表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/618

ログアウトして現実

 それから何事もなく薬草採取を終えてクエスト報告してルルをもらった。

 相変わらず採取の時に周辺の植物から罵られたけど、もはや気にする必要なし。

 人間性を犬に食わせるのがこのゲームのコンセプトなんだから罵倒で傷ついてもねぇ……。

 そもそもリアル職業のジャーナリストが世間では風当たりが強い。

 発言力の高さを持っているくせに、自分の発言にどれだけの重みがあるのかを理解していない人が多いから。

 そういう芸の人もいるからまた面倒くさいわ。

 しかも私の場合フリーランスでやってるからぱっと見は後ろ盾無し、ブログやらなんやらも食事一辺倒で珍しい食材とかあれば飛んで行く。

 犬だろうが猫だろうがクジラだろうがキリンだろうが、食べられるなら何でも食べに行く。

 だから動物愛護団体とかからはすっごい勢いでクレームが届く。


 こっちはちゃんとした手続きを踏んだうえで、正規の料金を支払っているのにだ。

 あまりに悪質ならリアル通報もしたり、訴訟を起こすこともあるけれど実際のところ一見すれば後ろ盾がないように見えるだけで、実際は食道楽の人とかがスポンサーになってくれている。

 そういう人たちを通じてしっかりと説明しているし、証拠だってある。

 決して後ろめたい物はない。

 ……さて、そろそろ現実を見るか。


「マグカップ、買い換えないとね」


 粉々になったマグカップを見つめる。

 うーむ、これは掃除も一苦労。

 シンクにも傷がついてしまったけどそれはいいとして、朝食の残ったパンが冷めてしまっている。

 これだけじゃ足りないしもう2枚くらい追加してピザトーストでも作ろうかしら。

 作り置きのトマトソースとチーズとサラミでできるお手軽レシピだけどね。

 グルメリポーターがいつもうまいもの食べてると思うなよ? 家じゃ面倒だから手抜き料理ばかりじゃ!


「つっ」


 マグカップを片付けていると指を切ってしまった。

 うーん、注意力が散漫。

 英雄さんとの戦闘で集中力使い切ったかしら。

 そんなことを思いながら血をにじませる指をパクリ。

 ……普通に血ね、美味しいとかおいしくないとか以前の問題。

 どうせならすっぽんとか蛇の生血の方がいいわね。

 でも化けオンの味覚エンジンはすごいものがあるわ。

 味覚では血だと認識しているのに美味しいと思い込ませる、実のところ脳に直接データ送れるならそこまで難しい技術じゃないんだけど、下手なメーカーがやると味覚からして別の何かという感じになる。


 例えば以前似たようなゲームをしていたけど、血を飲んだらみそ汁の味がした。

 そのあとむやみやたらに血を吸いまくったら運営から怒られたっけ、NPCはあなたのご飯じゃありませんって。

 結局そのままNPCの血を吸いまくった都市で吸血鬼化する人が多発して崩壊、運営が考えていたイベントが制作中にぶっ壊れてマジ泣きされて、最終的にプレイヤーはNPCに攻撃できないようになった。

 いやぁ、懐かしいわ。

 血液みそ汁疑惑事件。

 でも化けオンは味は血なのに、一切の誤情報を与えず美味しいと思わせ続けてきたからびっくりよね。

 しかもコクとかキレを他の何かにすり替えるんじゃなくて、血の味をそのままにうまみを高めたって感じだったから。


 多分味覚エンジンのためだけに仮想遺伝子をいじくってると思う。

 本来なら医療とか農畜産で使われる分野で、精子の動きが悪い男性とか無精子症の人が良く利用する方法。

 またはがん治療なんかに用いられる仮想遺伝子シミュレーターをこうしてゲームに使ってくるというのは盲点ね。

 ちなみに農畜産方面だとワインのような風味の血を持つすっぽんの研究が進んでたりする。

 惜しむらくは悪魔の味がわからなかったこと、もしかしたら噛みつきながらドレインしたら味がわかったのかもしれないわね。

 後で適当なウサギ相手に試してみましょ。

 今の私が使える攻撃手段、ドレインしかないから。


 そりゃ首とか心臓を狙えば倒すのは簡単だけど、デスペナで経験値が得られない今わざわざノンアクティブモンスター、つまりこっちから攻撃仕掛けなきゃ襲ってこない相手の急所狙いなんてリスクしかないわ。

 だったら攻撃としてみなされない撫でる程度の行為からドレインぶっぱの方がよっぽど安全で確実だもの。


「あ、ピザトーストできた」


 オーブンがチンッという音を立てて完成を知らせてくれる。

 こちらもなんだかんだ考えながらマグカップの散らばったシンクの掃除も終わったし、おひるごはんにしよう。

 それからは……デスペナあるし、また掲示板周り面倒なことになってそうだからブログサイトの更新かな。


「ん、おいし」


 考え事をしながらかじりついたピザトーストはとてもおいしかった。

 自画自賛になるけど、作り置きのトマトソースがいい塩梅だわ。


「ここにタバスコを……んー! もう何枚でも食べられちゃうわこれ!」


 ……いやね、本当美味しいから仕方ないよね。

 それと普段カメラ回してるからついつい喋っちゃう、よくない癖だとは思うんだけどねぇ。

 ま、ご飯をおいしいと言って嫌がる人は少ないからいいでしょ。

本日2度目の更新です。

この後適当な頃合いに掲示板回を更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] シンクに傷つけているけれど、持ち家なら許容範囲だけど賃貸ならアウトだと思う。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ