被害者の会
面倒だったから悪魔騎士団の方々はお通しした。
うん、あの、ちょっとレイラさん達が可哀そうになってね……まとめてどうぞ通ってくださいって。
それにロッキーさん達にも働いてもらわないと不公平だから。
「さて、お次は誰かしら」
「お前が……お前がぁ!」
「おぉう」
なんか人間の剣士さんがいきなり激昂して襲い掛かってきた。
えーと、天使と精霊と……悪魔に吸血鬼をもとにしたキメラ系化け物?
なんか親近感覚えるけれど……なんであんなに怒っているのかしら。
「お前は俺達のギルド聖光が倒す!」
「んー、なんでこんなに恨まれてるの?」
「お前のせいでなぁ!」
「うわっ危ない」
人間さんの剣筋が割と奇麗で当たりそうになった。
あのね、RFB使ってないと身体の動きがある程度システムに引っ張られるのよ。
そうすると頭で動かそうと考えている軌跡と、実際の軌跡が上手くかみ合わずに剣筋がブレることになる。
それを抑制する方法は完全にシステムに任せるか、あるいはシステムの動きを理想の物として上手く取り入れるかの二択。
この人の場合RFB使ってないみたいでシステムに引っ張られているはずなんだけど、違和感がないくらいに使いこなしている。
つまり後者ね、前者の場合剣筋は良くとも所詮は機械の出した最適解にすぎないから読みやすい。
後者はシステム利用しつつも本人の意思でやってることだから読みにくい。
相当やりこんでいるわね……。
「はっはぁ!」
「光よ」
「風よ」
後ろで天使さんと精霊さんが魔法を発動させているけれど魔眼で対抗する暇がない。
人間さんと化け物がこっちの動きを封じているのもあるけど、それ以上に位置取りが上手いわ。
常に視線を遮るように動きつつ、かといって1秒以上範囲攻撃で薙ぎ払われないように位置取りを変えている。
各個撃破が有効かもしれないけれど……面倒ね。
「いいでしょう、こちらもそれなりに本気を出します」
ホルスターからロストガンと魔導書を引き抜いて構える。
「散開!」
「遅い」
まず逃げようとした化け物さんの脚をロストガンで打ち抜く。
ふはは、銀製の弾丸は痛かろう。
あまりデメリットレベル上げていないのか、致命傷には見えないけれど下半身が上手く動かせないみたいね。
「シトリー! くそっ、暴食め!」
「誰が暴食だおらぁ!」
切りかかってきた人間さんの横っ面に魔導書アタック、角でいったわ。
金属鎧を砕きながら、その先の顎を穿ち、そして首が180度回転する……なかなかグロテスクな光景ね。
「空間歪曲!」
まぁそれで終わらせるつもりもなく、空間を捻じ曲げて人間さんを拳サイズの肉塊に変える。
あとは消滅する前にかじりついて跡形もなく消失。
ふんっ、人のことを悪く言うとこうなるぞ。
「さぁて……次はだぁれだ」
「「「降参!」」」
残った三人だけど、笑顔で降参を宣言した。
判断が早い……。
フラッグ戦エリア外に転送されるためか光の粒子になって消えていく三人。
まったく、消化不良もいい所よ……。
「今だ! 光よ!」
「不意打ちとは卑怯なり!」
天使さんが放った光の槍がこちらに襲い掛かってくる。
えーと、回避は無理だし迎撃も両手が塞がっている……足もとっさのことで動かないとなると……。
「喝!」
気合を入れて咆哮。
うずめさんから教わった明鏡止水の使い方の一つで、気を自分の周辺に散布して防護膜の要領で働いてもらうとかなんとか。
よくわからない説明だったのでかみ砕いて説明して貰ったら達人がやる気当たりと同じという事だった。
それならば経験があるからね、さっくりと会得しておいたのが役に立ったわ。
気の壁に阻まれて魔法ははじけ飛び、そして範囲を見誤った結果消えゆく三人を巻き込んで周囲にクレーターを作った。
……いやぁ、領主邸の職員避難させていたのは慧眼だったわ!
さすが私!
これ絶対マリアンヌに怒られる!
くっそぉ……あの人たち何を怒っていたのかしら。
キルされた側はログに「誰某にキルされました」って出ますからね、刹那さんのログにもあるんだけどあの人のログは光速で流れてる。




