表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
281/618

腐敗

本作品は戦争を肯定するものではありません。

あらかじめ執筆していたものを投稿しています、ご留意ください。

 その後はそこら辺に転がってる領主邸の兵士のドロップアイテムで新たにキメラを造り、破損したキメラは修復した。

 新しく作ったキメラはヴォイド専用のもので、十字架にしてキメラ馬車の上に張り付けのような恰好で移動させるためのもの。

 当然寒いけど知ったこっちゃない。

 そしてキャシーを迎えに行き。


「あ、おかえりなさい。二人してどこにきゅう……」


 キメラ馬車とヴォイドを見た瞬間に気絶した彼女を荷台に放り込んで、スパイスの村に直行。

 そして剣を構えているお爺さんに手を振りながら。


「久しいというほどでもないが……なんじゃそのけったいなの」


「話は娘さんに聞いてください」


 こちらも荷台に放り込んでリリーの指示に従って王都を目指した。

 道中山賊とかモンスターとかそれらに襲われてる商人とか蹴散らしながら予定通り2日ほどで王都に到着した。

 そして今は王都に入るための入門待ち列に並んでいるところ。

 いやー、スパイスの村からここまで何事もなく来れたわね。

 ヴォイドは死なないように、そして手足が壊死しないように回復薬……いわゆるポーションを口から1秒に1滴垂らし続けるキメラを頭上に配置して放置。

 あと顔を見られたら面倒なので顔面布でぐるぐる巻きにしておいた。


「……すまんなぁリリー。わしのせいで」


「お父さんったら、何回言うのよ。こうして可愛い孫娘にも会えたんだからいいじゃない」


「そうはいうが、わしは自分が情けない……娘の危機に気づいてやることもできずに隠居生活をしていたなどと……あまつさえ孫娘にもこんな苦労を掛けたなどと……」


「あ、あの、お爺ちゃん! 私はお母さんの娘で幸せです! 辛いこともあったけれど、お母さんと一緒だったからこうして元気にしていられます!」


「キャシーもこう言っているんだし、私も無事なんだからもういいじゃない。あとは陛下にヴォイドを差し出して裁いてもらうだけよ」


「そうか……お主には礼を言わんといかんのう魔の者フィリア」


「いえいえ、こちらも気まぐれの人助けですから」


 実際ただの気まぐれだったのよね……。

 別に私の中の何かのセンサーが反応したわけでもなし、縁ちゃんの面影を重ねてはいたけどそれだけ、むしろ縁ちゃんそっくりなNPCいたら即座に逃げるもの。

 本当に偶然、その場に居合わせて気まぐれが発生しただけだからね。


「じゃが……娘にこのような破廉恥なものを着せたことについては弁明の余地なしじゃ……」


「それ救命に必要だったんですよ。着せないと死んでましたよ?」


「世の中、生きていることが何よりも大切というが……時には尊厳の方が重要なこともあるのじゃぞ?」


 ちらりとキメラ馬車の上部に括りつけられたヴォイドを見るお爺さん。


「キャシーがいる以上生きている方が重要でしょう。というか酔っぱらってカリバーン奪われた時点で尊厳もくそもないです」


「……そうじゃな、その件についてはみっちり説教をするとしてじゃ」


「げっ」


 リリーがものすごく嫌そうな声をあげる。


「結局お主、剣を学べていないじゃろ。どうするつもりじゃ」


「んー? いやまぁ偶然いい剣を手に入れたから学ぼうかなーって思ったけど本来の使い手が現れたんだから返すつもりですよ。そうなったらなまくらしか持ってないから別に使わないしいいかなって」


「じゃが紹介した立場、そして恩人に何も返せんというのはな……」


「じゃあこうしましょう。リリーに着せてる装備はそろそろ脱いでも大丈夫、あげるつもりだったけどそれを返してもらう代わりにカリバーンをあげるという事で」


「恩が残っておるぞ」


「それはお爺さんが私の代りにキャシーをしっかり鍛えてあげてください。どうにも……きな臭い予感がするのでそれどころじゃなくなりそうなんですよ」


 王都に近づくにつれて並々ならぬ気配を感じる。

 誰かの、ではなく戦乱の気配。

 なんて言えばいいのかしらね……ピリピリとした突き刺すような、誰もが臨戦態勢と言った様子の気配。


「今の陛下の仕業じゃろうて……」


「今の……?」


 ちょっと引っかかる言い方ね。


「先代は国内の治安維持に努めていた。実際それ以上のことに手を出す余力はなかった国じゃった。じゃが当代の陛下は国を良くするという名目でさまざまな改良を行ってきた。その弊害として国庫が底をつきかけた」


「……見えてきたわ、そこでお金を手っ取り早く稼ぐ方法として戦争を選んだのね?」


「そうじゃ。表向きはこの国が戦争を受けた立場となっているが、実態は陛下がそうなるように仕向けた……言うなれば隣国から戦争を引き出したのじゃ」


「そしてそれに勝ってウハウハになる予定?」


「うまくいけばそうなっていたじゃろう。しかしそうもいかん要因があった」


 戦争だけじゃなく国同士のあれこれって結構面倒だからね。

 思うようにいかないのは当たり前と割り切るべきだけど……。


「この国は海に面している。それだけで優位じゃ。それを良しと思わぬ国が多数、隣国に援助という形で物資人員の提供を行った」


「返礼にこの国からぶんどった土地と港で貿易をすること、それが望みかしらね」


「おそらくはな。こうして国同士の無駄な争いはずるずると続いておる」


「……それについて陛下は?」


「解決策を模索しているものの……と見せかけておる。実際のところどういう形であれこの戦争は終わる」


「終わるんだ」


「うむ、どういう形であろうとも陛下の一人勝ちでな」


 それはまた……きな臭いわね。


当ててた方もいらっしゃいましたが、国の頭も腐ってました。

ちなみにヴォイドの運搬スタイルはボーボボの初登場を御想像ください。

諸事情によりヴォイドの悲鳴はカットしてあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 顔面布で顔が塞がってるのに、 どうやって口に垂らしたポーションを摂取させるんだろう?
[一言] >あとは陛下にヴォイドを差し出して捌いてもらうだけよ 誤字だろうけどもしかしたら誤字じゃないのかもしれない でもちょっと面白かった
[一言] 兵士のドロップアイテム……お、おう。 流れるようなお出迎えからの気絶に吹いたw 剣技はいいのか……まぁ元々技芸の人じゃなくて大道芸(物理的に大きな道を作る芸を含む)な人だものね! すげ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ