お久しぶりおやつ1号
「それで出向くにあたって同行者をつけたい」
「同行者って……リリー?」
「いや、娘のキャシーだ」
えーと……なんでここでキャシーが出てくるのかしら。
あの子は剣聖リリーの娘だけあって強いんだけど、流石に世間知らずすぎるというか……。
「お前の考えていることはおおむねわかる。あの子はまだ世間を知らない。だからこそ奇麗なものも汚いものも見せて、その上でこの世界の在り方を受け入れてもらいたいのだ」
「んー、いや連れて行くのはいいしその考え方は賛同できるわよ?」
「実力ならば問題ない。既にこの国最強の存在であり、無手だろうと武器有りだろうとリリー相手に勝ち越すほどになった。……というか、最近じゃ魔剣と聖剣の二刀流でどうにか木剣のキャシーに渡り合えるレベルだ」
育ちすぎじゃないかしら……マヨヒガちゃんと言い、キャシーと言い、なんで子供の成長ってこんなに著しいのよ。
「ついでに隠密の連中の誰よりも凄腕だ。どこにでも忍び込んで、どこからでも暗殺につなげられる。本人が人殺しに忌避感を覚えていないのが不安だったが、殺しを楽しむタイプでもないのがせめてもの救いというべきか……」
「あれ? でも私が結構派手にやらかした時気絶してたわよ?」
「あの子はな、血が苦手なんだ。スラム育ち故に人の死には慣れていたが、血はリリーの吐血を何度も見ているから……」
「あぁ、なるほど」
「だから血を流さず人を殺す技を多数身に着けている。薬でもなければ傷もなく、そっと触れただけで心臓を止めるような技だ。しかも時間差で止める事もできるという逸材だ」
「……恐ろしいわね」
「あぁ、末恐ろしいどころではなく現在進行形で恐ろしい。しかもこれが成長途上だぞ?」
「キャシーは、どこを目指しているのかしらね……」
「どうにも学ぶことが好きらしくてな。教えたそばからなんでも覚えていく。今は我が国誇る学園の最高学府で賢者と呼ばれる連中と議論している頃だろう」
天才児って……いや、縁ちゃんも同じことできるけどあの子の場合面倒くさがってやらないからね。
対するキャシーはアグレッシブな天才か……ということはトラブルに巻き込まれる確率も跳ね上がるけど、本人はどちらかというと武闘派。
ということは……。
「今の所被害者は?」
「6ダースを超えてから数えていない。一人も死んでいないし、証拠なんかも持ってきて黒幕も捕まえている。おかげで牢屋が足りず……」
「あんたも苦労してるわね……」
うちも同じような状況だけど、マヨヒガちゃんダンジョンが無かったら同じように頭を抱えていたんでしょうね、公安の人達が。
「それとキャシーのためにもう一人……と言っていいのかわからんが、追加人員がいる」
「だれ? お爺さん? リリー?」
「いや、お前の既知だと聞いているが……騙りならば殺す」
「どんな人? 名前は?」
「名をローゲリウスと名乗っていた」
……だれ? そんなかっこいい名前の人いたっけ。
えーと、んーと。
「本人の言葉をそのまま伝えよう。名を伝えてピンときていないならばゲリとあだ名されたおやつだと言っていた。黄色いドラゴンだ」
「あぁ! ゲリさん!」
「知り合いだったか……まさかドラゴンを手懐けるとはな」
「手懐けたというか普通に仲良くなっただけよ? 彼も私と同じ魔の者だから」
「だろうな。予定としては3日後の昼に出発することになっているがいいか」
「今すぐじゃないんだ」
「ローゲリウスの奴めが忙しいらしくてな。よくわからんが、ですまぁちとやらに巻き込まれていたそうだ」
「それはまた」
「先ほどまでいたのだが、上司から呼び出しだとか言って消えた。殴り倒してやる、退職届は準備できているしぱわはらの録音もできている、と息巻いていた」
「ははぁ……苦労しているのね、あの人」
んー、本人がどれくらい使えるかわからないけどちょっと調べて公安に誘ってみようかしら。
あの人、何となく有能な気配感じるのよね。
とりあえず祥子さんに話してみよう。
外部のエージェントとしてでも使えるなら、まぁ……。
その辺の調査は裏に任せましょう。




