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Bent Over ~落ちた男と拾った女~

この世界は退屈で仕方がないわ。

何をしても私は有終の美を飾ってしまうから。


努力もいらない、すべては才能によって決められレールに乗ってただひたすらに決められた人生を過ごすだけ。


「はぁ...つまらないわ....」


橋の上でため息をついていたら一人の男が目に入った。

すごく筋肉質で恰幅の良い男性だった。


「そこのあなた、こっちにいらっしゃい。」

「ん?」


意外と美青年だけど、顔も体も傷だらけね...


「見当違いだったみた...」


こいつ、私が言い切る前に!


「ちょっと待ちなさい!」

「なぜだ?」


かぁ~もうこいつほんとムカつく!


「ちょっと、私はエカレットのサードラよ、この名を聞いてもその態度を続けるつもり?」

「エシャロットか?俺は食ったことがない。」


何をこいつ、一から一まで本当にムカつく!


「あなた、もしかして奴隷?でしたら私のことを知らなくても仕方がないことね。」

「そうか...」


この人何を言っても一方通行みたいね...ならば!


「ペインスパイク」

「え、詠唱魔法!?」


私は理解した、この男は奴隷に間違いない。それかテンプル騎士団から今も逃げ続けている愚民の一人だと。


そして、私が魔法を放つよりも早く反応して自衛しつつ反撃してきた。

「でも、甘いわ...ね?」


もう目を凝らさないと見えない距離まで男は走って行っていた。

「なんなのよあいつ!」


そんな出会いは私の日常を小さく狂わせた

私自身なぜだろうという気持ちでたくさんだったのだけど、またあの男に会っていた。


あくる日にあの橋に行ったら彼はまた橋下に同じ場所から私に背を向けて歩いて行った。


「ねえ、あなたなんで捕まってないのよ?」

「なんだ?」


相変わらずな回答にもだんだん慣れてきた。


「ちょっと来なさいよ、話したいの。」


前は去っていったこいつが、あっけなく私のもとへと向かってきて驚いた。


「話とはなんだ?」

「あなた、昨日殺しにかかった私の元にのこのこやってきたのよ?」

「話があると聞いた、だから来た。だがその答えは特にない。」


その話を皮切りに他愛のない話をついしてしまった。

私の出生、今の暮らしなんてことを出会って二日目のこの男に話していた


「そうか、俺にはよくわからん。」

「そ、あなたは自由に生きれていいわね。縛られてるとすごく大変なのよ。決められたことしかやってはいけない、それ以外の一切は認められないの。」


ちょっとムキになっていた...自分でもちょっとびっくりしていた


「俺も昔は縛られていた。永遠に意味のない作業を繰り返し、逆らえば罰を与えられ、そして最後には衰弱死した。」

「何よそれ、死んじゃったら今生きているわけがないじゃない。」

「選べばいい、死んで全てを投げ出すか、何かを犠牲に甦るか。」


男が言うことを素直に聞けば、死ぬとこいつはいつも選択を迫られるらしい。

甦ることと引き換えに、自身になにかのペナルティをかせる、それでこの男は感情を大幅に失って、さらには集中していない状態だと嫌なことがフラッシュバックするらしい


「ふふ、面白い冗談ね。あなたがそんな冗談を言えるなんて思ってもみなかったわ。」

「信じなくていい。だが、こんな特典はあまりうれしくなかった。」


耳慣れない言葉もあったけど、そんなことはどうでもよかった。

ただ、いつもの臣下との会話よりもいっそう楽しかった、ただそれだけがすごく私にとっては嬉しかった


しばらくそんな日々が続いて、知らない間に私の日課になっていった。

でも、そんな日々はあまり長く続かなかった。


私の失脚を狙って、他の魔導士たちが一斉にエカレットに攻め込んできた。

木々は燃え、石垣は崩れ、私がいつも通っていたあの橋も陥落していた......


「ここ、まで...ね」


あっけなかった、退屈な日々が嫌になって、自由が欲しいと思って、ほんの少しも与えられないことが分かって、そんなことわかってたはずなのに


あの男にまた会いあい...そう思ってた...


「エカレットの頭をとらえたぞ!ギロチンだ!ギロチンを持ってこい!」


あぁ、慰み者にされるぐらいならこれで良かったのかな。

でも、ちょっとだけ寂しいな―――


「何をしている、トレーニングか?」


確かに聞こえた、あの男の声が。か細くて、聞き取りづらい声だけど今日はやけによく聞こえた。


「おいあんた、何者だ!?まさかエカレットの手先か!!」

「ペインスパイク」


私にやったのと同じ技だ、あの技は理解に乏しいものが油断すると...


「あぎゃっ!?!??!」


連中が一斉にあの男に攻撃するものだから、体中に痛みが跳ね返り、まるでとげのようなものが体内から体外へ露出していた。


そう、攻撃を行ったものに本来与えられる痛みを与える非常に惨たらしい魔法...


「助けに、来て...くれた...の?」

「いや、いつもここには来ている。」


マナも感じられない、体中の感覚が徐々になくなっていくのがわかる...


「ごめん...な...さいね...今日は...おしゃべり...でき...なさ...そうなの。」

「残念だ。楽しかった。」


あぁ、彼はそうだった、感情が...


「ま...た、おはな...し...しま...しょう。」

「ベンドオーバー。お前には不釣り合いなトレーニングだな。」


こんな時まで何を言ってるのかしらこの人は...

でも、そんな彼だから話してて楽しかったのかな...


「そんな、顔をしないでくれ。」


そっか...わかった...この人感情が無いわけじゃないんだ


「そっか...あなたは...そうやって....なみだ...流せるのね」


出会えてよかった、最後はレールの外でしかもかなりの悪路だったけど、

この人がこんな顔をしてくれることが何よりうれしかった。


退屈だった時間が嘘だったみたい――――

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