺が殺す分を残しておけよ……」


「悪の女王として華々しく遊んで差し上げますわ!」


「いい子ちゃんに死を!」


「日和見主義者に地獄を!」


「一心不乱の大戦争を!」


「ぶっ殺せ!」


 ……いや、そうなるように思考誘導したの私だけどさ。

 この人たち結構ちょろいわね。


ネーミングセンスが欲しい……。

あ、ロゴスというプレイヤーはイベント中で活躍しません。

cv子安さんだけどね。

なんか目立ってる台詞の人が活躍します。


朗報:左手完治

悲報:右手悪化

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― 新着の感想 ―
[一言] >悲報:右手悪化 執筆は控えて治すのに専念するのも手 でも書く!と言うならば無理せずゆっくりと…
[一言] ≫この人たち結構ちょろいわね 目の前で素手の一撃で大穴開けるの見せられたら 「なんか勝てそうだし勝ち馬に乗ろう」とか思いもするわい どんなアホでも敵集団にソロで突撃しても勝てないのは分かって…
[一言] そんなことやってるからそっち側なんだよなぁ
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