打ち上げパーティ
はいあっさり終戦、テンショーさんのところは一人残さず蒸発した。
司馬さんのところはNPCは蒸発、プレイヤーはなんかよくわからない空間にいるという事で運営に報告が飛び交っているらしい。
なお運営は「仕様です、そこ地球感覚で言うところの冥王星あたり」と言っているとか。
とはいえ、そこで放置するのはフェアじゃないという事で一度限りの転送を認めるらしい。
あるいは普通に自害すれば戻ってこられるとか。
……いや、化け物って宇宙空間で活動できるのね。
そういえば祥子さんに見せてもらったレポートの中には「人類の遺伝子組み換えによる進化」とか
「真空でもへっちゃら体質に」とかそんなこと書いてあったわね。
流し読みしてたけど、流石あのとち狂った運営さんが考えるシミュレーターだけあるわ。
ゲリさんはひたすら海眺めてたらしい。
振り向いたら人外魔境が広がってるからって理由で怖くて振り向けなかったとかなんとか。
「お疲れ様でしたー!」
てな感じで終戦となったら次にやることは打ち上げでしょう。
敵兵だったプレイヤーも巻き込んで街をあげて盛大な飲み会中。
「いやぁ、3バケ揃うとやべーな」
「なんだ3バケって」
「RFB使いのトッププレイヤーを3人集めた状態のことだ、3人の化け物ってな」
「あー、3馬鹿とか言ったらぶち殺されそうだしな」
「本人たちも割と気に入っているらしいぞ、暴食よりましって理由とブベフッ!」
聞き捨てならない言葉が聞こえたので極細ビームで脳天を貫く。
またつまらぬものを撃ってしまった。
「フィリアよ、此度の戦闘実につまらぬものだった。血沸き肉躍るような戦場を欲しているのだがどうすればよい」
「んー、大公級悪魔とか悪魔王に喧嘩売ればいいんじゃないですか? あとは今回の報酬でお渡しする領地使って多方面に喧嘩売るとか」
「雑魚相手など憂さ晴らしにしかならぬ。悪魔王や大公というのは強者か」
「まぁそれなりに強者ですけど、大公はピンキリです」
「ならば試してみるのも一興」
うーむ、司馬さんは相変わらずのバトルジャンキーね。
お酒片手に次の戦場を夢見てる。
しかもその内容は血で血を洗うような極限の戦場だからねぇ、私はリアルで何度か経験してるからもういいやって感じ。
「常識人で非暴力主義の私としては……むやみに戦争起こすのやめてほしいですけどねぇ」
「どの口が言う」
「面白い冗談が聞こえた気がします。フィリアは鏡って知っていますか? 光の反射で物を映してくれる便利な道具なんですよ」
「フィリアさんさすがにそれはないっすわー」
司馬さん、テンショーさん、ゲリさんの順番に突っ込まれた。
「いやいや、私は平和主義者ですよ」
「……そういうことにしておいてやろう」
「フィリア、一度自分を見つめなおしましょう?」
「フィリアさん、平和主義者は30以上の領土に喧嘩売りません」
……あまりに酷い扱い、ちょっと泣きそう。
泣きそうなのでテンショーさんに仕返しを決行。
「全員ちゅうもーく、これからテンショーさんのワンマンライブです」
「ちょ、ちょっと刹那⁉」
「リアルネームは禁止です、はいこれマイク」
「あ、う、え、えぇっと……」
ふっ、テンショーさんはお祭り好きだけど注目されるのは苦手なのだ。
その容姿と可愛らしい性格からファンクラブができていることを教えた日には一日布団被って出てこなかったほどだ。
でもなんか、うん、こう恋人とかにしたいというイメージはわいてこない。
祥子さんだったら永遠に撫でまわし続けられるのに、それこそはげるまで。
「わ、私は今日はこの辺で!」
あ、テンショーさんログアウトして逃げた。
もうちょっと面白い、もとい可愛らしい逃げ方してほしかったけど……うん、敵が一人減った。
さて、お次は……。
「司馬さん、強欲と暴食の悪魔アイゼンってやつがすごく強いですよ。どこにいるか知らないけど街を片っ端から潰していけばそのうち出てくるんじゃないですかね。そんな司馬さんに飛び地になってる領地あげるので存分に暴れてきてください」
「感謝するぞ!」
はい、司馬さん離脱。
報酬にあげた領地にすっとんでいったからネーミングは済ませておいた。
司馬さんの領地は「空飛ぶ血と薔薇と外道セクシー合唱団」という名前になった。
……あの人治世とかできるのかしら、私も苦手だけど得意なイメージはわかないわね。
「ゲリさん?」
「あ、平和主義者のフィリアさん今日もお美しい! これさっき海で暴れてたイカの姿焼きっす!」
「あらありがとう、ここにソースとかあったら美味しそうよね」
「ソースっすか?」
「えぇ……ルビーのように紅くとろりと芳醇で味わい深い、ドラゴンの血みたいな」
「……あ、尻尾食います? 羽とか身体はちょっと支障が出るんで」
「いただくわ、ついでに血もちょうだい?」
「死なない程度ならいくらでもどうぞ!」
「わーい」
ゲリさんは排除する必要ないわね、いい人だから。
うん、血のソースたっぷりかけたイカもおいしいしゲリさんの尻尾も美味しい。
骨の部分はコリコリと歯ごたえがあるわぁ、イカにしてもくちばしが美味しいし噛んだらあふれ出るイカ墨がいいアクセントになっている。
戦争にも勝てて、美味しいご飯も食べられて、今日はいい日ね!
……その分明日からのお仕事が憂鬱になるわ。
まったく、特務機関……端的に言うなら日本が独自に用意したスパイと、自衛隊の特殊部隊と、警察官の特殊部隊の教育なんて私にできるわけないじゃない。
ということをうずめさんに相談した。
そしたら以前明鏡止水覚えるのに使った山に籠らせればいいということになったので、明日からうずめさんと一緒に山籠もりなのよね。
まーたあの人護衛の任務忘れてるけど、正直クリスちゃんなら平気でしょという感覚が強い。
なによりあの子のVOTは化けオン運営のやりすぎ防犯システムが盛りだくさんな上に、超頑丈に作られた結果核爆弾直撃しても壊れないし中には影響が出ない特殊仕様だからね。
放置してても大丈夫でしょ。
れいによってサタスペとダイスの結果。




