祝:刀君結婚
「まったく、せっちゃんが事件に巻き込まれて犯人確保したら本人も警察に捕まったって連絡受けて車走らせたと思ったら暗部が出撃して妙な組織捕まえたと思ったら公安の姉妹組織よ? 半日足らずでよくもまぁここまで事態をひっかきまわせるわね」
「いやーそれほどでも」
「褒めてない!」
すぱーんと頭をはたかれる。
結構痛い。
「というか祥子さん、そろそろマリッサさんの拘束といてもいいんじゃないです? 泡吹いてますよ」
「え? あ、忘れてた」
そう言って白目剥いて泡吹いているマリッサさんの上から降りた祥子さんは椅子に腰かける。
そして喉が渇いたからとカツ丼のセットについていたお味噌汁を飲み始めた。
祥子さんを人質にして逃げようとしたマリッサさん、祥子さんにあっさりと返り討ちに遭って今に至る。
何気に祥子さんって強いのよね。
さすがにクリスちゃんの組手に耐えられるとは思えないけど、武器込みなら10分くらいなら遊べるんじゃないかしら。
素手だと3分くらいが限度だと思うけど。
「それで?」
「それでとは?」
「なにが起こっているのか詳しく。そして簡潔に」
「んーと、世界公安局っていう裏組織がいろいろ暴れてます。その人マリッサさんと言いますがそこの鉄砲玉。日本にも支部があるので場所を特定して教え子に場所を伝えたら出撃かましました」
「つまり、いつも通り?」
「そうですね、海外の支部は知人にお任せしたので明日には奇麗さっぱりでしょう」
「そ、ならいいわ」
あ、いいんだ。
てっきりお説教コースかと思った。
「お説教は家に帰ってからじっくりと、ここじゃ警察に迷惑がかかるからね。それとマリッサさんだっけ。この人も公安で縁ちゃんの監視下に置くわ。一会さんでもいいわね」
避けられぬお説教……徹夜明けなんだけどなぁ。
「そういうのなら一会ちゃんの方が適任ですね。縁ちゃんは敵対しなければ無視しますから公安の中ボロボロになりますよ、情報引き抜かれまくり」
「ありえる……うん、一会さんにお願いするわ」
「ちなみに永久姉に頼むとこの人殺してって言い始めると思います」
呪いで身動き取れなくして、そのまま芋虫になる幻覚でも見せるんじゃないかしらね。
永久姉、その方法で結構な数のいじめっ子を相手取ってきたから。
曰く、たった二つの呪いで相手を無効化できて心も折れるお手軽な方法、やろうと思えば日本人全員に同じことできるくらいには効率のいい呪いらしい。
「うん却下」
「辰兄さんを公安で引き取るって話が生きているならそっちでもいいですよ。ただまぁ……例外なく辰兄さんの毒牙にかかります」
「却下」
「刀君は……そもそも面倒くさがって放置ですかね。あぁでも彼女さん……もといお嫁さんが怖い方らしくてマリッサさんが刺されるでしょう」
「大却下」
刀君、結婚式こそまだだけど正式に書類を提出したらしい。
お相手の名前なんだっけな……橋姫さんだっけ。
遠からず結婚式するってことで招待されているけど何着て行けばいいかしらね。
ロンドンで時計塔傾かせた時のドレスはダメだろうし、東京タワーの足へし折った時の礼服もなぁ……。
傾くにへし折る、縁起的にもよくないしちょっとデザインが派手なのよね、海外のパーティ参加した時のだから。
あ、エッフェル塔輪切りにした時の服ならちょうどいいか。
あれはシックな感じだったし、輪切りなら指輪っぽい。
「ちなみに羽磨君なら適切に対処しつつ、懐に入り込んで仲良くなって証言引き出します。あの子は昔から動物に好かれてましたし、伊皿木家の中では例外的にいじめの中心におかれなかったタイプです。まぁ最終的に自分から中心に行ってダメージコントロールしてたみたいですが」
「……今一番欲しい人材だわ」
「まぁ仕事の引継ぎが大変ということでしばらくは無理でしょうね」
あの子、一会ちゃんが抜けた後走り回って疲れてるらしいから。
一会ちゃんもちゃんと引継ぎとか後処理の手順とかやってきたんだけど、本人が抱えてた仕事量がとんでもなかったからね……。
有能すぎるのも問題よね。




