復活! オンライン復活!
やってまいりました港町、の外の平原。
あの街名前とか知らないけどいいや。
言ってたかもしれないけど覚えてない。
1時間くらいぶらぶらして何もなかったから外に出た。
うん、あのね、私この前運営さんに言われたのよ。
「伊皿木さんはよくもまぁフラグを踏みますよね、磁力でも発しててフラグ引き寄せてるんじゃないかってくらいにイベントの中心にいますよ。だからプロモーションビデオのお願いしたんですけどね」
なんてね。
そりゃまあ……やろうと思えば磁力くらい出すことできるわよ?
というか生体電気を外部に放出してスタンガンの代りに使うこともできるけど、あれ頑張っても象を気絶させるのが精いっぱいだから使い道あんまりないのよね。
うずめさん脅かすのに使うくらいかしら。
あ、あと山奥でスマホとかの充電切れた時。
それにその程度でイベントフラグ引き寄せるとか無理でしょ、どう考えても。
というわけで1時間ぶらぶらしてても何もなかったという事は、大きなイベントは無いとみなして出てきたんだけど……。
「うーん、これまた何もない」
平原は殺風景だった。
整備された道、モンスターはおらず、とても平和に見える。
しばらく歩いてもそれは変わりなく、しかし一つだけ変化が起きた。
「おや、珍しい。あんた魔の者か」
街道を進んでいると前方から馬車に乗ったおじさんが近づいてきたのだ。
幌馬車……日差し除けをしているという事はお酒とかの荷物かしらね。
あとは野菜やお肉?
もしかしたら人を運んでいる可能性もあるけど、それはどうでもいい。
「はい、港町から来ました。トラブルとかもなさそうなので適当に他の街を見に行こうかなと思いまして」
「なるほどなるほど。あの街は平和だからね。辺境とはいえ王様の意向で厳重に警戒されているからね、トラブルなんか起こらないだろうさ」
「へぇ、王様ですか」
「あぁ、あそこは国の玄関口の一つでね。海賊なりモンスターなりに頭を悩まされていたが代替わりしてからはめっきり落ち着いたのさ」
「そんなことがあったんですね」
「他国からの侵略なんかもあったが、まだ俺が子供の頃だったからなぁ……今じゃ国境付近で睨み合いしてるだけだって聞くね。おかげで他の大陸に売る物も用意できて俺達は安心して暮らせてるのさ」
「国境付近……面白そうですね」
ちょっとつついたら爆発しそうな辺りがたまらない。
膨らみ続ける風船を周りに投げ渡していくゲームあるじゃない?
あれをダイナマイトでやったことあるけどスリリングで楽しかったわ。
結局負けちゃって髪の毛が焦げちゃったのよね……一時期ショートカットにしてたけど、理由話したら祥子さんにひっぱたかれたわ。
ダーウィン賞でも欲しいのかって言われて調べたけど、欲しいとは思えなかったわね。
「面白いか……やっぱり魔の者は俺達とは違う感性しているんだな」
「そうかもしれませんね」
「ただこっから国境付近に行くにゃだいぶかかるぞ。領地をいくつも跨いでようやくだし、隣の領地……一番近い街に行くにしても徒歩じゃ10日はかかる。途中に村とかはあるけどな」
「そんなにですか……飛んで行くにしてもちょっと面倒な距離ですね」
「あー、空はやめた方がいいぞ。雲の上は竜の縄張りだ。今の王様が相互不可侵を決めたから大人しくしているが、近づけばあっという間に黒焦げにされるか丸呑みだ」
「ドラゴン……」
「おう、ありゃ本物の化け物だ。お前さんが魔の者とはいえうかつに手出しすればあっという間に1000を超える数が飛んでくるだろうさ」
1000体のドラゴンか……思えばゲリさん以外のドラゴンと戦ったことないわね。
ゲーム始めたばかりの頃だったから苦戦したけど、今だとどうなるかしら……相性は悪いけれど勝てない相手じゃない。
でもそれが1000体いて、しかもゲリさんのようなデメリットがない個体だったら……うん、面倒。
となると地道に街道を進むしかないか。
「地上を行こうと思います」
「そうしときな。俺らも巻き添えはごめんだし、何より王様怒らせたらこの国にはいられねえぞ」
王様ねぇ……港町の防備を固めて、戦争を膠着状態に持ちこんで、化け物筆頭のドラゴンと不可侵条約を交わす。
随分と都合のいい、というかなんというか。
からからと音を立てて去っていく馬車を見ながら考えるけれど、想像でしか語れない以上行動あるのみかしら。
ただ行動と言ってもひたすら歩くだけ……走ってもいいけど、下手に力を入れると地面踏み抜いて整備された街道をぐちゃぐちゃにしちゃいそうだし、さっきみたいにすれ違ったときに衝撃波で吹っ飛ばしちゃいかねない。
それは危ないからなぁ……あ、なら足を用意すればいいのか!




