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希望論的心中観

作者: 在原 功

この想いを正しく表すとしたら、どんな言葉になるのだろう。恋だの愛だのわからない。

難しい。それってどんなのと聞かれたら口籠るしかできないだろう。例えばこれに恋と名付けて君に伝えて捧げて死ねたらそれはそれで大正解だ。おそらくこれに愛と名付けて君を守って死ねたならこっちもまるで理想的。



恋愛って言葉は陳腐で笑けてしまう。好きだよも愛してるよも大した意味はない。だから俺は、君がために息絶えたい。命を賭けて愛したい。死ぬ時君に泣いて欲しい。そしたら俺は世界一番果報者。死ぬ時だって怖くない。

だけども君は泣かないだろう。多分、君は俺が死んでも泣かないよ、なんとなくだけど。そういえば君の涙は俺なんかの為に流れるものじゃなかったね、そうだごめん。調子乗ってたんだ今が幸せすぎて。


俺の為に泣かない君が好きだよ。

俺が死んでも後を追って死なないだろうところが愛おしい。

俺が死んだらどっかの誰かと恋をするんだね、それは多分美しい。

でもだから俺は死んでやれない。


何があったって死んでやらない。それでももし死ぬならば、その時こそ君の心に消えない傷を一筋残したいんだ。痛くて、苦しくて、安心するようなさ、そんな傷にならせてはくれないか。って、無理かな。それでいいよそのままでいてよ、だけどさ、俺なんか覚えてなくていいけど、本当にいいけど、ひとつだけ。俺以外にもそうでいてよ。


どうか俺を、ただの愛されなかった一人にして。愛したらそれ以外は忘れるんだろ、だから誰も愛さないで愛さなかった俺を一人に数えて。俺が特別じゃない、わかってるよ。何度も言うなよ知ってるって。特別になれないのなんか今始まったことじゃないから、割り切ってるけどそれでも君しかいないんだ、分かってよ。君だけをひたすら信じる信者を憐む心を与えてくれよ。それで俺は生きていくから。なんとか死なずに生きていくから。

それがだめなら目の前で死んでしまおうか。傷を残して後を引いて、取り憑くように笑って死にたい。

最後に見るのは、ああ、そうだな。君の瞳の色がいい。


なんてね、嘘だ。無理だったね。

だって俺は君の幸せを願ってる。


君の晴れ姿が見たいよ。白いドレスでヴェールをかぶって、最高に幸せな、その幸せの絶頂を見るんだよ俺は、きっと友人席で。

おめでとうって言って、いつも美人な君の最高に美しい姿を目に焼き付けて、君の切ったケーキを食うんだ。

ああ、泣かないでいられるかな。

その時泣いたら怪しまれる。

無かったことにした俺との時間を蒸し返されたら嫌だろ?


頑張るよ、平然と友達をやるよ。

引き出物をもらって、友人たちとそのあと君を冷やかしてからかって、何、君達にからかいの一つも言って見せよう。

ひゅう、お似合いだねぇ。

そんで、家に帰ったら酒を飲もう。

とびきり強いやつ。三本買って。

一人っきりでテレビもつけずに。

倒れるまで飲んで、死ななかったら生きよう。

その後に泣かないままの涙は、どっかで流しておくよ。君のいないどこかで。

安心していいよ、俺は幸せだよ。幸せなんだ。嘘じゃない。



太陽の君は無自覚なのかな。俺のことを焼くのが上手いよ。焦げ付いて離れないんだ、どうするんだ一体。

もう剥がせないのに今更捨ててねなんて、言わないで、ねぇ。でも言っていいって約束したのは俺だった。そうだ、そうだよ。たしかにそうだ。これを捨てる時が来るのはわかっているんだよ今だって、少しずつ剥がそうと思ってるんだ。でもなかなか手強くてさ、間に合いそうにないんだ。

俺の言葉の裏の意味は伝わっているのかな。俺が吐いた言葉はどう言う風に聞こえてるの?俺は、どこまで君を好きでいていいの?俺は君を好きでいていいの?

正直者じゃなくてごめんよ。本当のことを言えと言われたら、俺は嘘をつかない。ここの奥底のこんな気持ちを掬って君に見せてあげるよ。いくつかは知っているかもね。


俺といて。

ずっといて。

忘れないで。

君に残して。

できたら恋して。

そうじゃなかったら躊躇わないで、

たった一突きで俺を殺して。


…君の心の奥も見せて。



俺は月を憎めない。

嫌悪する。嫉妬する。だけどもそれは憎悪ではない。


月の君なら大丈夫だよね。鳥の俺とは違うもんね。俺とは違って空にいるもんね。ほんと羨ましいよ。憎たらしいけど信じたいよ。だってあんたを信じられなきゃ俺の太陽の幸せを信じられない。頼むよ、お願いだ、信じさせて。俺が参ったと叫ぶくらい、歯が立たなくて崩れ落ちるくらいに平伏させてくれ。

俺はあんたを信じたい。信じられたらこんな気持ちは太陽に焼かれずに済むんだ。そうに違いないから。

月に怯えて月を待ってる。


執行猶予はあとどれくらい?

ギロチンの下の処刑者みたいに首が落ちるのを待っている。こんなこと思われてたら嫌かな。重いよな。ごめん。

だけどいてもたってもいられない。君の口から処刑の言葉を聞くのが怖い。ああ、もうだめだ、全部言うよ。


俺は、月になりたかったんだ。



こんなはずじゃなかった。

狂わせたのは君だけど、すべては俺のせいだった。独りよがりに惚れて悩んで、迷って進んで、押したら転んで独り芝居。この全てを知ってるの?君は本当は知っているのか?だったら断罪してくれよ。どっちか教えて欲しいんだ。嘘か誠か、正義か悪か。俺はどうすればいい。


君が思うより俺は美しくないんだ。綺麗じゃないんだ。だけど本気なんだ。

嘘くさい。キザっぽい。安っぽい。なんとでも言えよその通りだから。

でもそれが本当じゃないって誰も言ってないじゃんか。だったらこれは俺の本当。偽りだなんて思わないで。少しだけ俺を信頼して。

嘘ばっかで俺も俺が分かんないよ。そんな人間なんだ。嘘と本物って結構似てんだ。案外わかり辛くてさ。

それでもこう思うんだ。

君を思うこの気持ちだけは多分得意の嘘じゃない。



言葉にするのは難しい。それでもそいつをやっとのことで形にするならそれはきっと、こんな風だ。


君の一つ一つが俺の心臓を打ち鳴らすとして、俺の心臓の打ち方生まれるから決まってたとして、生まれた時に心拍数が決められていたとして、君の打ったビートのせいで俺の心臓を削るなら、


君の言葉で狂う心拍に鼓動の全てを費やしたい。


つまりはきっと、そういうことだ。

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