ゲーム内料理
そんなことを考えてからはや数時間、ウサギとか狼を追いかけまわしていたら突然リスポンした。
太陽光のことすっかり忘れてたわ……称号のリキャストってところに残り5時間ってあるからゲーム内時間で1日1時間という事ね。
1日が6時間に設定されているから昼間のうち1/3生身でも行動できるのは大きいわ。
問題があるとすればインベントリ開いて日傘取り出すまでに何度もリスポンしたことくらいかしらね……いやもう本当にひどかったわ。
最初のうちはどこに何のボタンがあるかを覚えながら、蒸発する瞬間にアイコンを選択。
それを繰り返すだけの苦行になっていたもの。
うーん時間を見つけてもう少し軽減できるようにするべきかしら。
とはいっても、これ以上軽減できる称号があるのかはわからないんだけどね。
「でもこれで食材は集まった……簡単なお使いもできたからお金も手に入ったし、料理をしてみましょう」
思い立ったが吉日、既にしおれ始めてしまった草木で作った日傘をさしながら町を散策した。
まず目に入ったのはレストラン。
……断じて食べたいというわけではないんだ。
うん、食べたいけど今はそうじゃないんだ。
厨房を借りられないかと思って立ち寄ったんだけど、そういうサービスはしていないとお断りされてしまった。
ちなみに宿屋も同じ対応だったのでNPCショップを覗いて回る。
そこで見つけたのが【調理キット】なるアイテム。
他にも【錬金キット】とか【鍛冶キット】なんてのもあった。
その辺はあまり興味がないので無視、調理キット3000ルルで購入。
「むふふ……これでご飯が作れるのか」
木箱に詰められたコンロや包丁を眺めながらあれこれと思案する。
うんうん、なんかインスピレーションが湧いてきたぞ。
早速日当たりの悪い路地裏に入って調理開始!
まずマニュアルとオートを選択できるのね……オートだと特定の食材を集めて既存のレシピから作成するものを選択できると。
なるほど、料理が苦手な人や錬金術や鍛冶なんかできるわけないだろという突っ込みに対する答えがこれなのね。
他のキットにもマニュアルがあるのかしら……だとしたらマニュアルで作れる人はすごいわね。
っと、それはさておき普通にマニュアルで開始。
まずはとってきたウサギのお肉だけどどうしましょう……インベントリから取り出してみた感じ血抜きはされているように見える。
さっき一つつまみ食いしてみたけど生臭いとかそういう感じはなかったわね。
初めてペナルティエリアで食べた狼の肉が血なまぐさかったのは単純にネクロマンサーの能力で死体がアイテム化していなかったからでしょう。
そう思いながら摘んできた薬草とキットの中にあった胡椒を振りかけてよく揉む。
それからしばらく寝かせて、フライパンの準備。
肉に塩をもみこんでちょっと置いてからフライパンに投入!
あまり長い事塩をつけておくと肉汁が逃げてしまうって聞いたからね、さっと焼いてみました。
ちなみにウサギ肉は他の肉よりも臭みが少なめだから香辛料とかを使わないでも食べられる。
中国なんかだと一口サイズに切って軽く味付けして焼いたウサギ肉をゴロゴロと乗せた大皿にひっくり返したコップをのっけて提供することもある。
このコップの中にはビールが入っていて、時間がたつにつれてコップから流れ出てきたビールが味を変えてくれるという寸法なのだけれど、取材に行ったときこの手のコースを一人で全部食べて驚かれたことがあったわ。
美味しかったからいいんだけれど、帰ってからダイエット大変だったなぁ……。
と、それはともかくとして今は料理に集中ね。
せっかくのウサギ肉、最初はステーキで頂くつもりでいる。
まず強火で表面を焼いて、側面も焦げ目がつくくらいに火を通す。
こうすることでうまみを閉じ込めることができるのだ。
そして最後に弱火でじっくりと火を通していくと……完成!
【ウサギ肉の薬草ステーキ:☆5】と表示されている。
これはなかなかの評価なのかしら、星が最大いくつなのかわからないけれど食べてみればはっきりするでしょう。
というか幕の内弁当はC+評価だったのに何で☆評価なのかしら。
「というわけで、いただきます!」
キットの中には食器類が無かったので葉っぱのお皿と包丁で切って手づかみで野性味があってこれもよし。
一口食べてみると少し塩気が強い感じがしたけれど薬草の香りが鼻に抜けていく。
ステーキの食感、だけど干物を食べているような感覚ね……☆5というのはあまりいい評価ではないのかもしれないわね。
胡椒の風味も飛んでしまっているし……でもおいしいわ。
これたぶんパンにはさんだら絶品よね。
……パンはないけど幕の内弁当にご飯がついているはず、そう思ってインベントリから取り出したお弁当は☆10と表示された。
なるほど、倍の出来栄えという事ね。
これは期待できるわ……そう思ってまず鮭をパクリ。
ホロホロとほどけていくような食感の鮭がわずかな塩味をにじませる……にくい仕事してるわね!
これだけでもご飯3杯余裕で行けるわ。
だけど今はそのご飯を食べるべきじゃないの。
こうして……ステーキをのっけて丼に!
先ほどまでの強すぎた塩味が逆にいい具合になっている。
葉っぱのお皿にたまった肉汁もかけて口に放り込むともうたまらない!
幕の内弁当のおかずを箸休めに、濃いステーキ丼を食べ終えた私はすっかり満足していた。
が、ポーンという音に余韻を邪魔される。
【称号:料理人を獲得しました。マニュアルで作成したアイテムをオートで作成できます。その際完成度はA~Eとなります。この称号はクラフトの説明であり称号の有無にかかわらず全プレイヤーが備えている効果です】
【称号:調理師を獲得しました。完成した料理に手を加えることで完成度を上げることができますが、失敗すると完成度が下がります。制作時のマニュアル、オート問わずに評価は☆単位となります。この称号はクラフトの説明であり称号の有無にかかわらず全プレイヤーが備えている効果です】
なるほど、つまるところみんなできるけれど実際に体験してみないと判明しないと言う類の物ね。
それを称号という形で教えてくれるのは便利だけれど、最初から教えてほしいなというところがあるわ。
☆評価も教えてくれたわね、マニュアルで作るとこういう形で評価されて、オートだとA~Eとなると。
マニュアル完成度の最大がいくつなのかを知りたいところなんだけど……。
まぁいいか、それよりじゃんじゃん試してみよう。
さっき買ってきた卵を使って親子丼風にしてみるのもいいし、塩釜焼も試したい!
それから淡白なお肉だからこそステーキはもっとおいしくできそうだし、中華にも挑戦したいなぁ。
うん、やることたくさんだ!
がんばるぞ!
それからしばらくして色々作っては食べてを繰り返してからログアウトしてブログを更新した。
塩釜焼はハンマーが無かったけど普通に殴ったら塩釜が割れたからよしとして、やっぱり淡白な分塩味が効きすぎてしまうという問題がわかったから二回目のステーキはもみこむ塩を減らしてみたら☆7になった。
とてもおいしかったし、☆10とかが最大値なのかな。
それにしては☆5の味は微妙だからもう少し先もあるのかもしれない。
こういうのも手探りでやっていくしかないのよね。
掲示板とか見たらいろいろ情報載っているかもしれないけれど好みじゃないからパス。
そのうちある程度の情報が出そろって、こっちも食材調達とかに困ったら覗いてみましょう。
それにしても……なんかリアルでもお肉食べたいわね。
今晩は鶏ささみのサラダと、豚バラ肉で焼き肉にしましょう。
ニンニクも効かせてがっつりと行きたいわ。
☆評価方法と幕の内弁当のC+評価についての指摘がありました。
普通に私がミスをしていただけです。
が、新たに設定が生えたので採用することにしました。
ご迷惑おかけしました。




