ギルドホームの概念壊れる
「なぁにこれぇ……」
「なんとも摩訶不思議な……」
「趣があるといえばいいんでしょうか……」
こちら、我がギルドの誇る常識人三人の意見。
順番に私、司馬さん、テンショーさんのお言葉。
対する非常識人の面々だけど、ヘルメスさんとルシさんとニーアさんは笑い転げてる。
息も絶え絶えと言わんほどに笑いすぎてバステついてるほどだ。
「なかなかの造形美ね」
「ロックじゃねえか」
「なかなかいかしてるな」
「祭壇にも見えるしいい感じ」
順番にイシュタルさん、ロッキーさん、リルフェンさん、テスカトリさん。
はい、私達が何に対して感想を述べているかというと……。
「crazy」
ぽつりと漏らしてしまった一言で全てが言い表せる我らがギルドホームだ。
亜空間に用意されたこれ、費用は基本的に私持ち、一番ゲーム内通貨余らせてたからね。
みんなそのうち返すといってたけど、たぶんゲーム内じゃなくてリアルで何か送ってくるんでしょうね。
そんなギルドホームだけど……まず巨大な岩。
アステカの祭壇みたいになっているんだけど切り出した岩を積み重ねて作った類じゃなくて一個の岩でできてる祭壇。
超巨大なのは言うまでもなくね。
そんな祭壇だけど、大量の宝石がちりばめられて埋め込まれている。
中にはよくわからない凧型二十四面体の黒い石とかも混ざってる。
その黒い石は覗き込むとこちらを侵食してくるような威圧感があるので見なかったことにしつつ、なんか祭壇なのにピラミッドみたいに中に入れるようなので足を踏み入れてみると草原が広がっていた。
あの……祭壇の中に草原があって、そこにインド風の街があるんですよ。
それでね、その家の悉くが奇妙な素材で、試しにかじってみたら食感は木材や鉄筋なんだけど味はお菓子とかお肉のそれだった。
いや、インドのカラフルな建物見て美味しそうだなと思ったことはあるけど本当に食べられるとは思わないじゃない?
食べようと思えば食べられるけど、美味しくはないはずなのに美味しいのよ……。
そんな街から見える範囲には雪山があって、その上には天空城とも呼ぶべきお城が存在している。
山の上じゃなくて、山の上方、つまり雲の上に。
片っ端から探索してみたけど、おかしな空間になっているのは間違いない。
外から見るよりも広いのはもちろんのこと、なんというべきか……全員の希望が盛り込まれている?
例えばテンショーさんの希望である狭くて落ち着く空間はとある一軒家がそんな感じだったし、どの家も食べられるのは私の希望、広々とした空間を求めたヘルメスさんの希望はこの内装で、外観はテスカトリさんかしら。
何か所か空間がねじ曲がっててそこにはいったら宇宙に出たし、燃え盛る血の池とかあったし、お城とか建物は見た限り全ての家にあとから手が加えられた跡があった。
あの、なんか知らないけれど無味無臭の素材、たぶんパテみたいなもので全ての家の角が埋められていた。
深く考えたら負けだと思うけどさ……どう考えてもまともじゃないのよね。
「はい、第一回ギルド総会議を始めたいと思います。議題はこのおかしなギルドホームについて」
「このままでいいんじゃない?」
「面白いからOK」
「死ぬほど笑えたから文句なし」
「コンサートには最適」
「ギターかき鳴らして苦情来ないからいい」
……この、なんだ、このダメな意見は……いや問題児たちの意見なんだけどね。
「燃え盛る血の池はいい趣味だ、実に素敵だ」
「……OK、異論のない方は退出を。各々好きな場所使っていいです」
そう伝えると問題児たちは全員意気揚々と外に飛び出していった。
残ったのは常識人メンバーのみ。
「どうしますこれ」
「どうにもならんだろ……」
「頭痛いので引きこもっていいですか?」
「……第一回ギルド総会議、ここに閉廷、各自好きな家で好きに過ごしてください。ポイントとか使って家具とか充実させるのもご自由に」
こうして、私達の無茶苦茶カオスなギルドホームは無事……なのかはわからないけれど仲良く使える状態になった
なおテスカトリさんだけ内装に不満を抱いて、外装である祭壇を居住区にすると言い張り外で過ごすことになったのだった。
まぁ普段は中でのんびりするでしょうけどね。
おかしいな、創造するのが創作なのに概念破壊しかしてないぞこの作品。




