【第一話】希望の子たち
二時間後と言ったもののガッツリはずしていくスタイル。
拓美さんとの出会いからはや五年が経った。
拾われた俺は彼に一人の子供として育ててもらった。ただ、一つおかしいところは彼がマフィアの幹部に位置していると言うところ。だが、正直まともな仕事内容なんて聞いてはいないし、聞く勇気すらなかった俺は結果、この疑問を心に止めたまま五年という歳月を過ごしてきた。
なんにせよ愛情をしっかり込められ育ったことに間違いはなく俺は今、中学三年生。世間で言うところの受験生と言うやつだ。だが、志望校がまともに決まらずただただ、決まる日が来たときのために勉強するだけだった。
そして今も現在進行形で勉強中。
「ねぇ、銀君。ここの問題わからないんだけど教えて」
横から声が聞こえてくる。
彼女は僕と同じく拓美さんに拾われた育てられた。夏綺紅葉だ。歳は俺と同じ中三なので15歳だ。赤茶色のセミロングの髪の華奢な女の子。以外にも俺と背が同じ。いや、俺が低いだけなのか?
彼女は俺より先に拓美さんに拾われたため、遅く来た俺にお姉さんと呼びなさいと必要以上に言ってくる。だが、実際のところ、俺より誕生日が遅く個人的にはなぜか呼びにくい状況が続いている。まるでジャニーズの先輩後輩のような関係だった。
まだ、この家には血のつながらない家族が4人いる。
年上から言うとまず、高校一年生みんなの兄的存在真っ黒な髪が特徴の重原五月。次は、みんなの姉的存在高一白いロングが特徴の巫城桜花その次はみんなの妹的存在中ニちょっとくせがかった金髪のショート皐月原小春。最後はみんなの弟的キャラ中ニ海のように青い髪が特徴の青嗣蓮。あとは、俺と紅葉は真ん中に位置する。ちなみに俺は白髪だ。
これ全員が血の繋がる赤の他人。共通点と言えば何らかの理由で親と離れ離れたということ、そして拓美さんに拾われたということだけ。
でも、みんな仲良く一つ屋根の下で暮らす家族。例えそこにどんな理由が生じていようが何ら代わりはない。
ただいま全員リビングで勉強の最中。
「ねぇ、銀君?」
「あ、ごめんごめんえっと、どこだっけ?」
「えっと、ここ」
紅葉が指を指した問題は理科の科学の問題。
理科は俺の得意教科の一つ。当然の様に解き教えて上げた。
「さっすがぁ、頼れる弟君」
紅葉はニカッと笑い、俺の頭を軽く撫でる。
この光景を見れば、何ら変わりのない普通の姉弟に見えるのだろうなとつくづく思った。
コップを掴み、冷えた水を一気に飲み干す。再び問題と向き合い解くの作業というなの勉強を始めようとしたその時。
ガチャ。玄関の扉が開く。それと共に「ただいまーー」と声が聞こえたと同時に俺を含めた全員「「「おかえりー」」」と返す。
いつもの当たり前のルーティーン。だが、拓美さんの顔はどこか雲っていた。いつもなら、どんなことがあっても不謹慎に笑っているのに。これは、ただ事ではない。
「すまない! みんな。頼みたい事がある」
拓美さんは頭を深々と下げる。
「えっと...... どうしたんですか?」
先程まで黙々と課題をこなしていた五月が、とても心配そうな表情をしながら聞き返す。
わかるぞ、五月。その気持ち。無茶苦茶珍しいもんな。恐らくこの場にいるみんなが同じ気持ちだ。
「このまま行くと、少なくとも一年以内に第三次世界大戦が勃発する」
ん?
一瞬にして空気が変わる。驚きと言うよりは状況が飲み込めずフリーズしていると言う状況。第三次世界大戦が起こるとかマフィアが言うと無駄に現実的過ぎて疑うことすら出来なかった。
それに対して拓美さんはあれからずっと頭を下げ続けている。
その状況に耐えられなかった俺はどうにか状況を変えようとした。
「そんなの拓美さんらしくないです。いつも通りに笑って下さい」
拓美さんはゆっくりと頭おあげる。
そして満面の笑みで
「このまま行くと、少なくとも一年以内に第三次世界大戦が勃発する!」
「いや、やっぱりダメだわ」
さすがに不謹慎にもほどがありすぎた。全くこの人には加減と言うものがない。頼むからもう少し大人になって欲しいものだ。子供の俺が言うのもあれだが......。
再び辺りは静寂に包まれる。何とも言えない空気が俺にのし掛かる。
「プッ、あははは」
さっきまで黙っていた桜花が笑い出す。
みんな、なにごと! と桜花の方へ顔を向ける。
「やっぱり、いつもの拓美さんがいいわ」
「そうですね」
ようやく話が飲み込めたであろう小春が話に加わる。
「そうですよ」
それに続けて紅葉も話に加わる。
確かにそうだ。何を言おうといつものままで良いのかも知れない。普通ほどいいものは無いと五年前に実感したからよくわかる。
「えっと、第三次世界大戦が始まるかもしれないってはなしだったけ?」
「あぁ、そうだ」
さすがに桜花みんなの話をうまくまとめて、次の話に繋げている。全くこの力を俺にも分けてほしいものだ。
「まぁ、この雰囲気だと、拓美さんには何か考えがあるんでしょう」
「えへ、バレてた?」
え? もうここまで来ると桜花さんの話す技術は尊敬に値する。前に聞いた時には、相手の発言や言動を見て判断するっていっていたっけ? 全く無理な話だった。
「率直に僕のかわいい子供たちに頼みたい。戦争を防いでくれ」
「と、言いますと」
聞いているだけじゃあれなので俺も話に積極的に加わる
「君たちに戦争を阻止して欲しい。様々方法を使って。人を殺し、何より君たちの命が危険にさらされる。僕の教育方針は時には優しく、時には厳しくだ。だが、これはとても子供に任せるようなことでは無い。こちらの都合で君たちを崖から落とすようになってしまった。もちろん、こちら側も全面的にバックアップをするつもりだ。でも、君たちしか居ないんだ、条件を唯一クリアした君たちしか、これが最終手段なんだ......」
拓美さんはさらに深々と頭を下げる。
「いいんじゃない」
桜花が許可をする。
「いいのか、人を殺すんだぞ。何よりお前たちの命が危険に......」
「いいんじゃない。だって私たちの命を救ってくれたのは拓美さんですよ。まだ恩を返せていません。ね、みんな?」
「拓美さん。俺もその考えには同感です。親孝行させていただきます」
俺はカッコつけていってみたが、他は軽く頷きそれで終わった。なんか、さっきから俺がかわいそうなのだが。
「本当に、いいんだな」
「「「はい!」」」
拓美さんは頬を上げ不気味な笑みを浮かべた。
「いい心がけだ。それでこそ私の子供達だ。これから、プチ作戦会議を始める」
もうちょっとましなネーミングは無かったのか、と軽く突っ込むがこんなところでいちいち突っ込んでいては、今後切りがないと思い突っ込むのをやめる。
「えっと、話が終わったから入って来てくれ」
ん? 誰かいたのか。
すると一人の少女が中に入って来る。
黒く長い髪を揺らしながら制服をきた少女は俺たちの前に立つ。
「紹介します。この子はうちの幹部のうちの一人の娘秋水紅だ。これからみんなの仲間の一人として、君たちを支えてくれるよ」
少女は一度全体を見渡し微笑む。
「先程、拓美さんからご紹介預かった秋水紅です。よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします」
五月が丁寧に返事をし、一礼する。
「さぁて、全員揃ったところで始めますか。世界を救う希望の子たちによるプチ会議を」
次も恐らく二時間後。いきなりキャラがたくさん出たので簡単にご紹介。
名前:犬神銀
髪:白のちょいなが
説明
この作品の主人公。中学三年生。性格はどこにでもいる普通の男の子で、人一倍仲間思いなのが特徴。ちなみにあんパンが大好物。
名前:夏綺紅葉
髪:赤茶色のセミロング
説明
家族思いのいい女の子。中学三年生。そこそこ女子力が高く、学校では案外モテるらしい。お姉ちゃんと呼ばれることに謎の快感を覚えている。
名前:重原五月
髪:黒
説明
みんなの兄的存在。高校一年生の男の子。頭がよく、そこそこ運動のできる、よくモテるタイプの人種。無駄知識も豊富でそれが役にたったりたたなかったり。
名前:巫城桜花
髪:白のロング
説明
五月と同じ高校一年生。みんなの姉的存在。話すことがうまく、自然と周りを明るくさせることができる。ただ、一度話し出すと話が終わらないので、そこが難点。
名前:皐月原小春
髪:金のショート
説明みんなの妹的存在の中学二年生の女の子。基本的に敬語で、礼儀正しい。家族の中でも唯一紅葉のことをお姉ちゃんと呼び、大体の呼んだ場合にはモフられる。
名前:青嗣蓮
髪:青
説明
みんなの弟的存在の中二の男の子。家にいるほとんどの時間をパソコンの前で過ごし、家の中ではパソコンの主などと言ったあだ名がついたほどの。そこで培った技術は高く難なくハッキングをこなす。