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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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プレゼント

「えー、参考にならないデータがたくさん集まりましたが……とりあえずドーピング薬やその他必要なデータは一通りそろいました。最後に一般的に不可能なことをいくつか観測させていただきたいのですが」


「いいですけど、私その辺の感覚ズレてるらしいので祥子さん監督でいいですか? たぶん一番私を理解してて、なおかつ客観的な視点で見てくれるので」


 グロッキーというか、なんかもう体力使い果たして船漕ぎ始めてしまった祥子さんをちらりと見る。

 さっきからコーヒーがぶ飲みしてどうにか意識保ってるけど、この人体力の限界がくるとおねむになっちゃうのよね。

 うつらうつらしてるけど話は聞こえてるはず。


「……紙とペン、ください」


「はい、どうぞ。それとコーヒーおかわり淹れてきますね」


「ありが、とう、ござい……まひゅ」


 あー、うん。

 なんかもういっぱいいっぱいね。

 文字を書いてるつもりなんでしょうけど、いつものびしっとしたPCで打ち込んだような字じゃなくてミミズがいっぱい。


「はい、祥子さん。15分仮眠取りましょうね。今のままだと何もできないので」


 頭を撫でてからゆっくりと横たえさせて膝枕。

 うむうむ、祥子さんの髪はふわふわでさらさらで気持ちいいなぁ。


「っと、そうですね。一度休憩をはさみましょうか。だいぶお疲れの様子だ」


「えぇ、その間にちょっとこちらは話を進めましょうか」


「では……端的にお聞きしますが、今もゲーム内でやったアレ、できますか?」


「神羅万象と一体化することですか? こんな感じでよければ」


 ふっと明鏡止水の境地にはいる。

 ……しまったわね、うっかり使った結果ここがどこなのか、おおよその見当ついちゃった、場所秘匿されてたのに。

 まぁいいか、周囲との一体化の弊害よね。

 あまり周囲に溶け込みすぎると私の存在を認識しにくくなるけど、最初は全力で見せるのがいいかなと思うのでやってみる。


「おぉ、目の前にいるはずなのにどこにいるかわからない……これはすごい技ですね」


「技と言いますか、どういう区分なんでしょうねこれ」


「いやはや、声は聞こえる、姿も見える、なのに認識することができない。いや、できてはいるのにそこに存在しないような希薄さ……どういう事なんでしょう」


「探しているときほど、探し物が見つからないのと同じ原理じゃないですかね。ほら、財布とかスマホどこに置いたっけな、目の前にあるのに気づけない、そんなの」


「ほうほう、なるほど……ということは……お、やはり見えました」


 お? 今の一瞬で何か掴んだのかしら。

 さっきまで私を探してさまよっていた視線が、途端に私をとらえた。


「なにをしたんですか?」


「いえね、こういう時は無理に探そうとせずに脳みその無意識領域を広げるといいのですよ。無心になって探す、我々研究者としては想像の外側こそが戦場ですからね」


 ほほう、埒外を探すために既存の考えはすべて捨てる。

 それをこの場で即座に応用してとは……さてはこの人もうずめさん達みたいな常識外れだな?


「まぁ私もこれ使いこなせてるわけじゃないので、曰くその気になれば神羅万象……文字通り世界と一つになって天災を起こすも隕石を地球にぶつけるも自由自在だとか」


 さすがにそこまではできないわ。

 あー、でも目の前の植物の成長促進くらいならできるかな。

 うずめさんとの修行で空腹の中、季節外れのリンゴを実らせたりしたし。


「ほうほう……となるとこれはあれですな。どうあがいても既存の物、出来合い品では処理は追い付かない」


「とすると?」


「やはり最新鋭の新型量子コンピューターを自作します。そうですね……予算としてはこのくらいで」


 祥子さんによるミミズの落書きが並んでいる紙にそこそこのお値段が書かれる。

 うん、私の一存で決められる事じゃないんだけど……。


「安すぎませんか? 桁が二つほど違うと思うんですけど」


「この程度なら以前から考案していたものを実現するだけです」


「言うは易しといいますが、それ大丈夫なんですか?」


「理論値だけで言えば既存の物の数千倍、最低でも数十倍は保証できます。またエネルギーには宇宙由来のブラックホール波動を利用しエコの極み、演算そのものはダークマターをはじめとした不確定存在物質と呼ばれるものを利用するので文字通り世界、宇宙そのものを使っての演算です。その気になればもっと精度をあげる事も出来ますが……さすがに暴走して宇宙もろとも消滅というのはあまり面白い結末ではないでしょう」


「そんな事故が起こりうるんですか……」


「事故と言いますか、伊皿木さんのやっている神羅万象との一体化を機械的に行うものですね。だから一歩間違えると世界そのものが完全に一つの存在となり、世界が小さな箱に集約されて一も全もない世界になるでしょう。プランはあったのですが、そこまでの演算能力が必要な場面が無かったので先送りにしてました。ですが! この機会にこそこのプランを実行せずにしていつするのでしょうか! 今です! 今しかないのです!」


「は、はぁ……」


「と、いう事ですが作ってもよろしいですか?」


「予算に関しては上に話を通さなければいけませんからなんとも……というか予算おりてない段階で作れるんですか?」


「基礎部分とかその辺のパーツは全部できてますよ。組み上げるだけで終わりです」


「じゃあ予算は……」


「表向きは研究費です。横領して別の研究に当てます」


「そこは言葉を濁してほしかったなぁ……」


「ちなみに試作品がこれです」


「いやあるんですね、もう組み上がっていたんですね」


 目の前に置かれたのはスマホらしき端末、ちょっとごついけど……これが最新鋭の最強量子コンピューター?

 どうもそうは見えないわ。


「さっき祭が手慰みに組み上げました。シャトルランの最中に席を外していたのはそのためです」


「あぁ、ドーピング切れてぶっ倒れた後ですね」


「えぇ、筋肉痛が酷いといっていましたが検査の結果それ以外の異常は見られなかったので業務に戻りました。いやはや……さすが我らの一員です」


「それ、悪役の台詞ですね」


「悪役大いに結構! 我々が求めるは未知の科学! お茶の間の便利グッズから世界の消滅アイテムまで! なんでも研究しますよ!」


「わー、はためいわく」


「というわけでそれはサンプル品として差し上げます。研究費用が下りれば量産も可能ですよ。むろんあえて性能を落とした物もね」


 性能を落とすね……まぁ2000年代初頭の旧型ゲームでもミサイルの誘導装置に使えるという話があったはず。

 対してこれはそれから相当な年月が過ぎた現代においてもオーパーツと言って差し支えのない代物。

 技術だけで言っても数百年先のものよね。

 パラダイムシフトというのかしら、これ一台でどれほど世界が変貌するかわからない……。

 だからこそのダウングレード、一般人が扱っても危険がないレベルまで落とすということね。


「ちなみに、これがスマホの形をしている理由は?」


「地下の巨大兵器に組み込むためです。外部演算装置として取り付けなければ動かない、いわば鍵ですね。それはマスターキーとしての能力もあるので乗りたければ一声かけてください」


「あ、遠慮しておきます」


 クリスちゃんは喜んで乗りそうだけど、私はそっちの浪漫はもってないから。


「ちなみに既存のOSは全てインストールされているので、それ一台で何でもできますよ。非合法なアプリも作って入れておいたので、古いゲームとかも遊べますし、なんならハッキングもタップ一つで」


「やりません。私は合法的に生きていますので」


「そうですか。とりあえず化けオン用の方は別途用意しつつ、そちらはいま用意できる最新鋭の物にしておきます。あとは上に相談する時に必要なサンプルも用意しますので持ち帰ってください」


「これは?」


「個人的なプレゼントと思っていただければ」


「はぁ……まぁプレゼントだとしても上が提出求めてきたら渡しますよ」


「構いませんよ。こちらの本気を知っていただければいいので」


 ……なんか、有能な働き者だけど危険な人達ね。

 報告書にはその辺の注意を細かく書いておかないと。


可愛い祥子さんを書いていると落ち着く現象に名前を付けたい。

刹那さんのパワーアップを書いていると胃がキリキリしてくる現象にも。

運営の暴走はなんか頭痛くなってくる不思議。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まあ常識人だしなー 可愛いよね
[一言] 祥子(小康)状態。完治はしておりませんので悪しからず。 ヘル◯ングに親戚居ないか?この人…
[一言] まんまだけど祥子さんのがK(可愛い)S(祥子さんを書いていると)O(落ち着く)現象でKSO現象、刹那さんのがS(刹那さんの)P(パワーアップを書いていると)I(胃がキリキリしてくる)現象でS…
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