伊皿木流くっころ
「石になーれ!」
ひゃっはーしながら行く先々で目についた強欲の悪魔達を石に変えては砕いていく。
いや、石化の魔眼便利ね。
耐性のある相手だと時間がかかるけど、それでも四肢を封じる事ができるから一方的に倒せる。
しかも石化した相手を殴り砕けば散弾になるし、欠片を拾って指弾で撃ちだせばそこそこの攻撃に使える。
当然相手もよけようとするんだけど、そこは麻痺の魔眼で動きを鈍らせれば面白いくらい当たる。
「その程度か強欲系譜! 屈しろ! 楽に殺してやる!」
ちなみにこれ、強欲系譜のどこかとどこかの戦争中に乱入したもの。
地獄エリアの戦争イベントだけど領地という概念をかなぐり捨てている強欲領域の連中はアナウンス無しで戦争が起こるみたい。
まぁ、部族同士の突発的な小競り合いみたいな扱いなのかもしれないわね。
「隙あり!」
「無いわよ!」
背後から切り付けてきた阿保、なんで不意打ちで声出すのかしらね……様式美?
明鏡止水で気付いていたからどのみち無意味だったけど、蔦で串刺しにしてから石化させて散弾になってもらう。
「くそっ、なんで大公級がこんなところに!」
「あいつを殺せば手柄だ!」
「首置いてけ! なぁお前首置いてけ!」
「お前らが首置いてけ!」
変な悪魔が混ざってたけどとりあえず魔力とやらを目に集中させて、そして視界全域に即死の魔眼発動!
相手のレベルはそれなりに高いけれど、込めた力が多かったからかレジストされることなくみんな死亡した。
「っと……」
しまった、デメリットの四肢封印のこと忘れてた。
今回は右足が動かなくなったみたいでたたらを踏んでしまったけど、まぁこの程度ならいいハンデかしらね。
「空間歪曲!」
移動中に魔導書を適当に読み漁って手に入れた魔法を展開してみる。
空間そのものを捻じ曲げるというインチキ魔法だけど、その分集中力が必要で失敗するとブラックホール作って周囲一帯自分もろとも巻き込んでの自爆になるというとんでも魔法。
ただしそれは通常の状態での話で、一緒に手に入れた持ってるだけで魔法が上手くなる素敵な本のおかげで結構気軽に使える。
うん、魔力消費とやらを気にしなければ。
今まで魔法系はほとんど使ってこなかったし、そもそも魔法でできる事は物理でも代用できるから魔力消費に対する感覚がすっぽり抜け落ちていたのよね。
なんだろう、お祓いした時みたいな精神的疲労がたまっていく感覚とでもいうのかしら。
ごっそりと体力持っていかれるような気分なのよ。
まぁそれでも私は体力ある方だし、なんなら各国で軍事訓練の取材という名目で現地の軍人よりも多い物資、主に取材道具と食料を担いで行軍の真似事したこともあるからね。
魔眼と魔法諸々含めて百発くらいならぶっ放せると思う。
ただ難点としては魔法に集中すると体術がおろそかになるということ。
体術に専念すれば魔法がおろそかになるというジレンマのせいでまだまだスペックを持て余している感じ。
もともと新しく覚えたことを今までの行動に取り入れるのは苦手なタイプなのよね……。
永久姉とか一会ちゃんならこういうの得意なんだろうけど、私は兄妹の中では一番苦手かもしれない。
刀君はあれはあれで結構器用だし、私は本当に経験から得た物で力押しするタイプだから慣れるまでが大変なのよね。
そういう意味では、的が沢山あるのはいい練習になるわ。
というわけで……。
「慣れるまで頑張る!」
まだまだ増える敵を眼前に右手に本を、左手に銃を構えてひゃっはーするのだった。
……いやぁ、楽しいわこれ。
嬉しくないくっころ。
凶れ!




