PK
森の植物とお話ししたり、狼達にかぎ分けてもらったりしながら探す事1時間。
どうにか予定の10個と、周囲の土ごと掘り返して鳴かせることなく鉢植えにしたマンドラゴラ5個を収穫できた。
うん、いろいろ悪さできそうだし美味しく食べられそうだ。
やはり煮つけか、サラダか、それともすりおろして魚と一緒に食べるべきか。
その調理法を考えていたのだが、連れていた狼の一匹が突然矢に射抜かれた。
さらさらと死体が消えていくのは呪魂摘出と同じだけど、ドロップアイテムを落とす様子がない。
というかこの矢、誰の矢?
「おーっと、そこから動かないでもらおうか」
「どちらさま?」
「名乗るほどの者じゃねえよ。ただのPKだ」
PK、プレイヤーキラー、つまり私を殺したいと。
でも持っているのは斧、他に何人か控えているとみるべきかしら……なんて思ってたらぞろぞろ出てきたわ。
魔法使いっぽい人と、弓使いと、盾持ってる人が。
まぁこのゲームPK推奨ってパッケージに表記されてるくらいだからね。
そういう楽しみ方する人もいるでしょう。
そもそもの話ふれこみが「人間性は犬に食わせろ」だったし、正直そんなものが食べられるなら私は喜んで食べる。
人間性ってどんな味なんだろうね。
「とりあえず有り金全部おいていきな!」
「え、別にいいけど?」
「え?」
「え?」
自分で言って何を驚いてるのこの人。
「えーと、トレードはこれでいいんだよね」
「あ、はい」
「じゃあこれ有り金ね、文字通りお金はこれ以上ないし種族特性のデメリットで装備とかも持ってないから。せいぜい換金できそうにないクエストアイテムくらいしかないからある意味で今現在の全財産ね」
チャリーンという音と共にPKを名乗った斧持ちの人の手に380ルルが落ちる。
「え?」
「いや、全財産それ」
「武器いらないならもっとあるんじゃねえの?」
「ペナルティ支払って、酒場で豪遊したら素寒貧」
「……すまん、返すわ」
「別に気にしないでいいのに、どうせクエストクリアしたらお金も手に入るし」
「いや、流石になんか……子供をカツアゲした気分になって申し訳ない」
「あらそう? なら受け取っておくけど……なんでPKなんてやってるの?」
なーんかこの人たち性格的にPKに向いてなさそうなのよね。
最初にお金出せって言った割に渡すって言ったら驚いてたし、本人たちとしては先に攻撃してほしかったんだと思うけど……罪悪感の軽減のためかしら。
「いやぁ、PKが一番手っ取り早く経験値が手に入るんだわ。狩場争いする必要もないし、次の獲物を探すよりもプレイヤー探した方が早くてな」
「私まだレベル3……あ、ちょっと上がってレベル4になってるけどその程度でも?」
「あぁ、というかこの辺りはレベル2の狼と、レベル1のウサギくらいしかいないからな。レベル4のプレイヤー倒した方が経験値うまいんだ」
なるほど……PKは経験値効率が美味しい、いい事を聞いたかもしれない。
私の中の悪の心がよからぬ商売を思いついてしまったみたいだ……。
「いや、いい事を聞いたわありがとう。お礼に商売のお客さん一号に任命してあげる!」
「え?」
「PKでレベル上がるという事は、町のリスポン地点に張り付いていれば効率的よね」
「あ、いや、それやると馬鹿みたいに強い衛兵にぶち殺されるんだ。そのあと監獄送りになる」
「悪質なPKはできないけど通常のPKならできるんでしょ? なら問題なし!」
「そうなのか?」
「うん、とりあえず実際にやって見せたほうが早いからサクッと町に戻りましょうか!」
「そりゃいいけど、ここから戻るにしてもそこそこ距離あるぜ?」
「ふっ、昔のゲームで死に戻りという方法があったわ」
「あー、あったなそんなん」
「それを再現する方法がここにはあるわ!」
「自害か?」
「まぁまぁ、見てなさいって」
困惑するPK達をしり目にインベントリから鉢植えマンドラゴラを取り出す。
「はい、せーの!」
勢いよくずぼっと引っこ抜く。
「キィェァアァァァァアアアァアァアアアアア!」
マンドラゴラの絶叫に包まれて私たちは町のリスポン地点に戻ってきました。




