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彼氏(仮)出来ました  作者: 卯月いちこ
11/16

告白

「で?半田君は三嶋さんと付き合ってるの?」


人気のない裏庭で、椎名が仁王立ちで聞いてきた。


「その前に……椎名君は三嶋さんの事、好きなの?」


和樹は眼鏡を中指で上げると、固い表情で聞いた。


「な、何だよ!質問を質問で返すな!」


椎名がムッとして言うと


「大事な事なんだよ」


和樹が真剣な顔つきで言った。椎名は(うめ)きながら目をギュッと(つむ)る。

言いたく無いのは分かるが、そこがはっきりしないと、とてもじゃないけど打ち明けられない。

少し待つと、椎名はギロリと和樹を睨み


「あー!もう、分かった言うよ!そうだよ!」


と、やけくそ気味に言い放つと顔が真っ赤になった。


「そうか、分かった。ごめんな、言いにくい事、言わせて」

「本当だよ!何でお前にこんな事……で、言ったぞ。それで、どうなんだ?」

「俺と三嶋さんは、付き合ってるー」


椎名が絶望的な顔になる。


「ー振りをしている」

「へ?」

「だから、正式には付き合ってはいない」


椎名は眉間に人差し指を当てると(うな)った。


「えーと、何それ?意味が分からないんだけど?」

「まぁ、そうだよね。説明しても良いけど、絶対に誰にも言わないで欲しいんだ」

「……分かった。絶対、誰にも言わない」

「約束だぞ。じゃあ、どういう事か説明するとー」


和樹は、事の始まりからの経緯を話した。

椎名は唖然として聞いていた。


「ーと、いう訳なんだ。三嶋さんは優しいから協力してくれてるんだよ」

「確かに、三嶋さんは優しいけど……」

「でも、椎名君が告白して両想いになるなら()めるから」

「当たり前だろ」


椎名は、むっとして睨んだ。

和樹は心底、申し訳ない気持ちになった。自分が変な事を提案しなければ、普通に椎名が告白して三嶋と付き合う、というシンプルな形であったのに。

完璧、おじゃま虫ではないか。


「何か俺のせいで、ごめんな」


和樹は落ち込み、椎名に謝った。


「いや、何て言うか、タイミングが悪すぎだろ」


椎名は頭を抱えた。


「ただ、その……今度、ダブルデートする事になってて、出来れば、それ以降に告白して貰えると助かる!」


和樹は言いにくい事だったが、頭を下げてお願いした。


「えぇっ!何だよ!ダブルデート!?それまで生殺しかよ」


椎名は、また頭を抱えた。


「本当に、ごめん!」


和樹は頭を下げる。

椎名は大きく溜め息をつくと


「分かった。半田君も三嶋さんに、この事を言わないでくれよ」


と、頼んできた。


「勿論」


和樹は当然だと頷くと時計を見る。昼休みが終わる頃だった。


「戻ろうか」

「あぁ、話してくれて、ありがとな」


椎名にお礼を言われて、和樹は中身も良い奴だなと

思った。(そりゃ、モテるはずだ)

それに、好きになったのが三嶋さんとかー


「椎名君は見る目あるね」

「えっ?」


思わずこぼれ落ちた和樹の声は、小さくて聞こえなかったようだ。


「何でもない。行こっか」


椎名は怪訝な顔をしていたが、和樹は足早に先を行く。自分だけが見つけた宝物を、実は誰かも見つけていたような何とも言えない気持ちだった。



2人が教室に戻ると、皆が急に静になり視線が集まる。和樹は戸惑ったが、もう次の授業が始まるので、無視して急いで席についた。椎名は誰かに何をしていたのか聞かれていたが、適当にはぐらかし席についた。

(とにかく、後は野となれ山となれだな)

和樹は、もう開き直るしかなかった。


「生きて帰ってこれたな」


浩次が振り返りニヤリと笑った。


「首の皮一枚な」


気楽そうな浩次が羨ましい。和樹は溜め息をついた。



放課後になり、和樹は帰り支度をする。


「今日は図書委員、無いんだ」


浩次は剣道部で、他のクラスで同じ部の友達が迎えに来ていた。


「うん。当番じゃないから」

「そっか。じゃあ、また明日」

「おう。またな」


2人を見送り、さて帰ろうとした時


「カズ!良かった、まだいた」


裕也が教室に入ってきた。女子達は榊君!キャーと歓声を上げている。

恐ろしいほどのモテ男だ。


「おーどうした?」

「どうしたじゃないだろ、打ち合わせしたくてさ。部活前に寄ったんだよ」

「成る程……」


和樹は、ハッとして椎名が居るか確認した。もう部活に行ったらしく机に鞄も無かった。ホッとするものの、クラスの女子達が様子を伺っていたので、和樹は裕也を廊下に連れ出し、聞いた。


「それで、いつにするんだ?」

「早い方が良いだろ?日曜で良いか?」

「分かった。聞いてみるよ。で、何処に行くんだ?」

「水族館が良いかなと思うんだけど、どうかな?」

「あー良いんじゃないか」

「だろ?楽しみだな!確認したら、また連絡してくれよ。じゃあな」


裕也は、ご機嫌で和樹の肩をバシバシ叩くと、颯爽と去っていった。


「浮かれてんなぁ」


残された和樹は、叩かれた肩を擦り呟いた。

(三嶋さんも多分、当番じゃないよな)

和樹は教室に戻るとスマホを取り出し

『今日は当番?』

と、確認してみる。

すぐに返信がきた。


『当番じゃなかったんだけど、先生にポップ頼まれちゃって』

『そっか、手伝おうか?』

『ありがとう!でも、大丈夫!もう1人捕まってるから』

グーポーズのウサギのスタンプ


和樹は思わず吹き出す。

(本当、面白いわ三嶋さん)


『分かった。じゃあ、今日は先に帰るね。頑張ってね!』

和樹は、がんばれと旗を振る熊のスタンプを押して少しホッとする。2人で帰るのを、また椎名に見られるのもなと思ったからだ。


『ありがとう』

ウサギがまたねと手を振るスタンプ


(こんなやり取りも、もう出来なくなるのかな)

何だか寂しくなった。

それに、小腹も空いた。

(帰りに商店街のお肉屋さんでコロッケ買って食べるかな。ダブルデートの事は今晩、電話しよう)


和樹は久しぶりに独りで帰った。




デートもまだなのに、終わりそうな雰囲気。

(´□`; 三 ;´□`)

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