読者にエスパーいるのかと疑った
王城までの道のり、それはもう酷いものだった。
道端に倒れる人々、崩れた家々、人の腕を咥えて走っていく犬……王都であるはずなのにそのメイン街道がキャシーの住んでいたスラムのようなありさまだった。
まぁ当然と言えば当然か……武力で国を奪ったわけで、その傷跡がこれ。
さらに今国を治めている人は言ってしまえば一般人、当然国の動かし方とかそういうのには疎いわけで、一度崩壊させた国を再生させる方法なんて知らないでしょう。
できる事と言ったら……まぁやっぱり戦争よね。
ぶっちゃけ化けオンで国や街運営するにあたってプレイヤーが困る事ってあまり無いのよ。
何かしらの理由で滅んでも、統治者の状態で死んでも、大きなペナルティはない。
せいぜいが拠点失って、デスペナ受ける程度の物でしかないし、あるとしたらカルマがどえらい事になる程度。
うん、人間性を犬に食わせるゲームでカルマなんか気にしてられないっての。
強いて言うなら税金からいくらか抜いて懐に入れられるけど、ゲリさんみたいに何かしら種族を生かした職業に就くか、あるいは生産職でマーケットにアイテムを流すか、あるいは同じアイテム売買でも私みたいにどんどん冒険進めていって手に入るモノを売っていくかね。
ドンと大きく儲けたいなら戦争吹っ掛けて大金むしり取るしかないでしょう。
そう考えると案内人の奇襲も納得ね。
「これは……」
ゲリさんがあんぐりと街を見渡している。
「故郷の匂いです」
そして心なしかキャシーがわくわくした様子である。
……いやわくわくはおかしくない?
「どこから誰が襲ってくるかわからないからさっさと行きましょ」
「そうっすね……気分のいい光景でもないですし」
「まぁ、無駄な殺生はよくないですもんね!」
ゲリさんは心底うんざりした様子で、キャシーは少しトーンダウンして頷いている。
うん、誰?
あの心優しい少女をこんなバトルマシーンに仕上げたの。
「む?」
ふと、気配を感じた。
右前方の建物、半ば崩壊した家屋の影からこちらを覗いている誰かがいる。
「フィリアさん」
「しっ、目線を向けちゃだめよ」
「わかってます。敵意はなさそうですね、監視ですか?」
「どうかしら……これは監視というよりも……」
じっとりとこちらを見つめる視線、なんとも気分の悪いそれは、まるでストーカーのそれに近い。
でもストーキングの割には私やキャシーに向けられる視線に比べてゲリさんに注意が向いている気がする。
えーと……けもなーとかいうタイプの亜種?
ドラゴンと車は掛け算できると永久姉と辰兄さんが言ってたけど……。
ゲリさん×馬車っていう方程式でも作ろうとしている人?
というかその方程式の解ってなんなの?
なんで生物と無機物を掛け算するのかしら……何かの隠語だとは思うんだけど……。
「どうしたんすか?」
「いえ、なんでもないわ」
「そっすか? なんかさっきから背筋がぞくぞくするんすけど……」
「気のせいよ」
「うす、深く言及すると怖いんで沈黙します」
うん、話が分かるゲリさん大好き。
「……いいんですか? 黙ってて」
「問題ないでしょ。仕掛ける気ならいつでもいらっしゃいって油断してみせてるのに全然仕掛けてこないんだもん。殺すのが目的ってわけじゃないみたいだし」
「それもそうですね。じゃあのんびり観光でもしながらお城に行きましょう!」
「観光ねぇ……」
見る物、あるかなぁ……。
壊れた噴水に壊れた公園、融解した建物に、氷の中でミイラになっている人たちのオブジェ、あとは転がる生首と……あ。
「これ、こんなところまで……」
「なんすか? それ」
「この前転がした1万面ダイス。エフェクトだけVOT通して取り込んだらオブジェクト貫通するようになった物体。そして一度私の手を離れたからか、掴めない」
ころころと転がり続けるダイスは、あれからずっとここまで転がってきたのだろう。
長い長い旅の末にこんなところまで……。
なんか感慨深いわね!
ダンブルウィードニキまじでエスパーですか?
感想見た瞬間ドキッとした。
その能力で次の宝くじ当選番号と当たり馬券教えてください。




