打ち合わせ
藍香は、お風呂を済ませ自室に戻ると、ベットに腰掛けた。
(今日は半田君と会えなかったな。やっぱり、手伝いに来てもらえば良かったかなー。でも、早恵に何か言われそうだったし……)
藍香は、あーっと言うとベットに横になる。
スマホを手に取りL○NEを見ると、丁度、L○NEの電話が鳴った。
(は、半田君だ!)
藍香は飛び起きて、電話に出る。
「もしもし、どうしたの?」
「こんばんわ。今、電話してても大丈夫?」
「全然、大丈夫」
藍香は何故か正座をしていた。電話は初めてだからか緊張する。
「前に言ってたダブルデートなんだけど」
「あぁ、うん」
藍香は、さらに緊張する。
「急なんだけど、明後日の日曜はどうかな?」
「大丈夫だよ。どこに行くの?」
「水族館なんだけど」
「あー!良いね!私、水族館、大好きなんだ」
水族館は久しぶりだったので、藍香のテンションが上がる。
「そうなんだ。良かった」
半田も声が明るくなる。
(そっか、半田君も緊張してたんだ。そりゃそうだよね、お願いする立場だもんね)
これは少しでも気を楽にしてもらわねば。藍香は努めて明るく話そうと思った。
「お昼はどうする?お弁当、持ってくのかな?」
「全然、考えてなかった。裕也に聞いてみるよ」
「うん。久しぶりだから楽しみだな」
「俺も久しぶりだわ。あ、そういえばポップ何とかなった?」
「うん。ばっちし。あれで少しでも借りてくれると良いんだけど」
「あんまり来てくれないもんな。お勧めの指輪物語、読み始めたけど面白いよ。映画も見たくなった」
「でしょ!ハラハラドキドキするんだよね」
藍香は大好きな本を気に入って貰えて、益々テンションが上がる。
「はてしない物語も面白いよ!これは絶対ハードカバーで読んで欲しい!」
「文庫でもあったもんね」
「そうなんだけど、話の始まりはその本が関わってくるから、ハードカバーの方が臨場感があるんだよね」
「えー何それ!凄く気になる!」
そんな話を楽しくして、また連絡するねと言われて電話を切った。
(やっぱり、本の話が出来るって良いね)
藍香はご機嫌で鼻歌を歌いながら立ち上がると足が痺れて、よろけた。
「あたたたた……」
(しまった。崩すの忘れてた)
藍香は足を擦りながら苦笑いする。
(しかし、水族館は楽しみだけどダブルがなー不安だなー)
藍香は美鈴の事を思い出し憂鬱になった。
***
和樹は電話を切るとホッとして、ベットにダイブした。
(良かったー!三嶋さん快諾してくれて!)
「あ、お昼の事……」
和樹は裕也にL○NEで尋ねてみる。
『あー!そうそう。お弁当が良いかな。日曜はレストランも混むしね。あそこの水族館、館内も飲食OKだし広場もあるからね』
和樹は確かにと納得し、きちんと下調べしている裕也に感心した。
(何て極め細やかな奴なんだ)
後は、時間と待ち合わせの場所を決めた。
『今回は無理を言って悪かったな』
裕也が珍しく詫びてきた。
『本当だよ。これっきりにしてくれよ』
(というか、これっきりになるかも……)
『お前の彼女どんな子なんだ?』
和樹は三嶋を思い浮かべる。
『一見、大人しそうだけど可愛いくて面白い子だよ』
『そうなんだ。良さそうな子で良かったな!当日、会えるの楽しみにしてるよ。じゃあ、またな』
バイバイしている犬のスタンプ
『おう。またな』
またね~としている熊のスタンプ
裕也とのL○NEが終わると、早速、三嶋にお弁当になった事と時間と待ち合わせ場所をL○NEする。
すると、すぐに返信がきた。
『和樹君、苦手なおかずある?』
?のウサギのスタンプ
(何と!これは作ってくれるって事なのか!)
そういう経験が皆無だった和樹は、固まってしまった。
(いや、まてよ……そうだよな。彼女って体だからって事だよな)
一瞬、付き合ってる振りをしていたのを忘れて、上がった気持ちを落ち着かせた。
『無いよ。もしかして作ってくれるの?』
『彼女だからさ。そんなに上手じゃないけど作った方が良いかなと思って。』
(仏様?本当、優しすぎる!こんな無理なお願いしてるのに)
和樹は感激して胸あつだ。しかし、甘えすぎもいけない。
『ありがとう!でも、負担が大きいからさ、せめて、おにぎりは俺が握るよ。何の具が良い?』
『えー良いの?和樹君のおにぎりかー食べてみたい!お願いしようかな。具は定番の梅干し、鮭、ツナマヨかな』
『まかせて!』
OKの熊のスタンプ
何か遠足みたいで楽しくなってきた。
『おかずは何が良い?』
『やっぱり、唐揚げと甘い玉子焼きとウインナーかな』
『私も甘い玉子焼きが好きなんだよね!唐揚げ、ウインナーはマストだよね!』
いいねのウサギのスタンプ
『楽しみにしてるね』
『あんまり期待はしないでね!でも、何か遠足みたいで楽しいね』
『何それ!俺もそう思った!』
和樹は驚いた。こういうのを馬が合うと言うのか。
『気が合うね!私も、おにぎり楽しみにしてる』
『頑張って三角に握るよ』
『丸でも良いよ』
笑うウサギのスタンプ
『ありがとう』
涙を流す熊のスタンプ
『笑える』
笑い転げるウサギのスタンプ
楽しかったが、もう11時だ。
『じゃあ、日曜よろしくお願いします!』
おやすみの熊のスタンプ
『こちらこそ』
了解のウサギのスタンプ
おやすみのウサギのスタンプ
やり取りが終わり、和樹はスマホを充電器に繋ぐと、ベットに寝転ぶ。
(おにぎりって握った事無いけど……本当に丸になるかも)
何だか不安になってきた和樹は、明日はおにぎりの握り方を練習しようと決めたのであった。
次回、やっとデートです。