ペナルティエリア
決定ボタンを押した瞬間、私の虚像がごきごきと音を立て始めた。
うーん、外見的にはあまり変化は見られないわね。
あ、でも背中から悪魔の翼生えた。
額に目がついているし、腰から木のつたが生えてる。
おぉ、爪と牙が伸びて髪の色が抜けていく……眼も真っ赤に染まって……アルビノっていうのかしら。
あ、腕に鱗がついてる。
へぇ……尻尾も生えてきた。
狼みたいなもふもふの奴、これ生え際どうなってるんだろ。
そうそう、それと全身にひび割れみたいな模様。
赤い線が走っているわね。
これは悪魔の影響かしら。
あ、また翼……んん? これは蝙蝠ぽいからもしかして吸血鬼が関係しているとか?
とか思ってたらまた翼。
えーと、夢魔かしら、蝙蝠との違いは毛があるか無いかね……なんというか蝙蝠の方は産毛があるけど悪魔の方はつるつるで、色は両方黒だけど悪魔の方が赤い線みたいなのはいってる。。
強くなるのなら何でもいいかもね。
うーん、まぁ確かに化け物なんでしょうけれど人間性を残しているわね。
『キャラクリエイトが終わりました。変更したい点はありますか』
「うーん、なんか人間っぽいのよね」
『人間性についての発言を確認、回答します。レベルが上昇するごとに人間性は失われていきます。ただし人間離れした姿であればあるほどレベルは上がりにくくなります。またレベル40で覚える異形化のスキルで真の姿を発揮することができるようになります』
「真の姿?」
『フィリア様の場合このような感じになります』
ぽんっと映し出されたのはタコのような竜のような人のような、そんな何とも言えない化け物だった。
うん、SANチェック入ります。
問題なく回避、へーこうなるんだ。
『ただしこれは暫定的なものです。この先フィリア様がどのような変化を遂げるかによって形もまた変わってくることでしょう』
「そうなのね、じゃあこのままでいいわ」
『かしこまりました、他に質問などはありますでしょうか』
「ないわ。あったとしてもヘルプ機能でなんとかなるでしょ」
『えぇ、ここで答えられることはヘルプ機能ですべて賄えます。では準備ができたら虚像に体を重ねてください。そうすることでゲームの世界に降り立つことができます』
ガイドに言われるまま虚像に体を重ねた。
するとシステムを起動したときのような浮遊感と共に、空に投げ出された。
「……は?」
そのまま落下、翼をいくら動かそうとも速度が落ちることはない。
そのまま地面に激突……と思ったけれど衝撃が私を襲うことはなかった。
うん、私は襲われなかったよ。
周囲にすごいクレーター出来てるけど。
「おぉ、新たなる魔性なる者よ。よくぞ参られた」
「え、あ、はい」
「主の名を聞こう」
「フィリアです……」
「フィリアか、ではまずそなたのペナルティを支払ってもらうことにする」
あ、これペナルティイベントか。
そっかポイント超過分。
という事はこのおじいさん、ペナルティ用のNPCね。
さっきのガイドと同じような存在という事かしら。
「何を奉げるか選ぶがよい」
「じゃあ初期装備のナイフを」
「うむ、次に何を奉げる」
「え? えっと……」
慌ててアイテムを確認する。
確か初期アイテムはナイフと回復アイテムがいくつか。
それからお金が1万ルルだったわね。
「じゃあ初級ポーションを……いくつ必要?」
「初級ポーションならば10個必要じゃ」
「う、たりない……」
インベントリには初級ポーションが5個入っている。
「の、残りはルルで支払いというのは?」
「では初級ポーション5個と5000ルルいただこう」
「はい……」
参ったわね、最初から一文無しになるかお金半分と回復なしかを選べと言われてるわ。
まぁいいか、なんとかなるでしょ。
インベントリから実体化させた初級ポーションとお金を差し出す。
「うむ、たしかに。ではここからチュートリアルクエストを開始する」
「はい!」
よしよし、これで2ポイント分の超過はどうにか返せたみたいね。
けどこれ、初期装備で賄えない分の超過はどうなるのかしら。
検証班とかいたら調べるのかもしれないわね。
「この道をまっすぐ進めば始まりの町に着く。その道中闇に落ちた魔性の者が現れるであろう。それらを倒しながら進むがよい」
なるほど、移動と戦闘に関するチュートリアルというところね。
望むところだわ……パパっとモンスターを倒して始まりの町とやらへ行ってみようじゃないの!