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母は強し(伊皿木家基準)

「愚問ですね」


 一瞬呆けていたものの、リリーさんはすぐに柔和な笑みを見せた。

 そしてにやりと、牙を剥くような笑みを見せたかと思うと私が差し出した装備を掴む。


「あの糞貴族に復讐できるチャンスですよ、それを見逃すと思いますか? 死んでもただでは転ばない、あの糞貴族の耳元で毎晩呪いの言葉をささやいてやるつもりでしたが……この手で地獄に叩き落とせるなら悪魔にでも魂を売りましょう!」


「お、おおう……存外乗り気ですね」


「なにより!」


 リリーさんが声を荒げる。

 さっきから黙りこくってしまっていた……というかお腹いっぱいになって眠ってしまっていたキャシーの方を見ている。

 これだけ騒いでも起きないというのは相当疲れていたか、環境的に騒音に慣れているか、はたまたその両方か……。


「この子に刺客を差し向けて、のうのうと暮らしている相手です。それでもこの子にとっては父親、いざという時にキャシーの障害になりうる存在であり、そうなった時に親殺しの咎を負わせたくないんです」


「母親は強いわね……けどこれだけは覚えておいて。これを身に纏ったからと言ってあなたが助かるとは断言できない。ある種の賭けよ」


「賭けですか。今までも綱渡りだったんです、最後の大博打というのも悪くないですね」


「いい根性しているわね」


「そうですね。でなければ貴族の屋敷で使用人なんて泥沼の仕事できませんでしたから」


 なるほど、この人は人生そのものがギャンブルみたいなものだと割り切っているのかもしれない。

 うまくは言えないんだけど、人生の分岐点の話ね。

 私はジャーナリストをやっているけれど元はテレビ局に勤めていた。

 そして退職してフリーになったけれど、それでも食べていけるのは運があったからだ。

 もし運が悪ければどこかの国で死んでいたかもしれないし、あるいはまったく売れずに飢え死にしていたかもしれない。


 このゲームだってそうだ。

 化けオンを始めたからこそ祥子さんと再会して、そして公安に入ることができて安定収入を得られた。

 すべて運が味方してくれたからこその結果であり、後から思えばテレビ局退職はギャンブルだった。

 リリーさんの場合、人生の分岐点全てにおいて賭けをしているんだ。

 残りの人生を賭けた勝負、勝てば良し、負ければ落ちるところまで落ちるという。

 キャシーが生まれたことでそのギャンブルを捨てたけれど、私と出会ったことで最後の勝負に挑むというチャンスを得た。

 こういう人は強いけど脆いのよね。

 自分一人が死ぬならば天下を枕に野垂れ死にの覚悟をしているから無敵だけど、守るモノができてしまうとあっという間に何もできなくなるから。


「それで、これを着ればいいんですね」


「はい、悪趣味ですが悪魔王の装備です」


「確かに酷いデザイン……悪趣味通り越して肥溜めの蠅が好むような趣味ですね」


「まぁ暴食系譜の悪魔王は実際蠅でしたから」


「なるほど、では早速」


 目の前で服を脱ぎ始めるリリーさん。

 普通は目をそらすべきなんでしょうけど……全身に傷跡が残っている。

 真新しい物では注射痕ね。


「その傷は?」


「寝ている間に増えていました」


「糞貴族ですか」


「おそらくは、キャシーのいない時間帯でしたからね」


「その貴族には聞くべきことが多そうですね」


「えぇ、だからこの勝負なんとしても勝たなきゃいけないんですよ」


 そう言ってリリーさんは悪魔王装備を身に着けた。

 ……というか家のセキュリティ突破されてるわ、意味ないじゃないキャシー。


エルデンリングやりながら五等分の花嫁みつつ執筆する生活楽しいけど腕が足りない……。

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― 新着の感想 ―
[一言] あのオンボロによるセキュリティくぐってきたけど直接命は奪わなかったのか……ふーむ? 「もし運が悪ければどこかの国で死んでいたかもしれないし、あるいはまったく売れずに飢え死にしていたかもしれ…
[一言] ヒャッハー族 人外種 人間? リリー  糞貴族撲殺を宣言
[一言] 真新しい物では注射痕ね。 何を注射されたの怖い
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