宣戦布告
ひとまず東に向かうことにした、まさしくゴーイーストね!
ただ問題があるとすれば……。
「貴様! あのけったいな名前の街の領主か! 何用だ!」
3日かかると言われたのでちょっと飛ばしてきたら1時間半で到着しちゃったことかしら。
音速で飛んで、街が見えたと思ったら領主邸に突っ込んでた。
うん、やっぱり音速移動は危険ね、急に止まれないから。
「あー、フィリアといいます。侵略しに来ました」
「ふざけたことを!」
なんか曲がった剣を持ってる悪魔が切りかかってくる。
えーとなんだっけ、あれもガウタマさん辺りから聞いたんだけど……あ、シャムシール?
なんかそういう名前だったはず、扱いには慣れが必要でしょうけどよく普通に使えるわね。
「てい」
いつも通り小手で剣をぶん殴る、今回は殺す事が目的じゃないから手加減した。
地面を転がっていく剣と、右手を抑えうずくまる悪魔……うーん、歯応えないなぁ。
「貴様……!」
「雑魚は下がってなさい。私はこの街を侵略しているの、精鋭全員で挑んでくるべきでしょう? 戦争なんだから」
「戦争だと……このファルシオンの街と貴様の西洋はだかのくそったれゴスロリイン・ザ・ダークとやらとか!」
「あー、うん、自分で決めたけど酷い名前よね……略してゴスロリでいいわ。でもそれは間違い、戦争をするのはあなたたちの街……ファルシオンだっけ? そこと私一人」
「ふざけたことを……!」
「でも私に勝てたらゴスロリ無傷で手に入れられるわよ?」
……あれ? この言い方ってなんか目の前の筋骨隆々な悪魔がゴスロリ服欲しがってるように聞こえるわね。
うーん、想像しちゃった。
あまり気分のいい映像ではなかったわ。
だからといってはだかとかくそったれと略すのもなぁ……イン・ザ・ダークも長ったらしいし……。
「さぁさぁ、考えている時間は皆無。私は侵略者であなたたちは防衛、早く決めないと……」
右手を街に向ける。
領主邸は大体街のど真ん中に設置されているからどこ向いても街並みなんだけど、一番キラキラしている辺り。
次に手のひらの筋肉を動かして皮膚を軽く裂く、リアルでもできるけど突然けがをしたように見せるだけの特技。
あとは手のひらから滴る血液を使いビーム!
「次はどこがいいかしらね」
燃え盛る街並み、逃げ惑う人々、せっかくなので高笑いする私、完全に魔王。
……いや、これ意外と楽しいのよ。
悪役ロールプレイ、聖女VS魔王の時からこっそりはまってたりする。
「貴様!」
「はい減点、叫ぶ暇があったら攻撃なり指示なりすることはあるでしょ」
反対方向にもビーム。
「くっ……戦闘配置! あの女をなんとしてでも殺せ!」
ふむ、ようやくその気になってくれたかしら。
お、システム側も反応してくれた。
『これより戦争を開始します。西洋はだかのくそったれゴスロリイン・ザ・ダーク対ファルシオンの戦争がはじまります。各プレイヤーの皆さんはこぞって参加ください』
あ、これプレイヤーも参加できるのか。
だとすると今後突発的に発生した戦争に兵士として乗り込んで、両方を疲弊させたところで漁夫の利を狙うのもアリね。
ケリーにはその辺の情報収集と誘導をさせてみようかしら……。
まぁ領民に啖呵切っちゃったから、私も領主らしい仕事をして早く大陸戻りたいし。
少なくとも私がいなくても向こう1000年続く黄金郷くらいには仕立てたいもの。
なんなら西部全域を支配するのも面白そう……今でこそ暴食領とか言われているこの地区をフィリア領に名前を変えてもいいわね。
……その時、アイゼンや悪魔王がどんな顔するか楽しみだわ。
なおどうあってもプレイヤーからは「暴食領」と呼ばれる模様。




