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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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飯テロ

 外に出てみると立ち並んでいる出店。

 ……ふむ、匂い的に左手前から順番にクレープ、お好み焼き、タコ焼き、おにぎりに焼き鳥、あとこれはお味噌汁ね、ミリーちゃん味かしら。

 右側はもうちょっとがっつりした丼とかそういう……ん? この香りは……。


「なんか、しゅごいにおいひまへん?」


「……キビヤックとシュールストレミングの香り、それにこの淡くも鮮烈な香りはセンブリ茶……まさか!」


「化けオン特製化け物茶漬けいかがですかー」


 やはりだ!

 以前、化けオン始めたばかりの頃祥子さんに頼まれて出向いたときに出してもらったお茶漬け!

 あれを出店で売るとは……さては化けオン運営正気ではないな。

 絶対大赤字覚悟の料理じゃない!

 原価だけで1杯1万円余裕で超えるわよ!


「うぷっ……し、死ぬ……」


「おごぁ……鼻が……」


「食欲が死ぬ……」


「おろろろろろろ」


 あー、この匂いは慣れてないときつい物があるわよね。

 うん、私も初めて食べた時は似たような反応した。

 でも食べてみると美味しいのよねぇ……慣れると匂いも癖になるから。


「せ、刹那さん……」


「クリスちゃん! 行くわよ!」


「い、逝きます……おろろろろろろろろろ」


「く、クリスちゃーん!」


 植え込みに向かって盛大に嘔吐するクリスちゃんを抱きかかえ揺さぶる。

 あぁ、だめだ……今のクリスちゃんは戦地の撮影で迫撃砲直撃した人と同じ目をしている。

 くっ……こんなところでまた戦友を失うのか私は……!

 あ、ちなみに直撃した時私真横にいたけど鳩が豆鉄砲を食ったようなというのはああいうのを指すのよね。

 うん、本当にびっくりした。


「クリスちゃんの仇はとるわ……」


 ぐったりしているクリスちゃんをそっと地面に横たえ、隣に水の入ったボトルを置く。

 そしてコートから財布と携帯端末だけを取り出してクリスちゃんにかけてから、私は運営出店に突撃した。


「化け物茶漬け、あるだけください」


「はい、まいどありー」


 私の注文にひるむことなくガスマスク越しに笑顔で返してくる。

 この人、プロだ……。


「おまちどう!」


 どんっと置かれたのは業務用炊飯器の内鍋、中には並々に注がれたセンブリ茶とシュールストレミング、そしてキビヤック。

 くぅ、この強烈な臭いはお腹が減るわ!

 しかも憎い事にあれから進化している、刻み海苔をまぶし、更にいりごまとおろし生姜、味に香りに見た目にとこだわり尽くした一品になっている!


「いただきます!」


 箸をつけ、口に運んだ瞬間何とも言えないマリアージュが発生した。

 シュールストレミングの持つ香りと、キビヤックの独特な味わい、それらがセンブリ茶の強烈な苦みによって引き立てられたところに微かに鼻腔をくすぐる胡麻と海苔と生姜の香り……。

 以前食べたそれとは比べ物にならない美味しさ……材料にもぬかりなし、どれも最高級の一品だわ。

 これお値段換算だと原価100万行くわよ……。


「お会計20万円になります」


「カードで」


「まいどー」


 そのまま無心で食べ進める事30秒、大変美味しくいただきました。

 ご飯の一粒、ゴマのひとかけらも残さず食べた。

 うーん、美味しかったわ。

 でもまぁこれで化けオン運営による被害はいったん収まるでしょ。


「化け物茶漬け売り切れでーす」


 出店の人がそう声にすると同時に周囲から歓声が上がる。

 主に他の出店の人たち、歓喜して涙を流している人もいる。


「というわけでリアル吸血鬼ドリンク! すっぽんとハブの生血をブレンドしたジュース販売開始です!」


 今度は落胆の声が上がった。

 山と積まれた荷物を見るに他にも何か隠し玉があるかなと思っていたが……まさか中からハブとすっぽんが出てくるとは……。

 よく見たら箱が揺れたり動いたりしてるわね。

 うむ、これはもうやるしかないわ。


「ねぇ、そのハブをかば焼きに、すっぽんを茹でて食べさせてもらえる?」


「お金さえ貰えるならよろこんでー」


「OK、ドリンクもろとも言い値で買おうじゃない」


「じゃあ全部まとめて50万で売りますねー」


「買った! カードで!」


「まいどありー」


 そこから、私と出店の勝負が始まった。

 生血ドリンクに続いて運営が用意していたのはとかげの姿焼きドラゴン風というめちゃくちゃ辛い料理だった。

 でもまぁ、とーてつさんと一緒に食べたジョロキア火鍋よりは軽い。

 あれは汁がとんでもないからさだったのよね……。

 あとから火鍋の汁は飲むものじゃないって聞いてびっくりした、あんな美味しい物残すんだってね。

 次に出てきたのは芋虫の姿揚げ、外はカリッと中はクリーミーで美味しい一品。


 周囲からは悲鳴が上がってたけど、まぁ発泡スチロール容器の中いっぱいの芋虫見たら普通はそんな反応よね。

 アマゾンの奥地で芋虫踊り食いしてきたことあるから私は平気だけど。

 他にもいろいろ珍しい料理が食べられたわ……おかげで200万円くらい食べちゃった。

 ……何か忘れてるような気がするけど、大満足ね!


次回「刹那さんやっぱり人間じゃない」よろしくお願いします。

……刹那さんのせいで本当に胃腸おかしいのと、喘息になった作者でした。

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― 新着の感想 ―
さすがに今回のは国も黙ってないやろ……
[一言] 出禁くらったな運営……
[一言] 芋虫は食べてみたい一品だね クリーミーとか言われるけど味が気になるんだよね 考えるだけで涎が
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