伊皿木家ってなんだ?
というわけで夜の化けオンログインは見送り、その事をギルドメンバーの皆さんに連絡したところ……。
「こっちは好き勝手にギルド戦楽しんでるから好きにしていいよ」
「お前がいると闘争が容易くなる、可能ならギルドの名前だけ変えて二度とギルド戦に関わるな」
「心臓を奉げよ」
「パーティですか……人前出たくないからギルドホーム引きこもってますね」
「草」
といった感じの反応が返ってきた。
とりあえず、司馬さんが酷い。
帰宅してからしばらく待つことにしたのだけど……。
「あれ、早いですね」
「おかえりんこー」
「ただいまクリスちゃん、うずめさん」
「それでどうしたんです? 今日はロケハンだったと聞いてますが」
「それが思いのほか面倒な仕事受けることになっちゃってね、その見返りに皇国ホテルの食べ放題券を手に入れたから一会ちゃんの歓迎パーティでもと思ってさ」
「あー、それなら明日の方がいいですね。さっき祥子さんから今日は遅くなるって連絡がありましたので」
「そうなの? 何か面倒ごと?」
「まぁ……面倒と言えば面倒ですね。具体的には一会さんがぶちぎれているというか……公安の管理体制がグダグダ過ぎて怒っているとかで」
「あぁ……確かにあそこの書類管理は結構雑ね。結構しっちゃかめっちゃかになってるから」
書類の並びがあいうえお順でもなければ、日付順でもない、とにかく雑多に並べられてるのよ。
一応それも覗き見対策として役に立っているのだけど、逆に探したいときは面倒という。
ほら、順番がバラバラだからこそお目当ての書類を探すのに時間がかかるというね。
「ちなみに、他に何か聞いてない?」
「一会さんから伝言です。騙されるのが悪いという意見もあるけれど、結局のところ騙す人間が一番悪いのだと」
「……怒ってた?」
「すごく」
「……ちょっと、逃げていいかしら」
「続きですが、逃げたら絞めるだけじゃ済まさないだそうです」
「大人しく受け入れます……」
ふっ、短い人生だったわ……。
一会ちゃんが怒った時はその怒りを受け止めるしかないのよ。
時間が解決してくれるほど甘い性格はしていないから……まぁ喉笛潰されるくらいは覚悟しておかないとね。
「ちなみにこうも言ってました。あの金額はこの仕事に対しては貰いすぎている、桁を一つ落としてほしいと」
「あ、最初の金額でよかったのね」
「でも騙したのは事実だから3日はご飯食べられないくらい痛めつけるとも言ってました」
「……パーティは4日後で」
「最後にもちにゃんグッズVRウィンドウショッピングと美味しいお店3日間おごりなら許すとも」
「グッバイ今回の収入!」
100万円で3日絶食が回避できるなら喜んで支払うわ!
というかこれでも一会ちゃんにしてみたら優しい対応なのよ……。
あの子問答無用でこっちの首狙ってくるから……。
ガッチガチの殴り合いしたら最後に立ってるのは縁ちゃんだとして、それを除けば再生力に秀でている辰兄さんか、問答無用で強い刀君、持久力のある私の誰かになる。
けど殴り合いじゃない戦いとなったら縁ちゃんという殿堂入りはさておき、永久姉か一会ちゃんなのよね……。
あの二人は戦術こそ違うけど頭脳派であり、まともに戦わないタイプだから。
なんなら一会ちゃんに至っては伊皿木家バトルロワイヤルやったら最後に立ってる可能性が高い子でもある。
私達をうまく誘導して縁ちゃんにぶつけて、縁ちゃんが飽きたころに勝利宣言するような子だからね。
過去3度起こった伊皿木兄妹大喧嘩のうち2回は不戦勝に終わったけど、残る1回は一会ちゃんの一人勝ちだった。
なおその時の喧嘩の理由は年末のテレビ番組の権利争い。
壮絶な殴り合いの末に奥多摩の地図が書き換えられることになったとだけ言っておくわ。
残り2回は……お母さんのストップが入った。
詳しくは語らないけれど、縁ちゃんすら敵わないお母さんは何者なのかしらね。
ちなみに一会ちゃんは一子相伝の伊皿木流戦闘術の使い手です。
近々そんな話出てきます、基本的に2~10話分の書き溜め持ってますので書いてあります。




