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【第4話 念話】

【第4話 念話】--------------------


ラノム王国の城から魔王城へと帰還した3人が謁見室への扉を開けて中に入ると、玉座の横にいたデザミーとザールが片膝をついて帰還を歓迎する言葉を述べる。


「お帰りなさいませ、魔王様、奥様!」

「お帰りなさいませ、魔王様、ジュリア様!」


「いや、ジュリアはいないんだが。」

「なんと!これは大変失礼いたしました。」

「申し訳ございません。全てうまく行ったと念話が入りましたので早とちりしてしまいました。」


「やっぱりおまえ達も一枚かんでいたのか、やれやれ。でも、本当にありがとう。」

「配下の者が魔王様のために動くのは当たり前のことでございます。」

「お礼の言葉など、もったいなくて大変恐縮いたします。」


「ところで、私はさっき決めたことがあるので四天王のみんなに今伝えておくよ。」

「はっ!」

「何でしょか。」

「念話ではなく、直接私の口から伝えたいが、大きな声は出したくないのでもっとこっちに寄ってくれ。もっと、もっとだ。」


<ゴン、ゴン、ゴン、ゴィ~ン>


拳骨を入れられて頭を両手で押さえる四天王達。最後の大きめなのは、当然ミルノだ。


「私は、ラノム王国のみんなが好きだ。フィレン王国のみんなも、ミルマ公国のみんなも好きだ。これからずっと、みんなを守りたいと思う。」

「そして、一番好きなのはやっぱりジュリア。これからも、彼女とともに生きたいと思う。」


「最後に、四天王のみんなはジュリアの次に大好きな仲間だ。これからもずっと一緒にいて欲しい。」


拳骨を入れられた上に人族好きだ宣言をされた四天王はポカンとした顔をしていたが、最後の言葉で一斉に笑顔になった。


「私の全てはすでに魔王様のものです。どこまでもついて行きます!」

「魔王様に、永久なる忠誠を誓った身。何なりとお申し付けください!」

「今までも、こからも私の力の限り、魔王様のご命令に従います。」

「ジュリア様が本妻で、私は2番でもいいです、一生ついて行きます!」


「ん?なんか違う。勘違い発言だらけなんだけど。」

「?」「??」「???」「????」


「えっと、みんなは魔王に従う家来って感じで受け取ったみたいだけど、違うよ。私が言っているのは、上下関係よりもっとお互いに気心が知れた仲っていう意味の<仲間>だよ。友達みたいな感じかな?」


「滅相もない!」「恐れ多すぎます!」「忠誠です、忠誠!」「ほ、本妻ですか?」


「あ~、以後、傅くとか恐れ多いとか忠誠とか言ったら減点ね。」

「え?減点が増えるとどうなるのですか?」

「ん~、そうだ、魔族追放だね!」


「「「「えぇ~!!!」」」」


「ということで、最初は難しいかもしれないけど、言動に気をつけて仲良く行こうよ。」

「人情味が厚くってお人好しの集まりなんだから、きっとみんな幸せになれると思う。よろしくお願いします。」

「よ、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします!」

「ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします。」


なぜか床に正座して三つ指をついているミルノはスルーして密かに用意していたテーブルとイス持ってくる。玉座の前にテーブルを置き、コの字型にイスを並べる。


「今までは、四天王の定位置にずっと立っていたけど、今日からはイスに座ってね。」

「し、しかしそれでは威厳が・・。」


「威厳とかそれは私たちの間には必要ないよ。必要なら、配下が来たら立つってことでいいんじゃない?」

「は、はい。」


こうして人情味あふれる四天王達は本当の<仲間>になった。勘違いしているのか、それともおふざけなのかわからない者も1人いるが、当面は反応せずに無視でいいかな。


イスに座り落ち着いたところで今日の出来事の要点を話す。勇者の1人、アゲハが元の世界にいるはずの実の妹のひよりであること。妹を殺めることなく、なんとかして元の世界に帰したいこと。いつかはジュリアとともに暮らしたいこと。そして魔王という立場を度外視して、魔族や人族に関係なく、この大陸の全ての人を守りたいこと。そして最後に、魔族も人族もともに生きることができる、戦いのない平和な世界を作ることを目指すと伝えた。


「では、最初にすべきはフィレン王国の動きをどうにかすることですね。」

「軍や傭兵達がラノム王国に進軍する準備が整ったようです。一両日中には戦になると思われます。」

「傭兵の一部が陽動なのか、リチとタビスから魔王城へと移動するようです。このまま進めばこちらも一両日中には戦になるでしょう。」

「相当数の魔物が集まり、ドルドの町の両サイドからノルと王都に移動しつつあります。そしてそのまま王都になだれ込むと思われます。王都の討伐軍は、現在王都入り口まで撤退しております。」


「魔物に殺されると人族も魔族も生き返ることができない。ザール、魔物達の討伐を任せても大丈夫?」

「お任せください。我らの戦力からすれば、低レベルの魔物の集まりなぞ誰1人欠けることなく壊滅させられます。」


「傭兵たちが魔王城に攻めて来る前に、ゴムラの人々を魔王城かゴムラ洞窟に避難させて入り口の守備を固めてください。そして攻めてきたら当然殲滅戦でお願いします。」

「魔王城周りはこのデザミーにお任せください。すでに背後からも攻撃できる布陣を引いております。」

「タビスとかソリルにラノム騎士団が多めに配属されていたよね。こちらは防衛戦の配置で町から出る様子はないのかな?」

「はい。魔王軍がせめて来るという噂が意図的に流されたため、国民の不安を鎮めるために配属されておりますので、防衛戦の準備のみで進軍の予定はありません。」


「やっぱり王都の守備を手薄にするために巧妙に仕掛けられた罠だね。フィレン王国の魔女、なかなかしたたかなやつだね。」


「ナルーガからアルへと移動した軍隊は、やはりほとんどの者がよその大陸から移住してきた者達でした。当然、主立った者達は魔女の配下だと思われます。」

「では、こちらも殲滅戦で行きます。ここには私が行きます。もし山岳地帯から、例のラスクと呼ばれる魔物が飛来したら、そのまま私が対応します。」


「わかりました。それではたぶん明後日には3カ所同時に戦いが始まると思われますので、皆さん、ご準備をお願いします。スフィルネ様も、攻撃魔法の加減を確認しておいてください。普通に魔法をかけると大惨事が起きますので。」


デザミーの念話のあと、それぞれが席を立って各自の持ち場へと移動していった。最後に残ったミルノが近づいてくる。そして出口を向いてなぜか佇んでいる。


「ミルノ、どうしたの?」

「フィル様のいけず!早くジュリア様を連れてきましょうよね。」

「?」

「あ、下にダリルさん達が来てますよ~。一日にジュリア様と2度も式を挙げられるって幸せですね~、うふふっ。」


そして振り向いたミルノの顔は・・・


「ソーニャ!どうしてソーニャがここに?」


すると一瞬にしてソーニャの顔がミルノの顔へと変わった。


「私、時々ソーニャと入れ替わっていたんです。だから、フィル様とも何度もお会いしていたんですよ。あの朝もで~す。おやすみなさい~。うふふ。」


言うだけ言って走って行ってしまった。さすが姉妹。似たような性格だとは思ったが、顔まで変えて入れ替わっていたとは!しかし、顔を変えるって魔法なのかな?覚えたらこれから役に立ちそうだ。早速明日ミルノに習うとしよう。


眠る必要がないので、朝方まで攻撃や防御などの魔法をイメージし、頭に浮かんできた呪文を確認していると、突然念話が入ってきた。


「フィル、おはよう!私は元気に早起きしたよ。なんだかすごくすっきりして気持ちいいの。フィルはちゃんと夜寝た?いろいろすることがあるって言っていたけど、あんまり無理しないでね。」


「あれ?ジュリア?念話遠くに飛ばせるようになったんだ!」

「うん。ソーニャに特訓受けてたの。驚かそうと思って頑張ったの。これでいつでもお話しできるよ。」

「そっか、なんだかとても嬉しくって幸せな朝になったよ。ありがとう。」

「フィル様、おはようございます、朝からいちゃいちゃしすぎないようにね。口元緩んでませんか?」

「あ、ソーニャか、おはよう。色々ありがとう。ジュリア、ソーニャ、たぶん明日か明後日までに、色々起こると思うけど、こちらも動こうと思う。キリがついたらまたそちらに顔を出すよ。」

「うん、待ってるね。念話は朝と夜大丈夫?」

「たぶん大丈夫。何かあったらこちらからも送るよ。」

「愛ですね!」

「朝から幸せのお裾分けをありがとうございます。」

「私たちも念話に入れていただきありがとうございます。」

「ジュリア様のためにも頑張ります!」

「皆さん、色々とありがとうございました。おかげさまでまたフィルと会えてお話もできるようになりました。これからもよろしくお願いします。」

「ね、いいお嬢様でしょう?フィル様のお嫁さんにぴったりです!」

「そうですね、お目にかかるのが楽しみです。」

「うむ、魔王様も幸せそうで何よりです。」

「私は2号さんでいいですよ~。」

「いや、2号以下却下だから。」

「ソーニャさんの言うとおり、皆さん、楽しくて良い人たちですね。そろそろ、もっと元気になるようにご飯をたくさん食べてきます。では失礼します。」

「たくさん食べておいで。」

「行ってらっしゃい。」

「またお話ししましょうね。」

「私も食べてきます!」

「また念話でお話ししましょう。」


こうして朝から賑やかな念話の日々が始まった。ジュリアが四天王のみんなともお話がしたいと言うことで日々の挨拶は全員参加らしい。念話だけとはいえ、お互いに気に入ってくれたようで良かった。しかし、ジュリアと二人きりの念話もしないとね。全部筒抜けって言うのもちょっと困るから。


さて、今日はミルノから顔を変える魔法を習わなくては。イメージしても呪文が出てこなかったということは、何かコツとか秘訣があるのかな?顔を変えられるのは今後の活動に必需品だ。ユニークスキルではないことを祈ろう。開戦まであと1日、今日を有効に使って明日に備えよう。


そして魔王スフィルネは多様な防御魔法と攻撃魔法、その手加減を覚え、顔を変える魔法の術式を使いこなせるようになった。夜になり、ジュリア達と念話で大いに盛り上がったのは当然のことであった。

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