伊皿木流戦闘術
「それで何を買いたいの? こう言ったらなんだけど、一会ちゃんもちにゃんグッズならだいたい持ってるでしょ?」
「今回は予約、新進気鋭のデザイナーを取り入れて最高のグッズを作ったって話だからね。それをどうしても手に入れたいのよ!」
「新進気鋭のデザイナー……」
「ああ! それって!」
「クリスちゃんステイ」
クリスちゃんが口を滑らせそうになったので一応止めるけど……。
「クリスさん……? 刹姉……?」
「あ、はい。全部お話しします」
まぁ一会ちゃんはごまかせないわね。
ひとまず長い話になるという事でお茶を淹れてから食卓でお話し合い。
おやつに用意した徳用ポテチを摘まみながらだけど……。
「つまり縁がそのデザイナーという事なのね……」
「うん」
「……納得したわ。あれがねぇ」
「あれ、怒らないの?」
「なんで怒る必要があるのよ」
「だって一会ちゃん、縁ちゃんの才能の無駄遣いとかにすごく怒ってたし、それに大好きなもちにゃんグッズの意見でぶつかり合ってたじゃない? そのデザイナーなんて……」
「そりゃ才能腐らせてるのは腹立つし、あの子はもちにゃんグッズをちょうどいい枕くらいにしか考えてないかもだけどね。それでも妹がちゃんとしたお仕事を見つけたなら喜ぶわよ。なによりあの子とはそりが合わなくても私とは違うベクトルでもちにゃんファンということに変わりはないんだから」
「……一会ちゃん」
なんていい子なのかしら。
咄嗟に抱きしめて頭を撫でてしまう。
「ちょっ、やめっ、ポテチでべとべとになった手で髪に触らないで!」
「一会ちゃーん、いい子いい子」
「刹姉は悪い子! はなしなさいってば! あぁもう、伊皿木流流転掌破!」
「ぐぼっ!」
おぉう……一子相伝の伊皿木流奥義をこんなところで使うとは……。
先祖代々積み上げてきた徒手空拳に始まりあらゆる武器を使いこなす戦闘術、それが伊皿木流。
砦イベントの時にやった手を使わないリボルバーのリロードとかもこの一部なんだけど、まともに教わったのは一会ちゃんだけという代物。
その奥義である流転掌破は掌底を叩きこむ際にひねりを加える事で全身の水分を振動させ内臓にダメージを与えると同時に、その血流を逆転させてしまう恐ろしい技なんだけど……まぁうちの兄妹なら無理やり血流戻したり水分コントロールして内臓へのダメージを抑える事もできる。
とっさだったから胃へのダメージしか遮断できなかったから息が詰まったわ。
ちなみに千年不敗の記録を持つ流派で一部では恐れられ、また一部では超えるべき壁と言われているのは余談。
現伊皿木流継承者にして当主は一会ちゃん、まぁ裏家業の話ね。
表家業は刀君が当主になってるから。
その先代はお母さんで、子供の頃は毎日のように遊んでもらってたっけ……。
私と縁ちゃんはその特訓を見て覚えたけど、刀君はそもそも覚える気がなく、辰兄さんは自分の身体で受け止めて覚えて更に他流派の技とかもその身で覚えたタイプ、女性目当てで道場に通ってた人だからね。
羽磨君も使えるっちゃ使えるけど一会ちゃんみたいに日頃のツッコミに使えるほどの技量じゃないというか、そもそも羽磨君の本領はそっちじゃない。
永久姉は最初から覚える気がなかった。
そんなこんなで正当後継者ではないけど使える人は多かったりするのです。
ちなみに伊皿木家の分家の中にはこの技を用いて暗殺などをするようになった家もある。
そういう家は伊皿木の名を捨てる事になり、今は如月を名乗ってたっけ。
何度か殴り合いした事あるけどなかなか強かった。
聞くところによると数百年前に伊皿木の双子がどちらが正当後継者になるか殴り合いで決めて、負けた方が如月を名乗り始めたとか。
今はなんか知らないけど変な廃駅のホームを拠点に活動しているらしい。
伊皿木家が総出で探してるのに見つけられないとかどこにあるのかしらね、そこ。
一会ちゃんの登場によりしばらくは身の回りの話が続きます。
気になってらっしゃる方がいましたが、ペットのモモの話もあります。
なんなら刹那さんの……ゲフンゲフン。




