ツッコミ不在の恐怖
しばらくしてロッキーさんから悪魔騎士団の殲滅完了の知らせが届いた。
フラッグ戦の時間制限は90分、その間にフラッグを奪取されたら負けでディフェンスは何度も復活する。
ただしそのたびに攻撃力などが落ちていく仕様になってて、ついでにRFB使ってる人の攻撃も通りにくくなるし加重デバフがかかるようになっている。
逆に勝利条件はフラッグを守り通すか、敵の殲滅。
そして盤面は終局、テスカトリさんから最後のグループを撃破したと報告が入ったことで空に高々と花火が撃ちあがり私達の勝利が知らされた。
「虚しい勝利だわ……」
私このイベントでやったの、なんか恨み抱えてる人倒したのと悪魔騎士団のトップ二人にセクハラした事だけだもの。
正直勝った気がしないというか、消化不良というか……よしっ、司馬さんのガチバトルに混ぜてもらいましょう。
そこでちょっと暴れたらすっきりするかもしれないわ。
というわけでガチバトルに参加。
「お前と共に戦うことになるとはな」
「そういえば司馬さんと肩並べて戦うのって珍しいですよね」
基本的に私は司馬さんを取材する側だった。
一緒に遊ぶにしても対戦形式で遊ぶことが多く、リアルで共闘するばかりだった。
まぁ……海外のギャングは怖いのよ。
日本の暴力団よりも怖い、やり方がえげつないし、手段も選ばないからもう本当に酷い。
それを二人で撃退しながらイベント会場まで乗り込んだりしてたわね……結局会場爆破されてイベント中止、ぶちぎれた司馬さんによってその日のうちにその国のギャングは一掃されることになったけど。
あの時は私も手伝わされたけれど、ほとんど出番なく終わったわ。
「して、打ち合わせ通りの運びでいいのか」
「えぇ、司馬さんがタンクとして前に出て大暴れ、私が後続のアタッカーとして大暴れ、残った皆さんで残党を各個撃破で」
「つまらぬ戦いであれば俺は早々に身を引くぞ」
「たぶん面白くはないですよ。魔法とか使ってくるとはいえ銃とか爆弾持ってるギャングと変わらないですから」
「む……その程度なのか?」
「そんなもんですよ。日本人は争いごとには弱いんです」
「なんと軟弱な……日本の武士と戦えると思っていたのに」
「絶滅危惧種って知ってます? 武士と大和撫子は2000年代初頭には絶滅危惧種認定されて、現代では伊皿木家の長男長女を除いた5人しか残っていないんです」
「……お前を大和撫子認定するのはいささか問題があると思うぞ。少なくとも日本の男女から苦情が投げつけられそうだ」
「酷いことを言う。私は立派な大和撫子ですよ。巴御前に負けず劣らずの!」
「巴御前……たしか女子の身でありながら戦場を駆け回ったという。なるほど、そういう意味では大和撫子として不足なしか」
「はい、満ち足りてます」
「ならば今一時、俺は破壊神の異名を捨てこの国の武士として戦おうではないか。正々堂々、そして罠も食い破り一刀に魂を込める戦いをすると誓う」
「とかいいつつ、それいつも通りですよね」
「いつもは破壊に重きを置いているだけだ。此度は戦いに挑む覚悟を決めただけのこと。ヘルメス風に言うのであれば風のごとく柔軟に己が身を合わせるだけのことだ」
「まぁそういう事なら期待してますよ、タンクの武士司馬さん」
「先陣は任せるがよい、大和撫子伊皿木刹那よ」
「リアルネームは禁止でーす」
「む……では言いなおそう、後続は任せるぞフィリア」
「お任せあれ!」
今回は全力で前に進む。
司馬さんが囲まれないようにアタッカーの私が背を守り、敵陣を切り崩した司馬さんを追いかける。
そのために必要なものと言えば単純な火力よりも手数。
となると、今回は魔導書はインベントリにぽいね。
代わりに取り出すのは3丁のロストガン。
暇なときにカジノ行ってパンドラ開けてたからめちゃくちゃ余ってる。
古いゲームでリボルバーをジャグリングしながら撃つ人がいたからその真似をね。
ふっふっふっ、実はこっそり練習してたのよ。
全力疾走しながらジャグリングしての射撃、流鏑馬よりも難しかったけれど何とか会得できた。
正直に言って普通に殴った方が早いけれど、それだと距離的に届かない相手とかいるからさ……いや、衝撃波とかビームあるけど味気ないのよね。
せっかく大和撫子と認めてもらったのだから、ここはおしとやかに武器に頼るとしましょう。
まぁ、近づいてきたら体術も使うけどね。
ふははは、このギルドの力を見せてやる!




