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4【ホンノー自治区へ】

4話目です。

毎週月曜日、木曜日の7時と16時に更新予定です。

よろしくお願いいたします。


<<マサル視点>>

コフブ領で手配してもらった案内人と護衛2名とで、ホンノー自治区に向かった。


ホンノー自治区は、コフブ領内でも最西にあり、カクガーの森に面している。

ホンノー自治区は、結界に覆われている為、案内人がいなければ、入り口を見つけることも、難しいだろう。


「マサル様、こちらがホンノー自治区の入り口になります。

ここからは、許可された者しか入れません。」

「案内ありがとうございます。ここからは、1人で大丈夫です。」

俺は、案内人と護衛に礼を言って、結界の中に入っていった。


結界の中は白い光が溢れており、しばらく歩くと森が広がってきた。

結界を抜けて森に入ったすぐの所に、検問所と思しき建物があり、その前に、ライヤー殿が待っていた。


「ライヤー殿、お待たせいたしました。」

「なんの、マサル殿、よくお越し下された。

早速ですが、ホンノー自治区の首長である、アベルの所にご案内いたします。」


検問所から街道をしばらく歩くと町が見えてきた。

町に入ってみると、一応活気はあるが、ところどころに武装した兵士が立っており、戦時中であることを窺わせる。

この町がホンノー自治区のほぼ全てになるらしい。

人口約600人、その内ですぐに戦力として使えるのは、150人程だとライヤー殿から聞いた。

5分くらい歩いたところで、一際大きな建物に到着した。

この建物が庁舎らしい。

ライヤー殿の先導で中を進むと首長室があった。


「ライヤーです。アベル首長、キンコー王国よりの先見隊としてマサル殿をお連れしました。」


「ライヤーご苦労だった。マサル殿、遠路ありがとうございます。

わたしは、ホンノー自治区の首長をしておりますアベルと申します。」

「キンコー王国ネクター王より、この度のホンノー自治区における災難に協力するよう、仰せつかりましたマサルです。」


アベル首長との挨拶を終え、早速現状についてヒヤリングを行う。

アベル首長やライヤー殿の話しを聞きながら、タブレットを確認し、現在把握できている内容とタブレットで確認した実際の状況を比較しながら現状についての同期をとっていく。

アベル首長は、ほぼ正確に状況を把握しており、現状持ちうる戦力では、最適と思われる配備をしていることが分かった。

これまでの会談でアベル首長の統率力や戦力性の高さが見て取れる。


「そうすると、現状で抜本的にかけているところが2点ありますね。

1点目は、防壁。結界はありますが、既に敵は結界を通過する術を持っているため、防壁としては問題があります。

また敵の規模や味方の人数を考えると広範囲に回り込まれ複数個所を一度に責められると防ぐことは難しいでしょう。

これについては、結界の前に幅10メートル、深さ50メートルの堀を張り巡らせ、その内側に幅10メートル高さ10メートルの岩壁を作ります。

それで、敵の侵入を防ぐと共に壁の上から攻撃を加えられる体制を作りましょう。


2点目ですが、やはり味方の兵数と兵器の威力ですね。兵数に関しては、ゴーレムで対応しましょう。

兵器については、攻撃用の魔道具を事前に準備し、壁の上の兵に持たせることにしましょう。


いかがでしょうか?」


「マサル殿、本当にそれが実現できれば非常に助かるが、それらを構築するだけの時間も人数も足りないのが実情だ。」

「私が何とかします。とりあえず、今から結界の周りを調査させて下さい。」


「分かった、わたしが同行しよう。」


俺は、アベル首長の同行の元、結界の外20メートル地点を一周し、棒で大きな円を描くように線を引いた。

円の周囲は約5キロメートル程度だろうか。

壁や堀の作成地点に人や障害物が無いことを確認し、俺は土魔法を発動する。


「土魔法、土砂移動。」


俺のオリジナル魔法「土砂移動」で、線を引いたところから10メートル内側までの土50メートルの土を浮かせ、更に今できた堀の内側10メートルの位置に移動させる。

余った土は、積み上げた土壁の上に乗せた。


「土魔法、圧縮。」


出来た土壁の周りに強力な風魔法で枠を作り、土壁を上から圧縮する。これにより、高さ10メートル程度の強固な岩盤のような壁が出来上がった。

岩壁には、約5度程度の返しを付け、登れないように工夫している。


約1時間程の出来事だが、アベル首長は目を大きく開き驚いていた。

2人で壁の周囲を確認して回り問題の無いことを確認した。


「マサル殿、いったいあなたは………」

「わたしが何者かについては今は詳しくは言えません。ただ、アベル首長の味方であることは間違いありませんので、安心してください。」


俺は、アベル首長と相談して入り口になる門の作成と堀を渡る橋の構築に取り掛かった。

先程同様、土砂移動で、壁に門の分だけ穴を空け、その土砂を橋にして堀に掛けた。


「アベル首長、土砂移動と圧縮の機能を持った魔道具を用意しておきました。

ここに魔力を通していただければ、橋は、門の穴を塞ぐように移動しますので、最悪立てこもる必要があった場合にお使い下さい。

後は、内側から城壁に上るための階段を数ヶ所用意しておきます。

これで、壁の上からの攻撃ができるでしょう。

お話しを伺っている限りでは、敵の魔道具の射程距離は約30メートルですので、相手の攻撃は城壁の上までは届かないと思います。」


「マサル殿、なんて言ってよいかわからないが、非常に助かった。

これ程の防壁があれば、少人数とはいえ、充分敵の侵攻に対応できるだろう。」


「いえ、まだです。防壁の上から敵をせん滅するための魔道具が必要です。

対地上と対空の2種類が必要になるでしょう。今から用意します。」


俺は、空間魔法で魔道具の材料になる魔石と杖、それと魔力を溜めておける特殊な魔石を200セット取り出した。

これは事前にキンコー王国内の備蓄品から預かってきたものだ。


次に雷魔法を使って「スタンガン」の電気を飛ばすようなイメージの対地上戦用の魔道具を150セット完成させる。

対空戦用としては、氷魔法を使用した魔道具を50セット用意した。


対空戦に氷魔法を使用したのには訳がある。

1つ目は、対空戦に出てくる竜族は炎の属性があるため、火に強いことがあげられる。火に対しては氷の方が有効度が高い。

2つ目は、もし的を外したとしても、固まった氷はそのまま地上に落ちるので、地上の敵に対しても効果がある為である。


以上200セットの魔道具を壁の上に設置し、兵の配置を決めていった。


<<アベル視点>>


ライヤーがキンコー王国の使者を連れてきた。

キンコー王国とは、長年にわたり良好な関係を築いてきたとはいえ、いつ敵対関係になるやも知れん。

最終的には、ホンノー自治区もキンコー王国コフブ領の一部として組み込まれた方が庶民にとっては幸福なのだろうが、その時まで対等な関係を保っていないと不当な扱いを受ける恐れがある。

出来れば、今回の使者とうまくネゴし、対等な関係を維持したまま支援を受けられるように持っていきたい。


「ライヤーです。アベル首長、キンコー王国よりの先見隊としてマサル殿をお連れしました。」

マサル?聞いたことの無い名だ。コフブ伯爵が来るものだと思っていたが。


ライヤーと共に執務室に入ってきたのは20歳を少し過ぎたくらいの若者であった。

キンコー王国はホンノー自治区を見限ったか?と一瞬よぎった。


しかし、マサル殿と会談していく中で、その懸念は払しょくされていった。

こちらの実情をよく知っており、かつこちらの問題点や敵の状況も非常に正確に把握している。

時々うつむきながら考えるそぶりをするが、それは問題ではない。


2時間程の会談で、何が不足し、何が必要か、どう対処すればよいかを導き出せた。

実際に、その導き出した答えは絵空事のようなものではあるが、確かにそれが実現できれば想定する限りで最上の策となる。


すると、マサル殿が視察に行きたいという。

先程ついたばかりで、2時間の会談を行ったばかりだ。

疲れもあるだろうし、今日はこのまま歓迎会を、と思っていたのだが。


「大丈夫です。アベル首長同行願えますか?」


わたしに否応もない。2人で結界の周囲を歩きながら、会談で導き出した壁と堀を作る場所を決めていく。

どこまでできるのかわからないが、とりあえずやれるところまでやろうと思いながら。

マサル殿は歩きながら線を引いている。その線が1週繋がったところで、マサル殿が「では、始めます。」と言って呪文を唱えた。


すると、どういうことだろう。線に沿って堀の予定地の土が盛り上がったと思えば、壁の予定地辺りにどんどん移動して積みあがっていく。

強い風の幕が壁予定地の周りに吹き荒れ、積みあがった土を高く整形している。

「土魔法、圧縮」

マサル殿の呪文で、積みあがった土が圧縮され、風魔法が解除されると強固な岩壁が出来上がっていた。


わずか1時間ほどで、先程まで絵空事だと思っていた事が現実となった。


こ奴はいったい。こんな人間がいるなんて。もし敵になったらどうなる。

「マサル殿、いったいあなたは………」

「わたしが何者かについては今は詳しくは言えません。ただ、アベル首長の味方であることは間違いありませんので、安心してください。」

さわやかな笑顔は、わたしの危惧を和らげてくれる。

まだ、安心はできないが、今は、彼に頼るしかないと思う。


その後、マサル殿は、岩壁内に通じる門や橋の作成、攻撃用の魔道具の作成までを一気にやってしまった。


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