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彼氏(仮)出来ました  作者: 卯月いちこ
3/16

ジェントルマンな半田君

遅くなりました。


「美味しかった~」


半田は磯辺焼きをペロリと平らげると、満足気に言った。


「そうでしょ。甘いあんみつの後は、甘じょっぱい磯辺焼きが良いんだよねって、早いね!食べるの!」


驚く藍香に


「あははは!ゆっくり食べて良いからね」


また笑う半田。


「こんなに良く笑う人とは思わなかったよ」


藍香は意外な一面に少し呆れて言うと、磯辺焼きを食べる。


「いや~俺もこんなに笑わされるとは。三嶋さん、もっと大人しい人かと思ってたよ」


と半田に返された。


「まぁ私、人見知りな所があるから、大人しく見られがちなんだよね」


藍香は磯辺焼きも食べ終わり、緑茶を飲んでしみじみ言うと


「そうなの!?」


半田に意外そうに言われ


「そうなの!今日は特別なの!何かこう~ほっとけなくて~」


強めに訂正する。しかし、そこからの言葉が上手く出ず、両手を何か(つか)むように(もだ)える藍香。


「やっぱり良い人だね、三嶋さんって。世話好きっていうか。でも、お陰で沢山笑って、何か気持ちが軽くなったよ」


半田は両手で頬杖をついて微笑むと、藍香にお礼を言った。

(さ、爽やかだな半田君)

藍香は少しどぎまぎしつつ


「こんなんで元気出たなら、良かった」


ほっとして笑顔で言うと、半田は少しぱちくりしてから、親指を立てた右手を差し出し


「元気出た」


と笑う。(さ、爽やかだなー!)藍香はのけぞった。

(半田君、イケメンじゃなくても十分魅力的だよね!それとも、幼馴染みらがハイスペックなのか!?)


「どうかした?」


不思議そうにしている半田に藍香は(かぶり)を振り


「ううん、何でもない。もう暗くなってきたね。そろそろ帰ろっか」


と言うと半田も外を見る。いつの間にか日も暮れて、商店会は外灯がついていた。


「本当だ。今日は色々ありがとうね」


藍香は自分が誘ったので、当然(おご)るつもりだったのだが、半田は話を聞いてもらったのにとんでもない、自分の方が奢ると言い出した。

こういうので、ゴタゴタするのは好まない。こういう時は…


「分かった!じゃんけんだ!勝った方が奢る!」

「えええっ!」


驚く半田を無視して構える藍香。


「いくよ!じゃんけん、ほいっ!」


藍香はチョキ。半田はグー。半田はとっさだが勝てたグーの(こぶし)を目の前に(かか)げ、ほっとする。


「あー!負けた!残念!」


チョキの手を(つか)み悔しがる藍香。


「突然じゃんけんとか、びっくりするから!本当!やめてよね!勝ったから良いけど!」


半田に抗議されると藍香は口を尖らせて


「話が早いかと思ってさ」


と悪びれず言う。そりゃそうかもだけどと呆れる半田は


「じゃっ、勝ったんで」


とっととレジで会計を済ませる。後ろでがっかりして(こうべ)を垂れた藍香は


「こんなはずでは…不本意ながら、ご馳走さまです」


恨めしげに半田を見上げつつ、一応お礼を言う。


「全く…何ていう顔してんの。ほら、暗いし送ってくよ」


半田はそう言うと扉を開けて、藍香を(そく)す。(ジェ、ジェントルマン!)感動しつつ出ると、外は少し肌寒い。

半田は当然のように、藍香の鞄も自転車のカゴに入れると、前輪の明かりを着けた。


「あ、ありがとう」


藍香は今度は素直にお礼を言う。

(何というスマートさ!そして男子に送ってもらうとか!)女の子扱いされて、ちょっと嬉しい。


「良いよ。さ、行こっか」


半田はニコッと笑って、車道側に自転車を引き、藍香の横に並び一緒に歩き出す。

藍香は笑顔からの、またまたジェントルな行動に顔が熱くなる。肌寒いはずが…顔を横に向けて両手であぶる。

(凄いな!こういう事さらりと出来るとか!何か恥ずかしいぞ!あー暗くて良かったー!)


「え?暑いの!?」


半田が驚いて覗き込む。


「違う違う!虫!虫が何かいて!もういったから!」


藍香は慌てて、あぶりから虫を払う真似をする。


「へぇ。何の虫だったんだろね」

「わっかんない。いゃーびっくりしたよ!」

「分かるよ!俺も夏に自転車に乗ってた時に、前から凄い勢いのカナブンが眼鏡に直撃して!本当、急に来るからね!」

「それは怖いね!」

「でしょー!カナブン固いから痛いし!」


他愛もない話になった。(良かった!上手く誤魔化せた)冷や汗ものの藍香である。

そんなこんなで商店街を抜けて、暫くすると我が家に着いた。玄関の灯りが付いている。


「本当に直ぐなんだね!」

「でしょ。送ってくれてありがとうね」

「ううん。…えっと」


半田は鞄を渡しながら、何か言いかける。

ん?と鞄を受け取り、藍香はその先を待つのだが


「いや、何でもない。本当、今日はありがとう。じゃあ、また明日」

「?うん。気を付けてね。また明日」


ばいばいと手を振り合うと、半田はさっと自転車に蹴って乗り、少しすると振り返り、また手を振って、藍香も手を振り返し、帰っていった。

(何だったんだろ?しかし、今日は我が人生史上、驚きの日だわ。男子を誘うという!やり慣れないことをしてしまった。何か…凄く…疲れた)


「ただいまー」


疲れつつも藍香は、ご機嫌な声で玄関を開け、帰宅するのであった。



やっと1日目が終わりました。

半田君スキル高すぎです。

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