悪魔騎士団
街の外から雄叫びが聞こえる。
この前戦争を仕掛けまくった時よりも盛り上がっている様子だ。
「エリクサーだ!」
「エリクサーをよこせ!」
「あわよくばお前ら全員死ね!」
あー、見事に人間性を犬に食わせてるわね。
罵り合っているのに同士討ちが起こらないのはこの後に備えてかしら。
感動的ね、でも無意味よ。
「ぎゃー!」
「心臓を喰ってるだと!」
「暴食さん以外でもこんな人がいるのかよ! 聞いてねえぞくそ!」
はい今暴食さんって言った奴遠距離ビーム狙撃、潔くポイントだけおいて死ね。
「ジャンがやられた!」
「なんだここ! ギミック多すぎるだろ!」
いやぁ、見事に混乱してるわね、愉快愉快。
とはいえ、そろそろテスカトリさんの防衛も終わるころかしら。
負けるとかそういう意味じゃなくて、難攻不落も過ぎると誰も攻め込んでこないからね。
そうなると今後ポイント稼ぎがしにくくなるから誘い受けするのよ。
適当なところでテスカトリさんは撤退して、挑戦者たちには四苦八苦してもらいながら街の城門を開けてもらう。
そうして中に入れば……。
「ここは任せて先に行け! お姉さん、熱い夜ってのは文字通りの意味?」
「お前だけにいい格好はさせるかよ! そっちのお姉さん俺とナイトバタフライしない?」
「ふっ、馬鹿どもが……俺も手を貸そうじゃないか。あ、おねーさん鞭で人を叩くのに興味ないですか?」
……男って馬鹿ばかりね。
テスカトリさんのところで3割脱落、開門までにさらに2割脱落で半数になって、残った面子の半分……まぁ男性陣が色欲領域のサキュバス系悪魔につられていなくなった。
残るは女性プレイヤーばかりという状況。
……おん? 何人か男性が残ってるわ。
なかなかいい根性しているというか、誘惑に強いというか……ふむ、これは盛大に歓迎してあげないといけないわね。
……来たわね、第一陣
「まさかというか、やはりというか……君のギルドだったとはな」
「あれ、あなた砦イベントの時の……えーと」
「名乗ってなかったか? レイラだ、レイラ・ドレモンの名で遊んでいる」
「改めてフィリアです、そちらの人はルリさんでしたよね」
「お久しぶりです」
砦イベントの時に一緒のチームになった人たち、指揮官やってた人だけど名前聞きそびれていたわ。
レイラさんね……覚えたわ。
フレンドリスト見ればわかるかもしれないけれど、事有る毎にフレンド登録増やしてたから気が付かなかった。
というか普通に名前と顔が一致しない人が多すぎる。
「それで……見たところナマモノはいないようですが、釣れました?」
「釣られそうになっていたから引っ張ってきた」
レイラさんが芋虫のような物体を地面に落とす。
何か担いでいるなぁと思ったけど、よく見たらそれは簀巻きにされたナマモノだった。
「フィリアさんちっす! ギルマス、今からでもサキュバスのお姉さんたちのところ戻ったらダメっすか?」
「肉盾になってリアルで死んでから地獄に落ちてもてあそばれてこい」
「ひでぇ……」
「えーと、とりあえずお察しの通り私のギルドがこのフラッグ戦用意したわけですが……どうします? 戦います?」
「前に言ったと思うが、うちのギルドは君を倒すという目標を掲げているからね。お相手いただけるというのであれば望むところだ」
「いいでしょう、勇気と蛮勇の違いを教えてあげます」
「楽しみだ」
にやりと笑うレイラさん。
それに合わせてギルドの方々、サキュバスに釣られなかったのか、あるいはナマモノの惨状を見て諦めたのか結構な数の男性が残っている。
女性の数も同じくらいだからここまで脱落者無しかな。
だとするとかなり優秀なギルドらしい……。
ナマモノはともかくとして。
「では、ギルド悪魔騎士団所属ギルド長レイラ並びに同胞たち、参る!」
「帝国紳士的野球殺神合唱団ギルマスフィリア、きませい!」
こうして戦いの火ぶたは……あれ、切られたんだっけ、落とされたんだっけ、合わせて使うのは間違いって知ってるけどこういう時うまく出てこない辺り私も少しずつ歳を取っているのね……ほろり。
ギルマス「種族悪魔だから悪魔騎士団って名前にした。もっとふさわしい存在がいるから名前負けしてて悲しい」
刹那さん「ぶえっくょいしゃぁうぅ……ずびっ」




