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彼氏(仮)出来ました  作者: 卯月いちこ
9/16

L○NE交換しました

お好み焼き代は迷惑を掛けてるからと、半田が手早く会計した。

藍香も、そこは素直に奢って貰うことにした。

また家まで送ってもらうと、別れ際に半田が


「あっ」


と、声をあげた。


「どうかした?」


藍香が聞くと、少し間があってから


「L○NE交換したいなと思って」


半田はスマホを出して言った。


「あ、そうだね!」


藍香もスマホを出すと、半田のスマホと、ふるふるした。

(男子とL○NE交換しちゃったよ)

何か気恥ずかしいくもあり、嬉しくもあった。

すると、L○NEの通知音がした。


『これから、よろしくお願いします』

お辞儀をした熊のスタンプ


と、半田から送られてきた。いつの間にと思いつつ藍香も


『こちらこそ、よろしくお願いします』

キラキラ目を輝かせたウサギのスタンプ


を、送った。

半田はスマホを見て微笑むと鞄にしまい


「またL○NEするね。じゃっ」


と、言って手を振ると自転車に乗る。


「うん。またね」


藍香も微笑み、手を振った。

半田は、しばらく行くと前日同様に振り返り、また手を振った。藍香も振り返して見送った。


「何、遂に彼氏が出来たの?」


背後から突然、声がして藍香は飛び上がった。


「お母さん!背後から止めてよ!」


藍香が文句を言うと、藍香の母、香織はケラケラ笑う。藍香と同じく小柄で細身、髪は染めていて茶髪のショートヘア。性格は、さっぱりしている。藍香が家に招いた友達と話していると、すぐ仲間に入りたがる人懐っこい所もある。


「ごめん、ごめん、で?彼氏なの?」

「友達だよ。同じ図書委員なの」


母親には嘘を付きたくないし、かといって本当の事も言いにくい。


「えー!本当に?彼氏じゃないの?」

「違うよ!てか、何で外に居るのよ!」


母はスーパーでパートをしているが、16時までなのだ。今は18時。それにエプロンをしていた。


「回覧板を渡してきたのよ」


母はケロッとして言った。

(何てタイミングの悪い)

藍香は、がっくりする。


「もー寒いから、中に入ろうよ」

「えー?何何々よ」


藍香は母の背中を押して家の中に入った。


それから藍香は2階の自室で部屋着に着替えると、夕食のために下に降りた。

母は、まだ料理をしていた。出汁の良い香りがする。


「今日は何?」

「おでんだよ」

「やった!糸こんにゃくと餅巾着、入ってる?」

「もちろん。藍ちゃんの好物だもんね」


藍香は上機嫌で鼻歌を歌い、テーブルを布巾で拭くと食器を並べる。藍香は独りっ子なので、母と父とで3人分だ。


「ただいまー」


タイミング良く父の忠雄が帰ってきた。藍香は迎えに行く。


「おかえり。今日は、おでんだよ」

「良いね!寒くなってきたからな」


忠雄は市役所勤め。中肉中背、少し白髪混じりの短髪で、性格は大人しくて温和。煙草も吸わないし、お酒は付き合う程度と模範的な父親だ。趣味はカメラと旅行で、家族旅行も良くする仲良し一家だ。

因みに藍香の顔は父親似である。


「藍ちゃんね、彼氏が出来たみたいよ」


香織は、着替えてテーブルについた忠雄に言うと、出来上がった、おでんの土鍋をテーブルに置いた。


「だーかーらー、友達だって!」


藍香は、うんざりして訂正する。

忠雄は、ほっとした様子で


「藍香がそう言うならそうなんだろ、変に勘ぐるなよ」


と、言うと香織は口を尖らせて


「何よ、娘に彼氏が出来るの嫌なだけでしょ」


文句を言うと、忠雄の茶碗に、ご飯をよそって渡した。


「あ!そうだ」


藍香は両親のやり取りをスルーして、スマホを取りだし、おでんの入った土鍋の写真を撮り出した。


「何やってんの?」


香織が聞くと


「折角だから、友達に送ろうと思って」


藍香はニンマリして、スマホを操作している。


「ふーん、友達ねぇ」

「お母さん、くどいよ」


藍香が睨むと、香織は舌を出して肩を(すく)め、大人しく食べ始めた。

忠雄は、やれやれと2人のやり取りに呆れ、無言で大好きな卵にかじりついた。

すると、L○NEの着信音がして藍香は急いで確認する。素早く香織が覗き


「向こうはカレーか」

「もー!覗かないでよ!」

「別に友達なんだし、いーじゃん」

「そう言う問題じゃないでしょ!」


藍香は母に背を向けて、スマホを隠すように返信する。

半田から


『おでんか良いね!うちはビーフカレーだよ』

と、ビーフカレーの写真


『ビーフカレーも美味しそう!』


と、返した。他愛もない事が何故か楽しい。

おでんも美味しい。藍香は嬉しそうに、少し冷ました餅巾着を頬張る。


「中高生から、男子の友達なんて初めてじゃない?最近?」


香織に探るように聞かれる。


「まあね。前から知ってはいたんだけど、仲良くなったのは昨日から」


藍香も別に秘密にするつもりは無かったので、答える。


「名前は?どういう子なの?」

「半田和樹君。優しくって良い人だよ。話しやすいし」

「写真は無いの?」

「無い」

「今度、撮って見せてよ」

「分かった、分かった」


次々と質問され、げんなりした藍香は急いで食べると、食器を洗いに逃げた。

香織は聞きたい事は粗方聞けたので満足した。忠雄は本当に友達でありますようにと願った。


藍香は好きなテレビを見てから、お風呂を済ませると2階の自室のベットに寝転んだ。

すると、L○NEの着信音が鳴り、見てみると博美からだった。少し残念に思いつつ読むと


『今、何してる?』

ごろごろした猫のスタンプ


藍香は『まさにごろごろしてた』と、返す。


『あれから何かあった?』と聞かれ、付き合う振りをする事になったと伝えると


電話が鳴った。


「はい、もしもしー」


藍香が話す間もなく


「どーゆーことよー!!!!」


博美の絶叫が耳に響く。

(そりゃあ、驚くよね)

藍香は経緯を説明すると


「藍ちゃんは人が良いねぇ、でも……面白そう」


博美は完全に他人事である。


「でも、あの藤崎さん大丈夫かな?面倒な事にならなきゃ良いけど」

「それは確かに……でも、まぁ大丈夫でしょう」

「あー考えるの放棄したな」

「だって、考えたってしょうがないし。引き受けちゃったし」

「だよねー。私も協力するからね!」

「ありがとう!」


おやすみと電話を切ると、藍香は少し不安になった。

博美の予想は良く当たるからだ。


また、L○NEが来たので見ると、半田からだった。


『まずいことになった』

『どうしたの?』


藍香の不安は広がる。


『今度の日曜空いてる?』

『空いてるけど?』

『裕也に付き合ってるって話をしたら、まぁ、美鈴に伝わるよね』

『うん』


何だろう……不安が益々、広がる。


『ダブルデートしたいって言われて』


本当にね、博美の予想は当たるよね。

藍香は覚悟を決めて


『分かった』

OKのウサギのスタンプを押した。


『本当に?助かる!ありがとう!』

涙を流してお辞儀する熊のスタンプが送られてくる。

詳細は又、後日となり、おやすみとウサギのスタンプを押した。


明日、博美は絶対に言うだろうな


「だから言ったじゃない」


と。






一番、長くなりました。

お約束な展開です。

本当は2人きりのデートを経てからにしようと思ってたのにな。あれ?

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