発見
ペナルティを受けている間に方針がある程度決まった。
まずノーム、土の精霊系の人を中心に北の山岳地帯を散策。
東はマンドラゴラの群生地だからスライムやゾンビみたいに心臓がないか、マンドラゴラが効かない種族が行くことになった。
私は西の森担当で、南の森は飛べない人が行くことに。
このペナルティエリアは東の森と南の森の中間くらいにあるから、移動速度の速い私たちが西に行くことになったのよね。
それとなぜか西のメンバーは私が中心になった。
ドライアドと飛行種族を併せ持ちしている人が少なかったから、というのが理由らしいんだけど……正直私植物からの好感度最低値だと思うから意味ないとは伝えておいた。
実際西の森についた瞬間謎の花から花粉吹きかけられたわ。
むしってやったけど。
「それじゃあこの先は各自自由行動で。私は森の奥目指すんで皆さんお好きなように」
パーティで行動するよりも安全を第一にということで、後ろから刺される心配をしないで済むようにと個別行動をとることにした私達。
この辺は飛んでいる最中に決めていたからみんな異論はなかったみたいで、好き勝手に移動し始めた。
こういう時パーティを率いてとか言われても私には無理だから、バトルロワイヤル制なのはありがたいわね。
みんながバラバラな方向に進んだのを確認してから私もターザンごっこを始めて森の奥に進んでいく。
このまま森を抜けた先に何があるのか知らないけれど、多分その前に何か見つかるでしょう。
そう思ってのことだった。
「……思ってたんだけどねぇ」
しばらく木の上を飛び跳ねて進んでいくと開けた場所に出た。
植生が変わってきたかなぁと思って下を見たら湿地になっていてそのまま進んだら木がなくなって湖が現れたの。
湖といっていいのかしらねこれ……向こう岸が見えないくらい広いのよね。
まぁそんなものなのかもしれないと思いつつ、一度高く飛び上がってから水深の深そうなところに向かってダイブ!
人魚の種族も持っているから水中行動もできるのよ。
何気に陸海空制覇しているわね私。
そういう風に作ったとはいえ、こんな風に使う機会が来るとは思っていなかったわ。
もともと魚獲りたいとしか思ってなかった種族がこんな風に役立つとはね。
とりあえず泳いでいるけど問題なく呼吸できる。
普通に鼻呼吸ね、ちょっと水飲んでみたけど真水だからやっぱり湖かしら。
少なくとも海ではない様子、かなり深いところまで来たけれどまだ底は見えない。
吸血鬼の特性か、真っ暗なはずなのに視界はクリア。
便利ねぇ……でもこれ流水を渡れないデメリット持っていたら水の中に入れなかったんじゃないかしら。
あのデメリットは取得しないで正解だったわ……。
「ん?」
考え事をしながらも手足と翼を動かして水中移動を楽しんでいると底が見えてきた。
特に代わり映えしないというか、さらさらとした砂があるだけ……他のゲームだとこういうところに何かあるんだけどなぁ。
マップ機能も水中だと機能しないというか、湖の中のこの辺りという事しかわからない。
水中の細かい地形とか見せてくれないのよね。
仕方ないから歩いて探索するしかないわね、えーと右見て何もない、左見て何もない、正面見てお魚泳いでたから捕まえて踊り食い、後ろ見てなにも……あったわ。
何か物体が存在したというのではなく、亀裂のような穴。
もっと深くまで潜れるという事かしら。
近づいてみると大きな裂け目が存在する、今更ためらう必要もないので身を投じるけれどリアルでやったら二度と浮き上がってこれないでしょうね。
さすがに水中で魚踊り食いするような真似はしたことないし、ダイビング資格持っていないからこの深さまでは潜れないのよね。
そのうち取得も考えようとは思うんだけど、なぜか私が資格取ろうとするたびに友人から「生態系の破壊につながるからやめなさい」と止められる。
解せぬ……。
ま、それはさておき穴に入ってしばらく降下を続けているとどんどん穴が狭まってきた。
これは外したかなと思ったところで、小さなお社みたいなのを発見。
思わずガッツポーズをとってしまう。
こういうのは何かが封印されているものよね。
お社に近づいて、なぜか水中でもぴったりとその扉をふさいでいるお札に触れる。
その瞬間だった、私の視界が暗転してリスポンした。
……はいはいいつもの、ステータスから確認すると聖なるお札に触れたことが死因らしい。
やっぱりあれは何かの封印だったのね……。
「情報ゲット! 水中行動できて聖属性に強い種族募集!」
声を張り上げてリスポン地点で拠点のようなものを作っていた人たちに呼び掛ける。
町に戻れなくなってしまった、スパイ行動をした人とか暗殺を試みた人がこの場に拠点を作り始めていたのよ。
あとは今の私みたいにペナルティ受けた人なんかが休憩している。
ずぶ濡れの私が突然現れたことで驚いた人もいたみたいだけど、今はどうでもいいの。
「水中で聖なるお札で封印されたお社を発見! 打開策の可能性があるから水の精霊とか人魚の人いたら手伝って!」
「よっしゃ行くぞお前ら! ちんたら森の中うろついてる連中にも声かけろ!」
「水龍だけど俺も行っていいかな」
「水中行動できるやつは聖属性弱くても行くぞ! 姉さん案内してくれ!」
よしよし、いい感じに人がついてきてくれそうだわ。
まぁ、この人数を引率するのは大変そうだけど……特に水龍の人。
子竜化のスキルを持っているみたいだけど、手足がないから蛇みたいに移動している。
これは私が背負っていくべきなのかしら……お札はがせそうにないし、水中での乗り物代わりになってもらいましょうかね。




