表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/618

文明のありがたみ

 久しぶりの我が家、あぁ懐かしきかな人類文明。

 些細なことに感動しながら玄関をくぐるとそこは異界だった。


「あ、刹那さんおかえりなさーい」


「クリスちゃん、一人で大丈夫だった……わけじゃないみたいね」


 床一面に広がるゴミの山、正直この後掃除しなければいけないという現実を直視したくない。


「なんか雰囲気変わりました?」


「私は悟りを開いたのよ……」


 煩悩は捨てた、もはや私は神羅万象と一体化したのだ。

 今なら何日でも明鏡止水の境地を維持できる。


「すごいですね、お祝いにご飯食べます?」


「たべるー!」


 まぁね、煩悩捨てても人間食べなきゃ生きていけないから食べるものは食べる!

 それに長らく粗食だったから人工調味料をふんだんに使った身体に悪い物が食べたいわ。


「じゃあチャーハンでも作りますね。あとは……付け合わせは中華スープでいいか」


「餃子もお願い! あとラーメンも!」


「はいはい、すぐに用意しますね」


 クリスちゃんがご飯を作ってくれている間、私とうずめさんはゴミを片付ける。


「そういえばうずめさんと出かけちゃってたけど襲撃とか無かった?」


「ありませんでしたよ。平穏すぎて身体がなまっちゃいます」


「平和が一番よ。戦いなんて虚しいだけだわ……」


「うずめさん、刹那さんが不気味です」


「反動が出てるだけだから数日俗世にいれば治るよ。それよりせっちん、BGM代わりに映画流していい?」


「どぞー」


 ごみを分別しながらうずめさんがテレビを操作するのを横目に、これは拭き掃除も必要かなと覚悟を決める。

 まさか地獄の特訓から帰ってすぐにやることが掃除とは……。

 とはいえ、これも日常っぽくていいわね。

 あの山の非常識さと言ったら……カブトムシやクワガタがとんでもなく強いのはまだいいわ。


 でもカナブンの突撃で頭蓋骨にひびが入るとは思わなかった……。

 なぜか秋終盤の今も蝉が生き残っていて、その鳴き声は鼓膜を破壊し三半規管を狂わせに来る。

 尋常ならざる人外魔境、よくぞ生き残れたわね私……。

 動物とか魚よりも虫が怖かったわ。

 魚は魚でなぜか巨大化して、私を丸呑みにできそうな鯉がいたりしてびっくりした。

 生態系のバグって怖いわね。


「そういえば祥子さん達は?」


「刹那さん達が出かけた日から公安に泊まり込みです。通勤時も狙われる可能性があるとわかったから安全のためと、ごう……尋問に忙しいみたいで」


「あー、まぁそうかもしれないわね」


 祥子さんを囮に使う人がいそうだけど、それは縁ちゃんが止めたでしょうね。

 善意とかそういうのじゃなくて仕事が増えて面倒だからという理由で。


「クリスちゃんはこの数日何してたの?」


「映画見て、アニメ見て、漫画読んで、ゲームして、まぁいつも通りです」


「学校は?」


「授業は聞いてましたよ。試験もありましたけど、そっちは普通に満点取って進級は問題ないです」


「そう、ならいいわ。うちに来てさぼってたから留年したってなったらフィリップスさんに怒られちゃう」


「はっはっはっ、いざとなったらお父さんが札束ビンタで解決しますよ」


 それでいいのか教育機関、といいたいけど昨今の学校はどこも予算不足らしいからね。

 VOTの普及のせいで誰でも好きな学校で好きなように授業が受けられるようになった、定員とかが無くなっていくつもの学校が潰れて、そしてごく一部の有名学校を残してほとんどが廃校になったからね。

 そう言った学校から備品を買い取ったりしてるらしいけど、部活動なんかがある学校は部費を捻出するのも四苦八苦してるらしい。

 授業用VOTの導入にはお金がかかるし、教授を雇うにしても費用が発生する。

 他にも色々あるらしいけれど、昔と比べると入学に必要な学力は低下していると言える。

 それに伴い成績順でクラスをわけているみたいだけど、それがまた資金難を悪化させているとかなんとか。

 人手が増えれば道具も増える、道具が増えれば設備も増える、設備が増えれば出費も増えるという理由。

 まぁそれでも成り立っているのはこのご時世になって逆に裏口入学が増えたことと、ほとんどの学校が国立となったからかしらね。

 国立化した事で不明金の収支は全て寄付金という扱いになって、国も黙認しているところがあるから。

 ま、世の不条理というやつかしらね。


 お金があるから潤沢な教育が受けられる、お金がなければ実力主義に走る、それだけの話。

 裏口入学したところで実力が伴わなければ下級クラスに追いやられるのは周知の事実だから。

 最後に物を言うのは偏差値と付加価値だからね、そこをどうにかするには上位クラスの成績が全てとなるし。


「さて、できましたよ。特製チャーハン、ニラとニンニクたっぷりの肉屋餃子、麺固めアブラニンニクヤサイマシマシラーメンに人工調味料の塊中華スープです」


「わーい! こっちも片付けはあらかた済んだからみんなで食べましょ!」


「はい、じゃあこれ運んでください」


 手渡されたのは大皿に山盛りになったチャーハン。

 うずめさんは寸胴鍋いっぱいのスープを抱えて、クリスちゃんは山盛りの餃子を持っている。

 ラーメンは各自で運ぶことになった。


「では……いただきます!」


 パンっと合掌、そして自分の分を取りわけてチャーハンから。

 ……あぁ、このパラパラのご飯。

 そしてシャキシャキとした食感を残すネギにジュワッとお肉からあふれ出る肉汁、卵はふわふわで噛めば噛むほどわずかに含まれる出汁の香りがチャーハンの味を支える醤油と相まって素晴らしいハーモニーを奏でている……。

 餃子はニンニクとニラの香りが強いが、それに負けず劣らずお肉の持つポテンシャルが支えとなり、皮で封をされたことで一口で食べると口内で香りと味の爆発が広がる……。

 ラーメンはシコシコとした麺の歯応えはもちろん、のど越しに至るまでがすばらしい。

 脂とニンニクの調和、そして野菜のうまみが互いを引き立て合っている。

 なによりこのチャーシューがたまらない、肉厚なのにトロトロ、食べれば食べるほどお腹が減っていく……。

 そしてスープはこれでもかとふんだんに使われた人工調味料特有のピリリとした感覚がたまらない!

 食欲を促進させてくれる!


「はぁ……幸せ」


 久しぶりに文明という素晴らしさを実感したわ。


なおこの後食材喰い尽くして買出しに行くことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
鬼の系譜で仙人修行ってそれもう大嶽丸では?
[一言] これは……おおブッダ、まさかスシ・トーチャリング!? 飯テロは卑怯だーっ!!グワーッ!!!
[一言]  森羅万象よりも勝る食欲とは如何に。  そのうちに世界丸ごと牧場とかに改装すんでないの?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ