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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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 ひぃ! 聖剣っぽい物体が頬かすめた!

 とっさに邪悪結界を発動しなければ死んでた!

 とか思ってたら正面から魔法飛んできた!

 必殺英雄の肉盾!

 安堵する暇なんてない、ただひたすら猛攻に耐え続ける事しかできない。

 さっきの雑兵とは違って一人一人が修羅とも呼べる猛者ばかり。


 こんな経験したくなかったけどリアルじゃ滅多に経験できないからブログのいいネタに……いやあったわ、割と頻繁に。

 各国飛び回って武術の師匠たちから稽古受けてる時とか、戦場で孤立した時とか、エベレストで白いゴリラに襲われたときとか、なんか都市伝説っぽい物を収容してるみょうちきりんな人達に連れられて行った施設で騒ぎが起こった時とか、地中海クルージングの時船が氷山にぶつかって真っ二つになった後サメに襲われたときとか、アメリカでやたら人に噛みつこうとする病気になった人たちに襲われて街ごと隔離されたときとか!


「それに比べたら……!」


 リアルで命の危機でもないのだから少しくらい無謀な事をしてもいいだろう。

 ちょっとした冒険程度だし、うまく行ったら万々歳、失敗しても後詰にルリさん達が罠を仕掛けて待っている。

 最悪のパターンは私が死亡して、ルリさん達の罠が完成する前の状態だという事だけどボイスチャットで仕掛けはできたと報告を受けているから問題なし。

 なら……!


「はぁ!」


 私の首を狙ってきた横一閃を避けると同時に地面を殴りつける。

 腕が地面に突き刺さるような殴り方だと意味がないので、クレーターを作る要領の殴り方。

 結構難しいけれど琉球空手で習った!


「隙ありじゃあ!」


 さすがに歴戦の猛者というべき英雄たちだけど足元が不安定になれば姿勢も崩す。

 結構な人数が飛びのいて避けたけれどそれも計算のうち。

 バランスを崩した人たちは心臓部にドライアドの蔦を突き刺すことで、飛びのいた人たちは着地前にロストガンを引き抜いて心臓狙いの射撃をお見舞いする。


「ちっ……」


 蔦はうまく心臓を貫いてくれたけれど、やっぱり飛び道具はダメね。

 結構簡単に防がれちゃう。

 狙った人数は6人、というか弾倉にそれしか入らないからね。

 そのうち5人が剣で弾いたりして防御したわ。

 1人は徒手空拳だったから防御できずにご臨終なされたけれど、ロストガンの弾丸ってコストがばかにならないから割に合わないわ……。

 もとより武器を装備できないからロストガンの本領であるスキル関連を発揮することもできないし、なにより手が塞がる。


 やっぱりファッション装備かなと思った瞬間だった、視界の端できらりと光るものが見えた。

 マズい、そう思ったときには身体が動いていた。

 思考入力でインベントリからロストガンの弾薬を取り出し、シリンダーを開いて排莢、落下してくる弾丸を胸の上で弾ませて銃を振るい空になったシリンダーに収めて閉じる。

 そして光のした方向にロストガンを向けて、反動を無理やり抑え込んで弾丸が一列に並ぶように撃つ。

 長い時間に感じたが、瞬きをすると同時に空中で火花が散り、そして砦の方から光の粒子が昇っていくのが見えた。

 ……スナイパーまでいるのね、正確にこちらの眼球を狙ってたから対処できたけど、シモヘイヘクラスの狙撃手よ今の。

 化けオン運営、どんな方法であのクラスのAI作ったのよ……軍事利用されたら恐ろしいどころじゃないわ。


「うわっ!」


 考え事してる場合じゃなかった!

 なんかよくわからない二刀流の人に髪の毛きられた!

 その後ろには無茶苦茶長い刀持ってる人もいるし、宮本武蔵と佐々木小次郎再現でもしているのかしら……そんな修羅な人達と戦わせるとかあとで運営と軍師さんに文句言ってやる!

 っと、さすがにこれ以上の弾薬浪費は避けたいからロストガンをホルスターに収めて腰を落として……二刀から繰り出される連撃、その合間を縫うように舞うような剣捌き、そして茶々を入れるように襲い掛かってくる人たちを集中して観察する。


 正面は全てダメ、どこに避けても次の一撃を受けることになる。

 その一撃は致命傷ではないけど、その後の行動を考えると致命的なダメージとなるのは容易に想像がつく。

 左右……ダメ、人が押し寄せているせいで押しのける必要があるからその隙は決定打を受けることになる。

 ならば背後……もダメね、気が付いたら追い詰められていたわ、砦の壁。

 となると上しかないんだけど、その上空から矢が降り注いでいる……これはまともに受けたら針供養の豆腐になるわね。


 だけどね、なら受けなければいいのよ!

 翼を広げて飛び立ち矢の雨に突っ込んでいく。

 両手と10本の蔦を伸ばして全ての矢をつかみ取り、そして射手に向かって投げ返す。

 蔦で捕らえた矢はさすがに精密なコントロールなんてできないから下方に向かって全力投下。

 その衝撃で土煙が上がり、いくつかの光の粒子が見えた。


「よっし!」


 さすがにこれ以上はきついから一旦退却!

 砦を見据えながら後方に移動して砦から外に出ると、巌流島コンビもどきも砦の門を切り裂いて出てきた。

 ……いや、拠点を自分たちで破壊してどうするのよ。

 まぁつっこみは後回し、今は全力で逃げに徹する。

 唸れ! 50m走2.4を記録した私の瞬発力!

 そして戦場で地獄のトライアスロンを経験した持久力を舐めるなよ!

 坂道を駆け降りる、というには生ぬるい、もはや落ちる勢いで走る私に追い付ける者はいない!

 ……いやスカートの裾邪魔! 走るのに必死だから手は使えないし、足を止めるわけにもいかない……なら便利なものがあるじゃない!


 蔦でスカートの裾を引き裂いてさらに速度を上げる!

 今なら2秒の壁を越えられそう!

 そんな私を巌流島コンビもどきはもちろん、その背後から追いかけてくる英雄NPC達、そしてそれを追うようにして転がってきた丸太!

 ルリさんグッジョブ!

 仕掛けた罠は砦のすぐ横に生えている木を切り倒して転がすという方法、ロードランさんの腕力に期待して発案したら通ったのよ。


 私が逃げた場合、砦の中からNPCが溢れてきたらその最後尾を待ってできる限り多くの丸太を投げつけてほしいと。

 そしたらルリさんが「私は風の魔法が使えるから丸太を調達できる」と言って、実際に下ろした先で木を切り倒すことなく、直立した一見したら普通の樹木に見えるような丸太を作ってくれた。

 それをロードランさんが片っ端から倒して、力いっぱい転がしてもらった。

 リアルではさすがに魔法とかないからのこぎりで切った丸太を設置しておいてタイミング見計らって転がしたけど……いやぁ、便利ね魔法って。


 私も覚えようかしら……やっぱいいわ、面倒くさい。

 ドレインと狐火と邪悪結界だけでもあんなに面倒なのにこれ以上はパンクするわ。

 さて、そろそろいいかしら。

 急ブレーキをかけて近くの木を蹴り倒し、武器の代りに振りかぶって巌流島コンビもどきたちもろとも後ろのNPCと転がってきた丸太をぶっとばす!

 見事なホームラン、砦まで吹っ飛んで行ったそれらは丸太を残して光の粒子になって消えていった。

 あとは仕上げが残っているわね……砦を出るときに見えた、堕ちた英雄さんと……そして私そっくりな姿の敵がね。


注:琉球空手にクレーターを作る技はありません、たぶん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 超常現象にはロマン感じるけど、この作品の地球には住みとう無い……
[一言] おっぱいリロード…!
[一言] そういや主人公も英雄でしたねぇ… 財団の記憶処理にレジストしてそうだし地中海クルーズで氷山にぶつかるってどういうことだってばよ…
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