だからアレの妹だって言ってんだろ!
ようやく朝食が終わり、お風呂の時間となったけど問題が発生した。
「……裸、やだ」
「えー、別にいいじゃん裸で飲めや歌えやは普通でしょ」
フレイヤさんはお風呂で裸になること、正しく言うなら裸で一緒にお風呂に入ることに抵抗がない。
しかしマリッサさんがそれを嫌がった。
まぁ海外で公衆浴場があって裸になるのって結構限られてるしね。
ついでに言うとスパイとか暗殺者みたいなことしてたから無防備な姿は抵抗があるみたい。
「はいはい、面倒なのでひん剥きます」
伊皿木流新奥義、瞬間脱衣応用編!
辰兄さんが生み出した技で、即座に服を脱ぐ怪盗アニメを見てできた技。
それを改良して……というか悪用して他人の服を瞬時に脱がせる技となったこれは、なんというか途方もないカルマを背負っている。
いや、実際有用なのよ。
他人の服、いうなれば装備を勝手にはぎ取れるからね。
ただ化けオンはその辺り緩いとはいえ、本人が意図的に脱がないと装備を外せないから使わなかった。
そしてマリッサさん達の鎧は動力部が動いている限り外部からは外せない仕組みだった。
だからここ最近使う機会がなかったのよねぇ。
「ひゃん」
「おう」
マリッサさんは胸と秘部を隠して座り込み、フレイヤさんは堂々と仁王立ちしている。
うーむ、なんとも芸術的なボディしてるわね。
「さっさとお風呂入りましょ。嫌だと言ってもこのまま連れて行くけど、素っ裸で首根っこ掴まれて引っ張られていくのと自分の足で行くのどっちがいい?」
「……タオルを」
「お湯につけないならいいわよ」
フェイスタオルを貸すと胸元で抱えて身体を必死に隠そうとしていた。
うん、なかなかのたわわ。
祥子さんは小さいから余裕で隠せるんだけど、マリッサさんはその大きさ故か布地が足りなくて必死に下に向かって引っ張ってる。
これはこれで背徳的ね……。
私はいつも通り素っ裸の、タオル無し。
フレイヤさんは頭の上に折りたたんで乗せているので隠していない。
「うぅ……」
「そんなに恥ずかしい?」
「傷が……目立つ……」
「傷? あぁほんとだ。結構大きいわね……治そうか?」
「は?」
「いや、治したいならどうにかするけど」
「……本当か?」
「えぇ、これでも嘘は好きじゃないの。記者が嘘情報をばらまくことは信用を失うからね。まぁ必要な嘘はつくけど、今は必要ないから」
「治せるなら……治したい……」
「わかった。じゃあマヨヒガちゃん」
『かしこまりました。成分解析は完了しています。お湯に効能を追加します』
うずめさんと修行で行った山で汲んできた温泉の成分分析をマヨヒガちゃんにお願いしてたのよね。
どうにも細胞を活性化させるとかなんとかで、怪我とか病気が治りやすくなるとか。
しかも癌細胞などは産まれた瞬間から駆逐されるほどに免疫細胞が活性化するとか何とかで、生傷はもちろん古傷だってお湯に浸かれば消えていくらしい。
なんて言ってたかな、たしか……肉体の表層細胞が新しく生成された細胞によって押し出されることで蛇の脱皮に近い感じで傷が消えるとかなんとか。
よくわからないけど、それくらい頑張れば自力でできるといったら祥子さんから信じられないものを見る目で見られた。
「はいじゃあまずは頭洗いましょうねー」
「一人でできる……」
「だーめ。確かにふわふわでいい毛並みしているけれどちょっと痛んでいるわ。ケアしないといけないから私がやります」
「うぅ……」
横でわっしゃわっしゃと勝手に頭洗って、トリートメントも使わず体をごしごし擦ってさっさとお風呂に入ってしまったフレイヤさんは無視。
あの人はなんかもう、ほっといても奇麗だし肌荒れとかそういうのと無縁の人だから。
その間に頭を洗いながら頭皮に刺激を与え、そしてこっそりツボをつく。
傷んだ髪を修復するツボと、内臓の修復のツボ、そして美容のツボの三つ。
「ふわぁ……」
「かゆいところはありませんかー」
「ない……」
ということでちゃちゃっとトリートメントも済ませて、次に体を洗う。
「ど、どこ触って!」
「えー、でもここリンパが滞っててー」
「構わない!」
「だーめ、ほらほらー」
「ひゃっ、ひゃうん!」
可愛い悲鳴をあげながらも脱力してしまったマリッサさん、その後お風呂にお姫様抱っこで連れ込んだけど顔真っ赤にしてずっとうつむいてた。
祥子さんが悪酔いした日、こんな感じでそういう関係になっていたのかなぁと思うとちょっと惜しい気がしたわ。
ヒナプロさんこれは健全!
健全だからね!
マリッサさんがくすぐりに弱くて太ももとかわき腹とかがくすぐったかっただけだから!




