とかげ「落下ダメージでHP9割持ってかれました」
余計な邪魔は入ったものの、そこからは順当にお城に侵入できた。
警備とかいないのよ、門番はもちろんお城の中には誰もいませんでしたってね。
「だーれもいないっすねぇ」
「そうねぇ。気配が一か所に集中してるけど……なにかしらこれ」
「地下みたいですね。行ってみましょう」
ということで、キャシーの案で地下に行くことになった。
本当は謁見の間みたいなところに行くのがいいんだろうけどねぇ。
誰もいないとわかってていくのは無駄だからパス。
てくてくと警戒なんてしてませんよと言った様子で歩くキャシーを先頭に、その頭の上で寝っ転がってるゲリさん、背後からの奇襲に備えて私が後を追う形で進んでいった。
……なんかこれ、ゲームの元祖って言われてたタイプのRPGみたいね。
たしかアナログゲームからテレビゲームになった時二種類に分かれて、片方は国民的ゲームになって現在100を超えるナンバリングの超大作になっていたはず。
もう片方はファンの間で根強い人気があってリメイクが繰り返されていると聞いたけどVRにはなっていないんだっけ。
前者の超大作なんかだとこうやって縦に並んで移動してたらしい。
「おっと」
ドアを開けようとしたキャシーが手を止めた。
私もドアを見てみると罠が仕掛けられているわね……これはあれかしら。
マヨヒガちゃんがやってる不法侵入しようとした相手に電気が流れる奴。
ついでに警報が鳴るシステムみたいだけど……これはどうやって相手を見分けているんだろう。
英雄以外が触れたらとかそういうのなら私は問題ないんだけど……うーん、冒険する気にはなれないしなぁ。
解除の手間も考えると壊した方が早いけど、警報が鳴るのは避けられない。
シンプルながらに結構いい罠ね。
まぁ私の自慢の娘が仕掛けた罠ほどじゃないけどね!
警報が鳴って、檻が作られて、その内部に電磁波が流される。
要するに電子レンジになるわけだ。
何人か引っかかっているけど、被害を受けたというクレームはまだ入ってないから人道的よ。
「なんすか? このドアなんかあるんすか?」
そう言ってドアに触れたゲリさん。
止める間もなかった……といえばウソになる。
私もキャシーもゲリさんの動きを察知して、手を伸ばして捕まえるのは容易だった。
けど「まぁゲリさんだしいっか」となって放置してしまった。
それがよくなかった。
「うおっ、ばちってした」
そんな悲鳴を上げて飛びのくゲリさん、同時にけたたましい警報が鳴り響き、足元にぱかっと穴が空いた。
これも回避しようと思えばできたし、跳んでるゲリさんと空中蹴って飛び上がれるキャシーは問題なかったでしょうけどね。
思わず二人を掴んでしまった私に落ち度があるわ。
「ちょっ! なんで俺らまで!」
「フィリアさん?」
「いやー、こうして落とし穴にはまるの久しぶりだから一緒に楽しもうと思ってね。ほら、白銀の塔でのイベントとか楽しかったでしょ? それにキャシーもこういうのは経験しておくといいわよ」
「懐かしいけど苦い思いでぇえええええええ!」
「あえて罠に引っかかって経験を積む……なるほど、新しいですね!」
「この幼女も頭おかしいよおおおおおおお!」
元気に叫びながら落ちていくゲリさんを見ながら、私は蔦を伸ばして壁に当てて減速。
キャシーはぽんぽんとたまに空中ジャンプして落下速度を殺していた。
……ゲリさん飛べばいいのに、なんで落ちてるんだろう。
「はい到着」
タンッと降り立ったのは石畳の地面。
見たところ闘技場みたいな……あぁ、覚えがあるわこれ。
知り合いが運営している地下闘技場、武器の使用以外なんでもありの場所で日夜世界中の大物が集まって賭け事に興じているって場所。
参加させてもらったけど殿堂入りって言われて出禁になったわ。
たまに賭けで参加させてもらうことはあるけど、公安に入ってからは違法賭博に手を染めるような真似はしていない。
べちっと落ちてきたゲリさんの口にエリクサーねじ込んで、スタッと降りてきたキャシーは周囲を見渡している。
「ようこそ、侵入者諸君。よくぞ無事ここまでたどり着いた。さぁ、ではショーを楽しんでくれたまえ!」
何やら大仰な言い回しをする黒尽くめの仮面の人を見ながら思う。
あぁ、これデスゲーム気取りの何かだわ。




