テリーヌはフランス料理じゃね?
『前菜の豆腐と鳥の煮凝り、それと厳選野菜のテリーヌです』
「おー、豪勢ね」
「……とーふ、味しない」
フレイヤさんは喜び写真を撮ってから美味しそうに食べ、マリッサさんは豆腐をちびちび食べながら顔をしかめている。
『こちらの出汁をどうぞ』
「……不思議な味。魚?」
『はい、魚介の出汁を煮詰めて濃縮したものです。その際にも厳選して最高級品を作り出しました』
「マヨヒガちゃん、二つ質問。まずその魚介どこから手に入れたの? そして厳選って無駄にしてないわよね」
『ご心配なくお母さん。順番にお答えしますが、魚介に関しましては地下17階を東京湾をはじめとした多方面の海域に接するように横穴を掘りました。そこから手づかみで捕まえた物を使用しています』
……日本の海ってさ、海底資源が多いのよ。
その採掘は国主導でやっているんだけど、まぁ昔は領海問題で結構もめたらしいというのはさておき、そんなところで勝手に漁業をする。
「ちょっと、マヨヒガちゃん?」
『密漁をしました』
「だから気に入った」
一会ちゃんの愛読書だった古い漫画、現在128部まで出ているギネスに乗った超長期連載漫画で、作者が不老不死という噂のある物品を真似て答えたけどよくはないわね。
まぁ、ジョーク画像なんかで歴史の人物とかと並べられてたりするわね。
実際はお弟子さんとかが引き継いでいるとみているけど、どうなのかしら。
いやそれよりも。
「公安になんて説明したらいいのやら……」
『それならば地下21階で海底資源のエネルギー化などを条件に黙認させています。また私自身に余裕ができた際に公安のシェルター管理を縁お母さんと一緒にやることを条件に牛や馬の手配もしました』
あー、地下で飼ってるのはそういう……。
二足歩行の牛とかどこから捕まえてきたか謎だったけど、公安の手配か。
『二つ目の質問の答えですが、捕獲した魚は厳選の後に地下18階に作った生け簀で飼育しています。そこで不合格となった魚は海へ放流、あるいは地下19階で私の食事として飼育していますので無駄にはしていません。加工過程で失敗したり、問題が発生したものは全て捕虜の方々がいる階層に保存食として安置してあります』
「なるほど、それならいいわ」
『ご理解いただけて何よりです。では、オーダーのあった納豆と卵とご飯です。すべて自家製で、納豆は豆から栽培して発酵、卵は地下で飼育している鶏の物を。米も地下で生産している品種改良品です。病気に強く多く実り味わいもよいものを選ばせていただきました』
あぁ、そういえばこの前公安で新種米の普及についてって話があったっけ。
どうにも品種として非常に優れているのはいいんだけど、優れすぎてて他の品種を根絶してしまうんじゃないかって危惧して当面は公安が持っている農地限定で育てようという話になってたやつ。
たしか成長速度も速くて……2か月で作れるんだっけ。
しかも土をあまり傷めないとかなんとか。
鶏は尻尾が蛇の形してる珍しい品種だった。
「んー! さいっこう!」
フレイヤさん、日本に染まってるなぁ……。
「臭い……生の卵とか気持ち悪い……」
まぁマリッサさんの反応は海外の人としては正しいわね。
『よろしければ温泉卵を用意しましょうか。納豆はお母様が食べると思いますので』
「まぁ無駄にするくらいなら。温泉卵なんて用意してたのね」
『えぇ、温泉を掘り当てましたから』
そういえばそんなこと言ってたわね。
今朝は祥子さんがお風呂に入るって言ってたから私もーと付いて行ったけど、なんか妙に顔を赤くしてた気がする。
血行が良くなったのかしらね……あるいはマヨヒガちゃんが言ってた「そういう関係になる可能性」を考えていたとか?
だとしたらまぁ、嬉しいんだけど解釈違い。
私はね、祥子さんのかわいい所は余すことなくこの目で見て脳みそに焼き付けたい!
しかし「そういう関係」になることを望んでいるわけじゃないのよ!
そりゃ求められたら据え膳だけど、私から手を出す事はない!
なぜならば、祥子さんはエンジェル!
それを汚すなんて……私には罪深いわ。
『メインディッシュはマグロの頭焼きです』
「……朝から凄いわね」
あ、フレイヤさんが気おされてる。
珍しい光景ねぇ。
「魚の頭……目が合った……」
マリッサさんはこういうの見たことないのかしら。
結構美味しいんだけどなぁ。




