兵站「こいつおかしい」
……整理しよう。
えーと、戦場には英雄の卵って種族を選んだプレイヤーがわんさかいる。
その目的は何だろうか……まぁ経験値かしらね。
人外が忌み嫌われる土地で英雄扱いでしょ?
もしかしたらチュートリアルでも「海を渡ってくる化け物どもに備えろ」みたいなことを言ってるかもしれないけど、それに対抗する未来の英雄なんて王道通り越してベタ。
そんな中で実際に英雄に覚醒、種族が進化した人がいるわけだ。
そう言った人達は国から大々的に祭り上げられて、重鎮ポジションにつける。
このゲームにおいてプレイヤーの知識がどれくらい役に立つのかはわからないけど、モチーフになっている時代を想像すると地図が読めるだけで武官文官待遇なんてのもあり得る。
それじゃあ、そう言った人達が先導して戦争を激化させている?
「ヘイ、王様。最近の戦争って英雄さんの言う通り激化しているの?」
「局地的にではあるが、たしかにその予兆は見られる。他国の話では北部の帝国なんかが相当暴れていると聞いたが……うちの抱えている戦争に関してはまだ余力があるな」
「余力って……犯罪者詰め合わせセットの部隊なのに?」
「むしろ貴族が先頭に立ってるからあっさり終わっているんだよ」
おっと、元だったなと付け足す王様。
「どういうこと?」
「ん? いや、貴族なんてのはそりゃ知識も必要だが何より必要なのは武力だぞ? 魔術と剣術、それと徒手空拳全部使えて当然。それも達人と互角に相手できるレベルでなきゃいけないとなればな」
「達人……さすがにリリークラスじゃないわよね」
「剣聖は例外だ。ありゃもうある種の化け物だからな」
じとりとリリーが睨み、お爺さんが苦笑いをしてみせる。
「まぁリリー換算で言うならそうだな、10人が手を組めばリリーに一矢報いるくらいできるかどうかだろう」
「そのレベルかぁ……あれ? でもヴォイドは弱かったよ?」
「誰だそれ」
「さっき引きずり出した芋虫」
「あぁ、あの豚か。想像だが武器を手にする前にやられたんだろ? そもそも強いは強いが前線に出る事を想定していない強さだ。戦い慣れてる相手にはそもそも勝てねえし、勝負すらさせてもらえないだろうさ」
なるほど、たしかにリリーはヴォイドの手足を生け作りにした。
戦いは剣を交える前から始まっていると信長も言ってたけど、なるほどねぇ……。
先手必勝ということだったのね!
おかしいと思ったのよ、兵糧なんて何年分も用意できるわけないし、数か月分用意しても移動できないじゃない。
当時の技術で何百トンという重量をどうやって運んだか学生時代からずっと疑問だったのよ。
「でも実際に死ぬ気で戦わせれば相応の戦力にはなるな。一騎当千とはいかないが、一騎当百くらいにはなる。それを何人も投入して、その部下共も全部つっこんでいるんだからな」
「そんなに犯罪者ばかりの貴族しかいない国、やばくないの?」
「糞おやじのせいでな……」
またか前国王……。
「英雄さん、それでそんな戦場だけどさ。これからこじれるの?」
「然り。この先大々的な戦となり、そして多くの者が英雄の卵により命を奪われる。我はそれを妨げ、穢れた英雄はこの屋敷に住む者と戦争を求める者達の粛正に来た」
「ほーん。つまり……私が英雄さんとタッグを組んで戦いながら、そこで私の血を吸ってるコピーはこの屋敷に住んでる元王様をコロコロできたか確認しつつ、相手の国でなんか企んでる人たちもまとめて……でいいの?」
「……不本意ながら、大体あっている」
「なるほどねぇ。ちなみに英雄さん達、移動手段は徒歩?」
「悪魔と神より与えられし影渡りの奇跡がある。罪人の影に潜み、その首を落とすためのものだ」
なんて物騒な……ん?
「それ暗殺向きでしょ? 最初あった時とかわざわざ声かける意味あったの?」
「見せしめは重要であろう」
「なーるっ。でもその奇跡? とか言うの使ったら敵陣ど真ん中でしょ? 肩乗っていく? 送るわよ?」
「………………………………不本意だが、それがいいようだ。だが多少体積が減っても文句は聞かん」
体積? なにをいっているかわからないけどいいや。
「じゃあさっさとやりますか……どっせい!」
英雄さんが肩に乗り移ったのを確認してから、お屋敷を戦場に向かってぶん投げた。
窓からこちらを見ているおじさんが見えたけど、あれが元王様かしら。
知ったこっちゃないけど……あぁ! コピーにかじられて触手の一部が!
くっ、体積とはこういう事か!
一般的な兵站:1人辺り1日2㎏あれば足りるかなー
刹那さんの兵站:1日2tあれば足りるかなー




