予想外のお願い
大分、遅くなってしまいました。
すみません。
1時間目の国語の授業中も、さっきのあれは何だったんだ?と悶々としてしまい、さっぱり内容が入ってこなかった。
「今朝のあれは、藍ちゃんを見定める為に待ってたね」
授業後、前の席の博美が振り向いて、したり顔で声を潜め言ってきた。
「私を?見定め?何で?」
藍香はさっぱり分からない。一応、小声で返す。
すると博美は嘘でしょ?!と呆れ、顔を近付け更に声を潜める。
「昨日の半田君との…だよ!」
「えっ!」
「私みたいに見てたのか、それを聞いたのか、とにかくどんな子か気になって見に来たんだよ」
「見に来た処か、人を格下確定して嫌み言われたけど?」
藍香は思い出してムカついていると、博美はニヤリとして
「牽制してきたよね」
と、言う。
「…幼馴染みでそこまでする?」
藍香には、そういう関係性がないので、よく分からなかった。しかし、博美はカッと目を見開き
「藍ちゃん!ああいう女王様タイプは…する!」
と、断言した。
「まじかー」
藍香はあまりの面倒臭さに机に突っ伏した。
「ご愁傷さま」
博美はからかうように言うと、先生が来たため、前に向き直った。
(あんみつ食べてただけなのに…)
がっくりと肩を落とす藍香だが、良く考えれば、格下で安心していたようだし、これ以上どうこう無いのではないかと思い至った。
(うん!そうだそうだ!もう忘れよう!)
所が、そうもいかなくなる事を、昼休みに知ることになるのであった。
昼休み、藍香は博美とお弁当を食べ終わると、図書委員の作業日だったので図書室に行った。
半田がカウンター係なので、もう1人の2年の先輩と受付をしていた。
「お疲れ」
半田と目が合い挨拶すると
「あっ!お疲れ。あの…ちょっと後で良いかな?」
と、言われた。何だろうと思いつつ分かったと返す。
藍香は返却された本を棚に戻しながら、整理整頓していた。
暫くすると半田がやって来た。
「受付は良いの?」
藍香が聞くと
「うん。人も少ないし、そんなにやる事無いから、先輩が自分だけで良いって言ってくれて」
半田はそう言うと藍香の手伝いをする。
話がありそうな半田に、先輩が気を利かしてくれたのだろう。
「話ながら良いかな?」
「何かあったの?」
藍香はそう言いながら、今朝の事を言ったものかなと思案する。
半田も本を棚に入れながら話始める。
「実は昨日、幼馴染みの2人が、あんみつ屋さんから出てきた俺らを見ててさ」
「成る程」
「えっ?」
「何でもないよ。それで?」
「それで祐…榊が夜に電話してきて、どういう関係なのかって。だから、同じ図書委員の子だって説明したんだけど…」
半田は突然、言い淀む。
「どうしたの?」
「急にこんな事聞くのはどうかと思うんだけど…」
「うん」
(何?何?何?)
変に改まった半田にビビる藍香。
半田は周囲を見渡してから
「三嶋さんて付き合ってる人いるの?」
と、思いもしない質問をしてきた。
「いないよ?」
驚きつつも答えると
「好きな人は?」
と、聞かれ
「いないけど?どうしたの?半田君?」
半田はうつ向くと申し訳なさそうに、ちらりと藍香を見て
「実は…お願いがあって…」
と、切り出してきた。
「うん」
「俺と付き合ってるふりをして欲しいんだ」
「へっ?」
思わず本を落としかける。
「な、ななな、何で?」
予想だにしなかった、お願いに藍香は動揺しまくる。
「それが…榊と藤崎が付き合う事になっただろ?」
「う、うん」
「藤崎が、その事を俺に言わないで欲しいって、言われたらしくって」
「えっ?」
「3人で楽しく過ごしたい。変に気を使われたくないからって」
「えぇっ?」
「だから俺にも彼女が出来れば、2人も正々堂々と付き合えるから、何とかならないかって」
藤崎の我儘振りも、榊の手前かってな頼み事もどうかと思う。もう半田が気の毒でならない。
(素直に何とかしようと…自分の気持ちを押さえ込んで…不器用で、お人好しな半田君)
藍香は悔しいような、切ないような、何とも言えない気持ちになる。
半田は恥ずかしさでか、顔が真っ赤になって
「変な事、言ってごめんね。自分でもどうかと思うよ」
項垂れる。大きな半田君が小さく見える。藍香は庇護欲がむくむくと沸きだした。
そう、お節介な性分が!
なので、特に良く考えもせず答えた。
「良いよ」
「無理だよね。ごめんね、忘れて……えっ!」
半田は固まった。
「今、何て?」
「半田君、困ってるんでしょ?私で良いなら、別に構わないよ」
「あー本当に?本当に良いの?」
「うん」
「あ、ありがたや!」
半田は半泣きで藍香を拝む。
(私、神様仏様じゃないから!)
藍香は、慌てて止めて貰うのであった。
やっと、タイトルに近付きました!
しかし、話の運びとか、句読点とか難しい…。