速攻矛盾するのやめーや
「ふぁぁ……」
お湯に浸かったマリッサさんがすごい勢いで溶けてる。
比喩表現だけどね、眠ってるハムスターみたいな溶け方してる。
「温泉は気に入りました?」
「最高……」
「それはよかった。マヨヒガちゃん、あれお願い」
『はい、用意してあります』
壁が開いて出てきたのはお酒。
純米吟醸酒、マヨヒガちゃんお手製の……ある意味密造酒。
だけどね、私やこの家の住人が作れと言ったわけじゃないのよ。
マヨヒガちゃんが気になって自分で作ってみたお米のジュース、ちょっと発酵しているだけ。
そしてマヨヒガちゃんは人権がなく、戸籍もなく、そして人間でもない。
つまり人の法律で裁けないのだ。
故にこれは合法!
いうなれば雀酒である!
そう、お酒の原点であり雀が蓄えていた果実が腐って溶けてお酒になったアレと同じ理論!
やっぱり合法!
「はい、どうぞ」
「水?」
「お酒」
「……美味しい」
恐る恐る、おちょこに口をつけたマリッサさんが目をぱちくりさせて空っぽになったそれを見つめている。
初めてジャンクフード食べたお嬢様みたいな反応ね……イギリスで女王陛下にハンバーガーご馳走した時こんな感じだったわね。
あの時は……紆余曲折あって誘拐して近場のハンバーガーショップに立て籠ったんだっけ。
ちょっとイギリスで一番厳重と言われている刑務所に用事があって、そこに収監してもらうために誘拐騒動を起こした。
いろいろ手段は考えていたけど、面倒になったからね。
出る時は普通に歩いて出た。
女王陛下に挨拶に行って、またハンバーガー一緒に食べようと約束して、逮捕歴も無かったことになっている。
つまり私は悪くない。
「お米から作ったお酒でね。まぁ正確に言うなら気が付いたらできていたというべきなんだけど、奥深い味わいでしょ?」
「すっきりして水みたい。だけどほんのり甘くて、不思議な味……」
「なにか飲みたいものとかあったら言ってね」
「じゃあ……蜂蜜酒」
『承りました』
マヨヒガちゃんが先んじて答えてくれた。
再び壁が開くと瓶に詰められた黄金色の液体が差し出される。
『マヨヒガ特製、ゴールデンミードです』
「ほほう、ゴールデンとは大きく出たわね」
『えぇ、最高の蜂蜜を使って最高の環境で作りました。このために養蜂階と酒造階を作ったほどです』
「それは気合が入っているわね。ちなみに年間生産量はどれくらい?」
『500mlの瓶であれば月100本は生産可能です。まだラインが安定しておらず、元の蜂蜜が生物由来のため厳選するならばこのくらいが限度でしょう』
「そう、吟醸酒の方は?」
『望まれるのであれば、いくらでも』
「さすがね。次はジャーキーでも作ってもらおうかしら。でもお風呂でとなるとナッツとかの方がいいのかしらね……」
『研究中です。現在和三盆の生成ルートは完成していますので今晩から晩酌用のおつまみにすることもできます』
「パーフェクトよ」
『感謝の極み』
いやー、マヨヒガちゃんが色々作ってくれるようになったからだいぶ生活費抑えられるようになったわね。
お酒買うにしてもお店の商品買い占めたり、おつまみのためにコンビニやスーパーのお菓子おつまみコーナーはしごする必要なくなったわ。
この調子で色々作ってもらいましょう。
……ロボットは、まぁ知らないことにしとこう。
うん、お台場のロボット像を勝手に改造して動くようにしてあるとか私は知らない。
えー日常回が続いていますが、これ助走です。
そろそろアレ投入しようと思ってここまで引っ張ってきました。
なお参戦する予定のアレはすぐに退場させられる模様。
でも重要なの!
割とマジで重要なの!
物語的に語っておかないといけないことなの!




