事前打ち合わせ
正直、面倒この上ないけどお仕事だから仕方なく出勤します。
今日は縁ちゃんと祥子さん、そして私とうずめさんが一緒の車で通勤。
クリスちゃん? ここ3日くらいVOTと食卓を往復するだけの生活、お風呂も入ってない。
今朝はさすがに見かねて一緒に朝風呂入ったけど、若いっていいわねぇ……3日くらいなら臭くない、どころかいい匂いした。
髪の毛もつやつやで、さらさらしっとりと絹のような質感。
お肌もすべすべで……。
「せっちん、今日連れてく人達についてなんだけどさ」
「あ、はい」
「自衛隊と警察の特殊部隊からそれぞれ2人、公安お抱えのスパイを2人の合計6人だよね。これを3人ずつで分ける形でいいかな」
「最初は6人で合同訓練してからの方がいいんじゃないですかね。下地を作ってからの方がいいかと」
「うーん、それなりにできると期待したいんだけど……」
ちらりと祥子さんに視線を送ってみる。
そんな祥子さん、待ってましたと言わんばかりのどや顔で指パッチン。
ポスンって音が響くと同時に後部席にモニターが出てきた。
「さて、今回二人に担当してもらう実習だけど参加者はこの6人! みんな最高峰の能力を持っているわ」
「能力というと、身体的な?」
「それはもちろんのこと、精神的にも屈強よ。対尋問訓練を一か月続けてもぴんぴんしているような連中、端的に言えば化け物ね」
「はー、そんなすごい人いるんですね」
私は3日ご飯抜きって言われたらどんな国家機密でも喋る自信がある。
えーと、今抱えてる国家機密って日本とロシアとアメリカとフランスとイタリア……あぁ、イギリスについてもいくつか持ってたわね。
あと各国共有で所持してる宇宙兵器とか、共同研究している地球外生命体の所在地とか。
ちょっと世間が混乱する程度の情報でしかないけど、それでも機密だからお口チャックしてる。
「んー、正直不安だねぇ。あたしらは平気なんだけど、その人達が死にそうになったら引き上げていい?」
「いいんじゃないですか? これ第一陣であって後続はまだまだいますし、彼らがいなくてもどうにかなりますから」
「ということは、まだ上がいるという事ですか?」
「いるわよ、目の前に三人」
……あぁ、そういう基準。
私達が基準になっているならまぁ大体の人はランクが下方修正されるでしょう。
とくに縁ちゃんとうずめさんの2人はインチキも大概、戦車砲を素手で受け流したり、銃弾をつかみ取る二人だもの。
私はそんな器用なことできないから体で受け止めるしかできない、当たりどころが悪いと血が出るから大変なのよね……服も破けるし。
「で、この六人だけど既に公安で待機してもらっているから二人は到着次第すぐに出発して構わないわ。各自フル装備で出動準備しているから」
「……フル装備って言うのはナイフとか銃ですか?」
「えぇ、スパイ組は拳銃とナイフ、自衛隊組は対戦車砲とライフルと拳銃にナイフとグレネード、警察組はショットガンと拳銃と警棒とさすまた」
「うずめさん、あの山に住んでる生き物に効きますか?」
「効かないでしょそりゃー」
「ですよねー、とりあえず武器は全部おいていってもらうとして封印指定した誰でもビーム撃てる薬でも飲ませて基礎戦闘力上げますか」
「あれも燃費悪いのがちょっとネックだと思うけど?」
「慣れたら調整できますよ? 極細ビームで脳天だけ打ち抜くとか」
「なるほど、垂れ流しにするよりも強いかもね。それに武器がいらないって言うのはいいかも」
「えぇ、ナイフの携行は許可するとして、最終的に手刀で木を切り倒せるくらいにはなってもらいましょう」
正直あの山で生き延びるにはそのくらいしてもらわないと困る。
地元住民ですら銃は脅しにしかならないという事を知っているのか、大きな剣とか火炎放射器ナパーム式とかそういうものを中心に扱っている。
割と実家近辺と変化ない気がするけれど、あっちは霊的にやばくてこっちは物理的にやばいのよね。
ウサギも毛皮が厚くて銃弾通らないだろうし、魚も指くらいなら食いちぎる、食虫植物がどんな進化を遂げたのか知らないけど人も喰おうとする。
そんな魔境に挑んでもらうのだからそれなりの戦闘力は欲しいところだけど……大丈夫かしらね。
少しは自分の実力を理解してきた刹那さん。
でもちょっと強い程度の認識でしかない。




