ザンギエフが遠野秋葉みたいになる
その後公安さんに手配してもらった特別製護送車で帰宅。
祥子さんも付いてこようか迷っていたけど、まだお仕事が残っているってことでお説教は夜にということになった……逃げられない。
「マヨヒガちゃん、ハッチ開放」
『おかえりなさいお母さん。ハッチ開放準備開始、システムオールグリーン、周囲の安全確認完了、人目無し、ヨシッ、ハッチ開放します』
微妙に不安になるフレーズ混ぜてきたわね……ユーモアが芽生えたということにしておきましょう。
ガオンという音と共に開いていく地面を見ながら、ガンガンと護送車の中で暴れている人達に目を向ける。
「下手に暴れると呪っちゃうぞ」
語尾にハートマークつける勢いでスマイルを送るけど静かにならない……。
仕方がないか。
「目からビーム」
とか言いつつ、今は出さない。
えーとね、ゲームで手に入れた麻痺の邪眼、あれをちょっと真似してみた。
ゲーム的には麻痺のバッドステータスを与えるっていうものなんだけどね、現実的な解釈をするなら筋肉の硬直だと思うのよあれ。
どうすればそんなことが起こるのかと言えば基本は恐怖心だと考えている。
だから渾身の殺気を視線に乗せてぶち当てた。
結果から言えば……効きすぎたわ。
「し、心臓マッサージ!」
「今やってる!」
「シット! ファッキンビッチ!」
恐怖のあまり心臓まで止めてしまったらしい……罵られたけど甘んじて受けよう。
これは私が悪いわ。
「ジェームズ! 息をしろ! 戻って来いジェームズ!」
……なんか、本格的に危ない感じになってきたわね。
「全員動かないで」
今度は軽めに、声に殺気を乗せて放つ。
さすがにこの程度で心停止起こす人はいなかったらしいけど、バタバタと音が聞こえたから何人か気絶したみたい。
とりあえず影に右手を突っ込んで、ジェームズって人の心臓に直接触れる。
そして心臓マッサージ、直に握ってもみもみ……しばらく続けると魂が抜けていきそうな気配がしたので左手も影に突っ込んで、それを掴んで肉体に戻しながら右手から電気を放出。
「かはッ……はぁ、はぁ……」
「ハローMrジェームズ、三途の川は見えた?」
「ホーリーシット……」
「いい夢見れたかしら?」
「糞みてえな夢だったぜ……妹が川の向こうで手を振ってた。近づいたら……黒い手に捕まって背後に引っ張られたと思ったらここで寝てた」
「そう、なかなかの夢じゃない」
「あいつ……幸せそうな顔してるのにちょっと悲しそうだったぜ」
「ならまだ死んじゃいけないってことでしょ。これからあなた達を保護するわ」
「保護? 監禁の間違いだろ糞ビッチ」
「世界公安局が崩壊するまでの間保護するのよ。その後日本の公安が許可だしたらあなたたちは自由、ここで暮らすもよし、また危ない仕事するもよし、普通の生活をするもよし、端的に言えば放任……いえ、放逐かしらね」
「くたばれ日本のメス犬が」
……ちょっと、イラっとしてきたなぁ。
スラング交じりに罵倒されるのは別にいいんだけどね、その内容が問題よ。
ビッチは酷いわ。
これでも品行方正な大和撫子、彼氏いない歴3年……もうすぐ4年。
辰兄さんの影響で肉体関係というものに恐怖心と嫌悪感を抱く乙女よ?
「もしもし、辰兄さん? 今そっち仕事はどんな感じ? あぁ来月には辞めるのね、公安からのお誘い関係なくよね。またお客さんから刺された? うんうん、わかった。公安では色々やってもらうつもりだったけど最初のお仕事は簡単で辰兄さん向きの物になりそうよ。ちょーっとお口の悪い、裏で暗躍してた組織の鉄砲玉を静かにさせる……あるいは辰兄さん好みに染め上げる仕事。うん、楽しみでしょ? 何人かは私の方でやるけど、辰兄さんはハーレム作っていいわよ。じゃあまた今度ね」
よし、これで完璧。
まぁ女性陣を辰兄さんの毒牙にかけるのは気が引けるのでハーレムメンバーは全員男性だけどね!
昔ほど見境なくなっていないとはいえ、今も現役両刀の辰兄さん。
昔の格闘ゲームに出てきたレスラーみたいな男性すら10人中15人が振り返るほどの美貌に改造できる辰兄さんならば、今後有効に使ってくれるでしょう。
あの人さんざん刺されてきたから外科治療とかできるのよね……無免許だけど。
それにそんなことしなくても他人の体型を変えるくらいお茶の子さいさい、よくそれで豊胸とかしてたらしいし。
さてさて、お口悪悪な男性陣がどんなふうになるのか見ものだわ。




