同居人会議
皆様よいお年をー
オーベッドさんはこのまま会社の飛行機でアメリカに帰るという事なのでお見送り。
モモ3世がすごく警戒してたけど、まぁ匂いに反応するのは野生を捨てていない証拠ね。
そうして帰ってきた祥子さん達だけど、家に入る前に異臭に気づいて退避してた。
うずめさんは夜通し飲み明かすでしょうから放置。
「というわけで、会議を始めたいと思います」
クリスちゃん含めて公安に避難、シェルターの役割もあるから寝泊りOKな職場でよかったわ。
クリスちゃんもバイト扱いだから問題なくはいれた。
「家の修繕、というより建て直しの方が早いのですがどのくらい時間がかかるか、そしてその間の宿泊先をどうするかを決めたいと思います」
「はい、異臭の原因であるオーベッドさんから好きに使っていいとブラックカード渡されてます」
「せっちゃん、お金の問題じゃないのよ。ともすれば同居人の増大を理由に公安でお金出してもらえるかもしれないけれど問題は時間」
「前に建てた時は結構早くできましたよね」
「最新鋭の技術使ってたからね。けれど今回はそうもいかないのよ……こと日本においては地震や台風の被害もあるからそういった防災の面でちゃんとしてないと法律に引っかかるから」
「なるほど」
防災は大切よね。
伊皿木家は何度か災害で吹っ飛んでるけどその日のうちに建て直してたから気が回らなかったわ。
さて、どうしたものかしら……ん?
「すみません、電話です。伊皿木です」
「あーどうも、化けオン運営防犯機構部の尾田です。そちらに設置していた防犯装置が作動したという事でご連絡をさせていただきました」
「あ、そういえばそっちでもモニターできるんでしたね」
「えぇ、カルソックなどの防犯会社と提携するためにもその辺は抜かりなく。データを見る限りだと家全体に異臭が発生しているという情報がありますが、うちの装置のせいですか?」
「いえ、ちょっとお客さんがきてまして……」
「ほう、お客さんが来ただけでこの数値……なかなか興味深い相手ですね」
「会合は認めませんよ」
なんか直感が告げてるのよね、化けオン運営とフィリップスさんの関係者を合わせちゃいけないって。
今度化けオン運営がやってはいけないことリストに載せておきましょう。
「いけずですなぁ。それはそうとこの臭気では生活どころではないのでは?」
「……今その件で同居人会議をしているところです」
「やはり! ではいかがです? 当社の最新技術の塊のような建築法をお見せするのにちょうどいい機会だと思うのですが」
……胡散臭い。
そしてとても面倒な予感がする。
けれど私の一存でというのもあれなのでスピーカーに切り替える。
「どんな建築法かお聞きしても?」
「それは社外秘ですのではい。実際に目の前でお見せするのが一番かと思いますれば」
「……せっちゃん、相手はもしかして」
祥子さんの訝し気な表情に、私も苦々しく頷く。
全てを察したように祥子さんが頭を抱えながら、長い沈黙を経てこちらを見据えた。
「許可します。ただし外部に情報が漏れないように」
「……その工事、もとい実験でしょうか。受けましょう。ただしことと次第によっては……」
「えぇえぇ、もちろんすべて保証しますとも! むろん工賃などは頂きませんし、家の内装は全て思いのまま! どのようなご注文でも承りますよ!」
「図面はこちらで用意します。防犯防災を重点的に、その他生活用に関しては標準的なものをお願いします」
「かしこまりました、図面お待ちしておりますね!」
ぷつっと運営さんからの電話が切れる。
「勝手に図面用意するとか言っちゃいましたけど、大丈夫でした?」
「むしろナイスよせっちゃん、あの人たちにそんなもの作らせたら隠し通路とか作りかねないから」
「作らないんですか?」
「……クリスちゃん、私達は普通の家に住みたいの。せっちゃんとかはそういうの好きかもしれないけれどね」
なかなかに鋭い指摘、たしかに私は隠し通路とかギミックに胸躍る女だ。
縁ちゃんなんかはめんどくさがるだろうけれど。
……ん? 縁ちゃんが静かだ。
「もちにゃんぬいぐるみ……ふわふわもちにゃんクッション……もっさりもちにゃん枕……全部臭い……くすん」
あ、へこんでるだけか。
あの臭気家全体に染み付いてたからね。
当然家具も全滅、うずめさんがうちから持ってきた呪いの家具シリーズも全部臭いにやられて呪いとかも吹っ飛んでるし、私の蔵書も全滅……稀覯本とかあったんだけどな。
まぁ本当にお高いのは貸金庫に預けてあるからいいんだけど、うちに置いてある奴で一番高いのは……黒箱かしら。
日本に到来したTRPGの最初期の作品、今だと10万くらいするんだっけ、米ドルで。
貸金庫に突っ込んで放置してあるのはコペルニクスの天球の回転について初版本。
たしか2000年代初頭の段階で150万ドルだったわね。
そこから第三次世界大戦経てほとんどが燃え尽きて現存するのは12冊となってるから価値はとんでもないことになってるでしょうけど。
まぁフィリップスさんから貰ったものだから私は1円も出してないんだけどね。
「縁ちゃん、ここに家も一括で買えるカードがあります」
「刹姉……?」
「もちにゃん安眠グッズ、好きなだけ買い込んでいいわよ。それとそうね……縁ちゃんの部屋はVOTを置く一角と家具を設置するスペース、スリッパを脱ぐスペース以外は全部ベッドにしましょう。どれだけ転がっても落ちる事のない堕落部屋よ!」
「刹姉……!」
「野望と欲望の赴くままに部屋を好きなグッズで埋め尽くしなさい!」
「おー!」
よし、縁ちゃんはこれで問題ない。
あのままだと悲しみが怒りに変わってフィリップスさんのところに突撃しかねないからね。
妹のアフターケアも大変だわ。
モモ3世の部屋も用意されます。
もちにゃんはせんとくんさんみたいな猫ゆるキャラ。
仕事を選ばないもちにゃんとして有名でロボットアニメともコラボした。
縁ちゃんはこの持ちにゃんが大好きだが、もちふわボディのぬいぐるみが好きなだけでキャラはそんなに詳しくない。
一会「基礎教養(この子は普通にキャラが大好き)」
辰男「プレゼントにちょうどいい(貢ぐためにめっちゃ詳しい、人気ホストの秘訣)」
刀祢「たまに見かける(お祓いで)」
刹那「食べたら美味しそうな名前(ほとんど知らない)」
縁「いいまくら(キャラは詳しくない)」
羽磨「一会のせいで詳しくなった(一応細かい設定も知ってる)」
永久「よく買う(藁人形の代りに)」




