【第五話】女の子は案外怖いもの
受験生なのでご了承を(泣)
あぁ、何か入りにくいなぁ
今、俺がいるのは我が家の玄関前。
前までは何の気兼ねなく入れてたんだけどな。やっぱり性別が変わったからかなぁ。まぁ、そうなんだろうけど。
何て言われるか、どんな目で見られるか、そこから生まれるのは若干の恐怖。例えて言うなら親の前でエロくないと思っていた健全なアニメを見ていた時に、いきなりエロいシーンが流れたあの感覚に何か似ている。そのシーンが流れているときは親とまともに目を合わせられない。
どちらにせよ、約五年も過ごした家族と言えどやっぱり初めてのことは戸惑ってしまう。
「どうしたんだい、入らないのか?」
「いや、入りますけどぉ」
そうやって強がりドアを開ける。
そこには誰もいなかった。出迎えてくれると期待してたんだけどなぁ。ま、今は忙しそうだし仕方がないか。
「ただいまぁ」そう言いながら俺はリビングに入った。
そこにあった光景は大量の武器が机におかれ、パソコンの前に集まるみんなの姿だった。
何か大変そうだな。一体この家を出ていた数日間の間に何があったのだろうか。なんだか空気が重い。
みんなは俺を見て目を丸くする。
「「「「おかえ......り......?」」」」
どうだ、跡形もないだろ?
「え、誰ですか?」
五月が目を細める。
「いや、俺だよ、俺」
「何ですか、俺だ俺だ詐欺ですか?」
「いや、違うんですけど」
どうしたんだ五月。鈍感すぎるぞ。いつもの五月ならもう察していていいはずなんだけど。あ、もしかして気づいているけど信じたくない的なあれか?
「えっと、これ銀君だ」
あまりにも進まない会話にあきれた拓美さんが割ってはいる。
「「「「えーーーーー!!!!」」」」
一瞬にして空気が変わった。先程までやや針積めていた空気が緩まる。
「え、ホントに銀君なの?」
目を丸くしたままだぞ、紅葉。
「うん、そうだ。銀だ」
「確かに女の子になるとは聞いていたけどここまでとは」
何が不満なのか桜花さんは頭を抱える。
「「かわいすぎるーーー!!!」」
女性陣が声を揃えて叫ぶ。男性陣はただ黙ってこっちを見ている。
「あ、ありがと」
え? そんなにか。個人的には可愛いと思ったが回りから見ても可愛いいなんて、さすが手術。
「あ、そう言えば武器が届いていたと言ったね。ちなみにこの机の上にあるのは他の人のだから、興味があったら各自に聞いてね」
拓美さんは両手に持っていたどこから持ってきたかわからないケースをしたにおく。
「えっと、まずは銃からね」
ゆっくりとケースが開けられる。徐々になかのライフルらしい黒いフォルムが露になる。心臓が高鳴る。楽しみだ。
「まずはこちら、正式名称[SVD-mortal-]」
「おぉーー!」
思わず歓喜の声が漏れてしまう。
「後でゆっくりと見ればいいよ。続いては近距離武器」
ケースが開けられる。中から刀に似た武器が徐々に露になる。再び心臓が大きく高鳴る。
「はい、こちら正式名[称超電力型斬刀mortal-Mk zero]銀君の言ったように完全再現済み」
「おぉーーーーー!!!!!」
さらに歓喜の声が漏れてしまう。あのとき夢見た武器がすべて完璧に再現されている。ここまでテンンションが上がったのは何年前か、何か色々ありすぎたな。
じっくりと見たいが、楽しみだったことがすぎどっと疲れた。お風呂にも入っていないだろうし。
「ちょっと、疲れたしお風呂入って寝ますわ」
そう言ってみんなに背を向けたその時だった。
何者かにがっしりと肩をつかまれる。何かただ事ではないオーラを背に感じる。
恐る恐る俺は後ろを振り替える。
そこには笑いながらこちらを見る女性陣の姿があった。
「駄目でしょ、女の子がそんなんじゃ」
左肩をつかみながら桜花はそう言った。
「そうよ、女の子って言う自覚を持ちなさい」
右肩をつかみながら紅葉はそう言った。
「そうですよ銀さん、ちゃんと女の子がどんなことをするか知らないと」
タオル等をもって小春がそう言った。
待って超怖い。こんな恐怖な体験ここ最近なかったぞ。
その恐怖に耐えきれず目に涙が滲む。俺が放てる言葉は一言だけだった。
「すいませぇぇぇんでしたぁぁぁぁ!!!!」