護衛
その日の仕事を終えて帰宅、明日はお休みを貰ったから今日はこの後自由時間だ!
とはいえブログとか更新するために久しぶりにインする必要があるんだけどね。
「というわけで、私は治験とかで帰れない日があるかもしれないの。祥子さんはできるだけ帰るようにするらしいけど、クリスちゃん1人の日もあるかもしれないから気を付けてね」
「はーい。といっても気を付けるべきは不審者の方ですよね」
「それはそうだけど、クリスちゃんがうっかり人殺しになるのは見たくないわ」
「そういう事なら半殺しで済ませておきますね」
うん、わかってないわね。
祥子さんに視線を向けると小さく頷いてくれた。
とりあえずこの家の近辺警備を強化してもらおう。
葉山部長がクリスちゃんはVIPだって言ってたからそのくらいできるでしょう。
それに私達のお仕事が忙しいからというのもある。
なら国に責任取ってもらいましょうか。
「ん?」
不意にスマホが振動して着信を告げる。
この番号は……。
「はい、伊皿木です」
「あぁ伊皿木さん。葉山です」
「葉山部長、どうしたんですか?」
「昼間伝え忘れたことがあってね。明日からそちらに同居させてもらいたい人がいるんだがどうだろうと思ってな」
「えらく急な話ですね。私はかまわないんですが……」
クリスちゃんと祥子さんに視線を向けるとどちらもOKサインを出してくれる。
音量的に聞こえていたのね、話が早いわ。
「クリスちゃんたちもいいって言ってますけど、安全な人なんですか?」
「安全かどうかはともかく、人となりと呼んでいいのかわからないけどそういうところは問題ない人だよ。ルルイエのお嬢さんを護衛しなければいけないというのもあるから、そういう観点で人員を選ばせてもらった」
「あぁ、それお話ししようかと思ってた内容です。私と祥子さんが帰れない日どうしようかって」
「うむ、それも考えて同居人を増やしてもらうという決断に至った。君もよく知る人物だから安心するといい」
はて、私のよく知る人物……誰だろう。
人脈にはそれなりに自信があるけど、うちに同居となると女性よね。
それでいて護衛ができるくらい……というかクリスちゃんの足を引っ張らないくらい強い人となると……うーん誰かしら。
「うずめさんという人だ」
「うずめさん……あ、もしかして雨野うずめさんですか? あの日本女子格闘技総合優勝者で、ダンサーとしても有名な」
「そう、その人。護衛としてはぴったりだと思うけどどうだい」
「うずめさんは何度かおしゃべりして、簡単なスパーリングとかダンスバトルとかした仲ですから異論はありませんよ。今回の一件には最適な人材だと思います」
「そうだ、最適だ」
「でも部長お知り合いだったんですか?」
「年に1回会いに行くくらいかな。プロゲーマーのテンショーさんとかもいる、ちょっと特別な方々の集まりなんだが……。まぁその話は今度にしよう」
そんな集まりがあるのね……そういえば実家も毎年お盆の時期は親族一同集まるわね。
肝試しで妙なもの持って帰ってくる人が多いからかき入れ時ってことで人海戦術。
酷いのはうちに泊めるけど、大抵のはその場でなんとかして終わり。
それだけなのに代金が高いという人がいたら……まぁその時は元の状態に戻しておかえり願うか倍の金額を頂く。
阿漕な商売だと思うでしょ。
実際阿漕よ、少なくとも私の食費はお盆の間に稼ぐといっても過言ではないのだから。
「そういう事で、明日はそちらの対応を頼む。出勤扱いにしておくから別の日に振替で休んでくれて構わない」
「そういう事ならまぁ……」
「あと運営から持って帰ってきたものによってはボーナスがつくというのも言い忘れていた話だ。お金は年収だけでも十分だろうから君には一見さんお断りの店の紹介状を用意する」
「なにもぎ取ってくればいいですか! あのロボットの腕でも持ってきます?」
「持ってこられても困るから薬とかを適当に貰ってきてくれ。試作中でもいい、なんなら同伴で戻ってきて一緒に研究してもらっても構わん」
「それ向こうが嫌がるんじゃないですか?」
運営は自由に研究がしたかったはずだから、その自由が奪われかねない公安には来たがらないだろう。
それにあの人たちだけで楽しんでる節があるから邪魔するのもね……。
「まぁ毎度出せるとは思っていないさ。運営に嫌われない程度に物を貰ってくるといい」
「わかりました。次は書類受け取りに行くときに出勤することになってるので、その日に治験受けて翌日休みいただきます」
「わかった。こちらで調節しておこう」
電話が切れる。
ふぅ……うずめさんかぁ……そういえば会うの久しぶりね。
元気にしてるかしら。
武芸と武術の神様が大会に出るチート。
次回新キャラうずめさんのお披露目です。




