彼氏(仮)出来ました
かなり遅れました‼すみません‼
自分でもびっくり‼
時が過ぎるの早すぎる(-人-;)
取り合えず昼休みも終わるので、放課後の図書委員活動の時に、また話し合う事になり。
「じゃあ、またね」
「うん。またね」
2人は教室近くで別れた。半田は2組で藍香は4組だ。
(私、彼氏出来ちゃった!仮のだけど。初の彼氏が偽物か……笑えるね)
思いもしない展開に、どこか現実味が無い。
「ご苦労様」
と、博美に言われ、ただいまと返し席につく。
博美は何か喋りたそうだったが、もう先生が来てしまい残念そうに前を向く。
(博美には喋っても良いよね?)
きっと驚くに違いない。何せ自分が一番驚いているのだから。
そして、やはり授業はさっぱり入ってこなかった。
結局、藍香は、とても休憩時間で話せる事ではなかったのと、半田に相談してからだと思い博美には喋らなかった。
放課後は博美も演劇部の部活動がある為、名残惜しそうに別れた。
(さてと、行きますか)
藍香は教室を出ると、廊下で待っていた半田が、よっと手を上げる。
「図書室でも話しにくいから、一緒に帰りながらどうかな?」
「確かにね。分かった」
藍香が了承すると、半田はふと
「そう言えば、呼び方どうする?」
と、相談してきた。
「友達には藍ちゃんって呼ばれてるけど、半田君は?」
「カズか和樹かな」
「呼び捨てはハードル高いなぁ。和樹君だな」
「じゃあ、藍香さん?」
「だね!決まり!」
そうこうしてる間に図書室に着いたので、昼休み同様に半田はカウンターで受付、藍香は返却本の戻しと棚整理をこなしていった。すると、丁度、借りたい本が戻ってきていたので、終りがけに半田の所へ持って行った。
「へー。三嶋さん『指輪物語』好きなんだ」
半田は、もう忘れて名字呼びだ。
(すぐには難しいよね)
「読んだことある?」
「無いよ。読んでみようかな」
「面白いよ!お勧め!何なら初めの持って来ようか?」
「本当!ありがとう。借りてみるよ」
こういうやり取りは楽しい。同じ本好きならではだ。藍香は、いそいそと本を取りに行く。
すると、友達で2組の図書委員の南原早恵が、びたっと、くっついてきた。背は藍香よりは少し大きい、ツインテールの眼鏡女子だ。
「いつの間にパンダ(半田)と仲良くなったのよ?」
「えっ?いや、何か~たまたま?」
「ふーん、たまたまね」
「気さくな良い人だよ」
「ほうほう」
早恵は、にんまりと笑う。
(だめだ!完全に誤解されてるよ!でも……誤解で……良いのか?)どうすれば正解なのか分からなくなり、(ま、いっか)藍香は考える事を放棄した。
「もー!本を持ってくから」
藍香は早恵を退けると、本を見つけて半田に持って行く。
「はい。どうぞ」
「ありがとう」
半田は、にこっと笑うと本を受け取った。
藍香も釣られて笑顔になる。
半田の隣の2年の先輩が、そんな2人をちらりと交互に見た。藍香は何故か少し気恥ずかしくなり、そそくさと帰り支度をする。
半田を見ると、まだ終われないようで口パクで『廊下で待ってて』と、言われた。
(何か、内緒で付き合ってるみたいだな)
全然、違うのだが頬が少し緩む。藍香はそれを押さえつつ、同じく作業が終わった早恵と、挨拶をして図書室を出た。
「やっぱり!何か隠してるでしょ」
「はぁ!?無い無い」
藍香は早恵の探りを交わしつつ別れると、教室に荷物を取りに行き、廊下で校庭を見ながら待っていた。
「ごめん。お待たせ」
半田が慌てて、やって来た。
「全然、良いよ。お疲れ様!」
藍香が労らうと、参ったよと、半田は頭を掻いた。
「いやさ~、先輩に付き合ってるのかって聞かれちゃったよ」
「えっ!やっぱり!」
「やっぱりって?」
「何かさっき、勘ぐってる感じだったから。私も早恵ちゃんに怪しまれたし」
「そーなんだ……まーでも、それで良いのか」
「半田君の幼馴染みだけって訳にもいかないし、あっ!」
「えっ?」
何かあったのかと驚く半田に
「私もだけど、さっき図書室で三嶋さんって言ってたでしょ。呼び方、決めたのにさ」
唇を尖らせて言う藍香に、半田は、ぶふっと吹き出して笑った。
「そういう所が良いよね」
「へ?」
「帰ろっか、藍香さん」
「お、オッケー。和樹君」
藍香は指摘をしておいたくせに、少し顔が赤くなる。
(いや、こういうの慣れてないから!)
外に出て自転車置き場に行くと、半田は、また藍香の鞄も自転車のかごに入れて並んで歩く。
「ありがとう」
「良いよ。今日はどうする?あんみつ?」
「うーん……お好み焼きは?」
「おぉ!良いね!」
喋りながら歩いていると、サッカーグラウンドから
、叫び声と騒がしい声がしてくる。
「何だろ?」
藍香が見てみると、誰かが怪我をしたようだ。
男子が倒れてメンバーが囲んでいた。
「あちゃー大丈夫かな?」
「本当だね。何ともないと良いけど」
2人は呑気にそう言うと歩き出した。
まさか、それが2人に関係してくるとは露程も思わずに。
やっと本題に入りました。